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後妻、打つべし。  作者: ただのぎょー


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第十一話:茶会2

 マサエールは艶やかなケーキを眺めながら言葉を探す。フォークを持つとまたいつの間にか崩してしまいそうなので、手は膝の上に置いた。


「貴族の結婚とは家同士の繋がり、二家それぞれの家長が交渉することにより定められるものですわ」


 つまりは政略結婚である。もちろん見合いなどを経て明らかに当人同士の相性が悪いなどの理由があれば破談となることもあるが、最優先は家長の意向である。


「家を抜け出し、暗夜を彷徨さまよい、ヨーリオム様のもとへと走ったわたくしが言うべきことではありませんけどね」


 父クロノサの大反対を受け、駆け落ち同然に、それも深夜の脱走でヨーリオムのところに向かった話は語り草である。

 当時を知らない歳若の者たちはその情熱的な様に感心し、頬を染めた。


「いやだわ、教育に悪い」


 一方で十年前のそれを覚えている女たちは、ほほほと笑った。


「わたくしの真似してはなりませんよ。……ともあれ、あのように身を焦がす恋をすることはもうありません。父が再婚を命じればどこへなりとも嫁ぎますわ」

「マサエール様はそれでよろしいのですか?」

「よろしいもなにも、貴族の女とはそういうものですしね。それに、離婚されたということは女としての価値が下がるということです」

「それは……そのようなことでマサエールお姉様の価値が下がるなど」


 女たちは口々に否定するが、マサエールはゆるりと首を横に振った。それにそもそも彼女たちだってそれが真実だとわかっているのだ。一度は否定するものの、重ねて否定の言葉は出ない。

 マサエール個人の知性や人間としての価値は寸毫すんごうたりとも傷付いてはいない、だがその社会的な価値は大きく損ねられているのだ。

 だが、マサエールは笑みを浮かべてみせた。


「構わないのです。いや、むしろ価値が下がったことに意味があるのです」

「……というと?」


 マサエールの言葉に女たちは首を傾げた。

 価値が下がってしまうことに意味とは?


「価値の下がった女であれば、他家との政略結婚には向かず、配下に下げ渡してもかまわないということですわ」

「あ!」

「つまり卿が!?」

「インスラ様に可能性が!?」


 女たちは気づいた順に声を上げた。


「インスラが毎日わたくしのところに顔を出すことについて考えてみたのです。きっと彼がわたくしに好意をいだいてくれているという理由はあるでしょう。ですが、どうしてそんなことができるのでしょう」

「というと?」

「今は戦時ではないとはいえ、騎士団の副長ともなればそれなりにご多忙なはずです。それがなぜ昼間に女に会いに行って誰も文句を言わないのです。つまり、上がそれを認めているということに他なりません」

「上……つまり!」

「父と兄ですわね」


 きゃあっと歓声が上がる。

 辺境豪族の姫と、その部下の騎士ではそれこそ結婚などあり得ない。だが、その姫の価値が下がっているというのなら……。

 インスラはこの歳になるまで婚約の話などを全て断っている。その身を落ち着かせ、ボレアリス家への忠誠をさらに増すことができるというなら、今のマサエールを嫁がせる価値は十分にあるのではないか。


「彼がこぶつきの出戻り女を所望するのであれば、ですけどね」


 マサエールは自嘲ぎみに笑い、紅茶を口に運んだ。

 女たちはきっとそうなると明るく話を続けたのであった。

 そして菓子と茶が進み、もうじき茶会もお開きになろうかという頃である。けたたましく扉がノックされ、ドレス姿の女が転ぶような勢いで部屋に入室してきたのであった。


「大変です!」


 そしてそう叫んだ。

 近くにいた者が倒れそうな彼女を抱いて支え、アイガーが尋ねる。


「ポーラ、なにがあったの?」


 ああ、そうだ。ポーラであった。とマサエールは思う。ボレアリス家の分家の女で、自分より五つばかり歳下である。

 ボレアリス本家の女たちはマサエールの出戻りに合わせて謹慎、とまではいかないが社交を控えている。ただそれでは他家との折衝や情報収集に難があるため、分家の者が社交をこなしてくれているのだ。

 そんな彼女が急いで戻ってこなくてはならない事態。それも当主筋ではなく女たちがいるこちらに報告にきたのは何故?

 マサエールが考えているうちに、ポーラは卓を挟み、マサエールの前に立った。


「挨拶は結構よ。緊急なのでしょう?」


 礼をとろうとするポーラをマサエールはそう言ってとどめた。

 彼女は息を整えて口を開く。


「はい、マサエール様。私は社交のためラディクスの領地に赴いていたのですが」


 彼女の髪はやや乱れ、美しいドレスには皺が目立った。緊急の報告のため、ラディクスの領地から休みなく馬車を走らせてくれたのであろう。

 彼女はそう前置きして、少し言い淀み、観念したように口を開く。


「タートリア・グッリッジ嬢がいらっしゃいました。すでにラディクス家の城に滞在しているご様子です」

「……そう」


 マサエールは呟くように返答し、女たちは騒然とした。

ξ˚⊿˚)ξ教育に悪い系姫君。

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i913987

『チートなスライム職人に令嬢ライフは難しい!』

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おーっほっほっほ。 ごめんねえ、よりくんもらっちゃって。
出たわね( ˘ω˘ )
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