第3話 私には婚約者がおりますので。
「あなたのお姉さんの元・夫が先日誰かに殺されたんですよ。」
今日はマルデ侯爵家の次女。18歳。
「はい。叔母様に聞きました。驚きました。」
姉と違って、きちんとドレスときちんと化粧。髪も綺麗に巻いてある。
ごくごく普通の貴族令嬢、という感じだ。少し緊張しているのか、顔が赤い。
「君から見て、マーカス氏はどうでしたか?」
「マーカスさん、ですか?」
「そう。何度かお会いしているでしょう?どんな感じの人でしたか?」
「明るい、お話上手な方でした。みんなを笑わせる話題も豊富で。いい方かと思いましたが…」
「が?」
「え、実は、姉が留守の時に突然来たので、お茶をお出しした時に、その、」
「ん?」
「あなたも可愛らしい方だね、と、おっしゃって…その、髪にキスを…」
愛情が無差別攻撃だったんだな。
「私的には、姉が堅物なので、このぐらい軽い方のほうがあっているのかな、と思っていたところでしたので、びっくりしまして。」
「ふーーん」
「で、でも、私には婚約者がおりますので。その後は二人きりにならないように気を付けておりました。本当です。」
どうかな?
婚約者がいる割に、僕のことを上目遣いにチラチラ見る仕草がなんかな。顔も赤いし。指のもじもじも気になるけど。
「じゃあ、もしもだよ?マーカス氏がお姉さんより君のことを選ぶと言ったら?どうしていた?」
「え?あ、そんな…」
言われたのかな?
「姉が、23にもなって結婚できないのは、跡取りの責任が重いからかな、とは思っています。私の下にもまだ二人も妹がおりますし。どなたかいい方がいらして、家を出てお嫁に行きたいと望まれるのでしたら、」
「君が爵位を継ぐと?」
「・・・・・」
「お姉さん想いなんだね?」
「・・・・・」
「じゃあ、君にそう言いながらもお姉さんと結婚しようとしたマーカス氏を恨んでいた?」
「いえ…私には婚約者がおりますし。」
冒険は出来なかったのかな?