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千年の眠り―金色の花嫁―  作者: 天豆
第一章~東の国-イーシュア-編~
5/23

其の者、王宮へ。





――いやぁああっやだぁぁぁっ……!




――君が、悪いんだよ? 君が殺したんだ。






『キミガコロシタ』









「……おいっ!」


「……っ!?」



 あたしが勢い良く息を吸い込むと共に目覚めると、団長さんとレオンさんがあたしを覗き込んでいた。

辺りを見回すとどうやらここは馬車の中のようで、あたしは王宮へ向かう馬車の中で寝てしまっていたらしい。


「おい、大丈夫か?」


 放心状態のあたしに団長さんが心配そうに声をかけ、タオルのような柔らかい布を手渡してくれる。

どうやらあたしは汗をびっしょりかいているようで、慌てて柔らかい布を額に押し当てた。


「あの、あたし……どうしたんでしょうか?」


「……最初は馬鹿みたいに口を開けて寝ていたが、先程から尋常じゃない程うなされていた」


 レオンさんがぶっきらぼうに答えると、何かを呟いてあたしに開いた掌を向けた。

すると、さっきまで汗をかいていたはずの体が乾いて爽やかさを取り戻した。

目を丸くするあたしに、「清浄の術だ」とまたぶっきらぼうに言う。


「喉が壊れるんじゃないかという程叫んでいたんだ。喉は渇いてないか?」


 そ、そんなに!?

