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第5話 大バカ者だと思いました。

「検察官のエリックです。あなたの名前とご自分の立場を説明頂いても?」


平民用の取調室はなんてことない木のテーブルと木の椅子。


「はい。ハンスと申します。マルデ領の農業試験場の副場長をしております。」

「場長は?」

「場長はエーデリンデ様です。」

「仕事は長いの?」

「はい。アカデミアで学んでいるときに、スカウトされました。平民です。」

「ほう。平民の出で、アカデミアとは、大変な努力家だね?」

「ありがとうございます。」


髪はぼさぼさだが、なかなかいい男だ。


「実は、そのエーデリンデさんの元・夫が他殺死体で見つかってね。知ってた?」

「はい。試験場内でも噂が流れておりましたので。」

「単刀直入に聞くけど、君はエーデリンデさんのことが好きだったよね?」


はっ、と息を飲んだ後、視線を落とした。図星だよね。調べてあるけど。


「はい。尊敬しています。手の届かない方ですし。」

「身分的に?」

「・・・それもありますが、なんと言うか、次元が違う?」

「?」

「私もアカデミアで農学を修めましたが、あの方は常に《《その先》》を見ているような方で。私の生地は北のはずれの貧しい土地です。蕎麦くらいしか育ちません。彼女はそれをご存じで、私を試験場に入れてくれて、寒冷地用の小麦の品種改良の実験をさせて下さっています。いつか必要になるから、と。」

「・・・」

「正直なところ、お給金を頂きながら自分の実験ができる、そんなこと、学者冥利に尽きます!感謝しかありません。もちろん、そのほかにも、乾燥地用の品種の実験などもしております。」

「ふむ。好き、が恋愛とかではない、と言いたいのかな?」

「なんというか、同じ農業を志すものとして尊敬しております。」


うーーーーーん


「じゃあ、話が変わるけど、彼女が結婚した時はどう思ったかな?」

「ええ。あの方は農地管理や試験場の運営、作業員の教育、そこに領の管理業務をなさっておりました。良い方に巡り合ってその一つでも担って頂けたら、と期待しました。あまり人に頼る方ではなかったので。結果的には残念な方だったようですが。」

「ああ。それで、彼女を傷つけた相手をどう思ったのかな?」

「あの方の本質に気が付かない、大バカ者だと思いましたが?」

「・・・・・」


なるほどね。









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