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プロローグ
「サメとカメの顔って似てるよね」
僕は目の前にいる不思議な生き物を見て呟いた。
大きなドーム型の甲羅を背負った四足歩行の生き物。傍から見ればリクガメ。ただし尾と頭はサメである。
夕方。学校からの帰り道。
誰もいない街中でその生き物は動かずにただこちらを見ていた。僕も正面から見下ろす。
この生き物、1m近くある。アルダブラゾウガメくらいか?しかも鋭く尖った歯が大量に生えていた。ホオジロザメを思い出す。
これは危険だ。
万が一噛まれたら無事ではすまないだろう。
周りに人がいれば押し付けて帰りたい。面倒ごとはごめん蒙りたい。最初は見て見ぬふりをして家に帰りたかった。
だが誰もいない。不幸だ…。
僕の心の中にいる正義のヒーローはサイレンを鳴らしていた。
「とりあえず警察に…いやその前に役場?危ないから自衛隊?とりあえず連絡…」
まったく動かないこと、見た目がカメであったこと、平和ボケしていたこと、色々理由はあるが完全に油断していた。
スマホを取り出すためズボンのポケットに右手を突っ込んだその瞬間──────
僕の左手が食いちぎられた。