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第4話 あの人嫌い。

「お嬢さんたち、緊張しないでね?」


二人でソファーに並んで座っている。かわいい。

膝の上に置かれた握りこんだこぶしが、緊張を伝えている。


「え、と、マルデ侯爵家の3女と4女の、」

「はい。エーデルフリーデと申します。」

「エーデルブルクです。」


小さな二人は、お互いにちらりと目線をかわしながら小さな声で答えた。


「今日はね、お姉さんのことを聞こうかな、と思ってね?あ、エーデリンデさんのほうね。」


何でそうなのかは分からなかったが、二人共、ぱあっと顔が明るくなった。


「姉上は、いつも一生懸命です。アカデミアを出てから、農業試験場を整備して、耕地の区割りも変更して、生産力を上げる努力をしています。」

「私たちがまだ小さいので、あなたたちが結婚するまでは見届けなくっちゃ、といつも言っています。」


「そのお姉さん、結婚したよね?」


「私、あの人嫌い。」

「だめよ、ブルク、変なことを言っては。」

「いいよ?お兄さんに聞かせてくれる?」


いや、この子からしたら、おじさんかな?


「なんか、馴れ馴れしいし。姉上が居ない時に限って屋敷に来るし。ガルトお姉さんは勝手にさせてるし。」

「ブルク!」

「いいよ、いいよ。それで?」

「どうせ自分の物になるから、って、勝手に引き出しとか開けてるし。気持ち悪い。」

「でも、姉上は本当にいいひとなんです。私たちのせいで、みんなに行き遅れ令嬢とか言われているって叔母様がいつも言うけど。でも、あの、」

「そうよ、姉上だってちゃんとしたドレスを着たら美人なのよ?着る機会がないだけで。ガルトお姉さんはいつも馬鹿にしてるけど、負けないくらい綺麗なんだから!」

「結婚だって、すぐにやめたし!お願いです。姉上のことが好きなら、諦めないでくださいね!」


え?


「仕事が大好きなんですけど、パンやお菓子も焼いてくれるし…小麦の試食だけど。」

「農業試験場に泊まり込んで帰ってこないこともあるけど、付き合っている人がいるわけではありませんから!」


あ?


「よろしくお願いいたします!」




*****


エーデリンデの妹達の後に、祖父との面談になる。一緒に来たから。


「遠いところ申し訳ございません。前マルデ侯爵殿。」


「いえ。王都は久しぶりです。小さい孫娘たちに案内出来て嬉しいですよ。あれたちの祖父のランドルフです。」

「検察官のエリックです。お座りください。」


「今回は、ご存じかも知れませんが、エーデリンデさんの前夫のマーカス氏が殺害されたものですから。関係のあった方に事情をお聞きしているんですよ。」

「はい。」

「あなたから見て、マーカス氏はどんな方でしたか?」

「そうですね…軽薄そうな色男、という感じでしょうか。娘が、ああ、公爵家に嫁いだ娘が、あれたちの両親が亡くなってからというもの、いろいろと世話を焼きたがりまして。次女が嫁に行く前に、エーデリンデに婿を取ろうと躍起になっておりまして。よく調べもしなかったんでしょう。結婚式当日、借金取りが並んだ時には、心底呆れました。」

「そうでしょうね。」

「すぐさま、式を中止して、婚姻届けのすぐ後に離婚届を出した次第で。お恥ずかしい。娘にはよく言っておきましたが。」

「その件で、恨みがあったとか?」

「お相手の伯爵家から賠償金をふんだくっておりましたし、もちろん、結納金も補填に当てましたし。リンデは、下の子が2人まだ小さいので、その学費や結納金をコツコツ貯めておりましてね。それが目減りすることは許せなかったのでございましょう。」

「なるほどね。」

「ただ、娘が言うには、きちんとした方からのご紹介だったようで。あれの立場からの上位貴族となると、限られますよね。厄介払いだったんですかね?」


「どうでしょうね。では、あなたから見て、エーデリンデさんは?」


「息子夫婦が流行病で、ほんとうにあっという間に二人共亡くなってしまって。それからというもの、この年老いたじいとあれと二人でなんとか領地を切り盛りしてきました。三年前にはリンデに爵位も譲りましたし。

今回の婚姻もよい人であれば、さっさと執務を譲って、引退しようかと思っておりましたが…もうしばらくは頑張りますかね。リンデは公社の運営が忙しいですしね。」

「そうですか。」

「爵位を譲り受けた以上、領民はリンデが責任を持たなければいけない。その負担を考えると…あれはまだ23ですからね。」


「今日は王都の屋敷でお過ごしですか?」

「え?ああ、そうです。これから街に出てみたいとはしゃいでおりましたから。」

「お呼び立てして申し訳ございませんでした。」

「いえ。」


ゆっくりと杖をついて立ち上がる。そっと手を貸した。

僕の顔を見て、ランドルフ様が笑う。


「・・・貴方は、おじいさまに似ておられますね。ふふっ、遥か昔ですが、学院の同級生でした。」








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