内心驚きつつ団長さんによって差し出された冷たいお水を喉に流し込むと、熱くなっていた体が冷えていく。




「まただ……」


「また?」


 あたしの小さく洩らした言葉を聞き取った団長さんと目が合う。


「最近、よく夢をみるんです……」


「何を言っている小娘。夢ぐらい当たり前だろう」


 レオンさんが頭を掻きむしりながら溜め息をつく。


「違うんです、何回も、何回も見ているのに思い出せないんです……それなのに、何故かすごく大事な事のような気がして……」


 あたしはよく同じ夢をみていて、朝起きると夢の内容がさっぱり思い出せないことがある。

起きた直後はいつも、懐かしさと激しい怒り、最後に胸を締め付けられるほどの哀しみを感じる。

それは今も例外ではないわけで、あたしの頬に一筋の涙が伝った。


「小娘"…?」


 レオンさんが、驚いたような声をあげる。

慌てて涙を拭おうとすると、あたしの頬に温かい指が触れた。

団長さんはあたしの涙を拭い、ぽすっと頭に手を乗せた。


「直に王宮に着く。少し身体を休めろ」



 その言葉通りに、あたし達が乗っている馬車はまもなく王宮へ到着した。

取り敢えずあたしを国王陛下に会わせるために王宮の中へ入り、団長さん達と共に客室で待つことになった。

 やはり王宮とあって室内には豪華な調度品の数々が置いてあり、眩しい眩しいと目をしばたたかせながら待つこと約十五分、静かなノックと共にドアが開かれた。



「やあ、遅くなってすまない。ウォル、レオン、よく戻ったね」



「うっわぁ、超美形……」



 国王陛下と言ったら偉そうな髭オヤジか寛大そうなおじ様のどちらかだろうと高をくくっていたのだが、目の前にあまりに美しい青年が立っていて思わず口に出してしまった。

 そんなあたしを、団長とレオンが呆れた様な表情で振り返り、当の陛下はクスクスと上品に笑い始めた。


「こんにちは、ウォルから話は聞いてるよ。私はこのイーシュア王国の国王を務めている、レイアーム・ルイ・サミュレイだよ。君の名前は?」


「か、神塚喜慰です……っキイと、呼んで頂ければ幸いでございますです……っ」


 悩殺スマイルであたしの鼻孔を刺激する陛下はクスっと妖艶に微笑むと、ふわりとあたしを抱き締めた。


「レイ、……って呼んでね?」


 耳元でしっとりと囁かれ、身体中の熱が顔に集まってくると、とうとう出してしまった。

あたしの啜り損なった鮮血が陛下の礼装らしき服をぽつりと赤く染めてしまった。

あら、赤いお花みたいで綺麗だね、なんてぼんやりとそれを眺めていると、あたしの後頭部がスパーンと壮快な音と共に叩かれた。


「お前は何をしているんだ!」


 レオンさんはそう慌てたように言うと、すかさず陛下の服に洗浄の術を施し頭を垂れる。


「陛下、我々が連れてきたものが失礼いたしました……」


 しかし陛下は優しく首を振ると、後頭部を撫でながら涙を浮かべ(更に鼻血を出し)ているあたしを見てより一層愉快げに肩を揺らして笑い始めた。


「いや、いまのはレイが悪い」


「え?」


 呆れた様に溜め息をつく団長さんに聞き返す。


「あいつはな、ああやって女を骨抜きにするのが趣味なんだよ」


「失礼だなぁ、別に趣味じゃないよ。何故だかああすると、女性は皆倒れちゃうんだよ。ね?」


 ね? ってそんな微笑みを湛えて言われても……

死んだ魚の様な目で陛下を見つめつつ、先程団長さんに貰った布で鼻血をふきふき。





「そういえば、キイは記憶喪失なんだって?」


 陛下はそう言うと紅茶に口をつけ、コクリと上品に飲む。

一方あたしは、陛下の声などまったく耳に入っておらずうっとりと陛下(の顔)を見つめていた。


 シュッと整った輪郭に沿うように、金色に輝く髪がさらりと流れ、少し目にかかった前髪からはそれと同色の濡れた瞳が覗く。

少し垂れがちのその目は、長い睫毛によって縁取られていてまるで人形のようだ。

陛下、というよりは、王子様の方がしっくりくるだろう。


「キイ?」


「は、すいません! え、なんですか? 記憶ですか? はい、それはもうバッチリ抜け落ちておりますです!」


 あたしの言葉に、陛下はまたしてもクスクスと笑みを溢す。


「敬語はいいよ。堅苦しいでしょ?」


「いやいやっとんでもないです、陛下相手にそんな……」


 ……おや?

あたしの声は聞こえているはずなのに、陛下は再び紅茶に口をつけ、メイドさんみたいな人におかわりを要求している。

 首を傾げるあたしの横から、団長さんが囁く。


「言う通りにしないと多分あいつ一言も話さないぞ。俺の時もそうだった。」


「? でも、レオンさんは敬語ですよね?」


「ああ……あいつの頑固さはレイをも上回るからな……」


 そう言って団長さんは遠い目をして喋らなくなってしまった。

一体何があったんだこの人達に……



 その後三十分程話をして、あたしの記憶が戻る(仮)まで王宮の空き部屋に住まわせて貰えることになった。

しかも朝・昼・晩とご飯も付くしあたし専用の侍女(メイドさんは侍女と言うらしい)と護衛の騎士まで手配してくれるらしい。

 仮にも一国の王様なのにこんな怪しい奴にこんなにも手をかけていていいのかと不思議に思ったが、お言葉に甘えさせて頂くことにした。


 あたしの傍につくのは、侍女のリィサ、メィサという双子の美人さんと護衛騎士のアースノルド・レギンス(通称アル)の三人だ。

 それにしても、この世界は美形が多すぎやしないかい?

レイ、団長さん、レオンはともかくこの三人までもが整った容姿をしているではないか。

双子の侍女さんは肩まである栗色の髪をくるんと内側に巻いていて、今どきで言うとゆるふわガール的な容姿をしている。

アルさんは栗色のふわふわ癖っ毛な短髪。

これまた超絶美形で、双子侍女の兄らしい。

 こんなとこにいたらあたし、完璧に男の人に相手にされないよ……ああぁぁぁ何でもっと綺麗に産んでくれなかったのよお母さーーーーーんっ!



 この日から私の異世界での波瀾万丈な生活が始まるのであった。






読んで下さって有り難うございました!

団長さん達になにがあったんでしょうかねぇ…。

それも後々番外編で執筆するかも?


文章力もないし内容の空っぽなのに、読んで下さっている人がいるなんてすごく嬉しいです(;_;)


もっともっと面白いお話を書けるように頑張ります!

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