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アヤカシ堂の聖なる魔女  作者: 永久保セツナ


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第36話:ビーチと水着と狼男・後編

「店長、水着じゃ御札の用意もないみたいですけど、大丈夫ですか?」

「なに、鈴さえいてくれれば蔵は開けるから問題ないさ」

 首に下げていた如意棒のネックレスを手に持つ俺に、店長の影に潜り込む鈴、そして不敵に笑う店長。

「僕も手伝いますよ、姉さん」

 ここぞ自分の活躍の場とばかりに、ハートマークでもついていそうな口調で微笑みかける因幡さん。

「因幡さん、なにか得物とかあるの?」

「ふん、半妖ごときが僕の心配をする前に自分の心配をするんだな」

「ホントお前最初と性格変わったよな!」

 全く本音を隠さない因幡さんに怒りよりも笑いがこみ上げる。

 因幡さんは目を閉じ、両手を前に突き出す。

 店長が自らの翼を広げるときのように、清らかな気が手先に集中し、光が槍を形作る……。

 因幡さんは光のエネルギー体で出来た十字槍を持って身構える。

「かかってこいよ、姉さんに仇なす小汚い獣ども」

「いや、別に私に仇なしてるわけではないんだが……」

 因幡さんは聞こえなかったふりをしていた。

「幽子はルナールさんと乙姫お嬢さんの警護を頼む」

「うちそんな強うないから、あんま期待せんといてや~」

 と言いながら、幽子さんはルナールさんと乙姫ちゃんをかばうように下がる。

「鈴、『御魂宿しの柄』を出してくれ」

「はーい」

 鈴が返事をすると、店長の影から何かがズズ……と出てくる。

 宝石強盗のときにも活躍した、刀の柄だけの部分しかない不思議な武器。

「それ、『御魂宿しの柄』っていうんですか」俺は訊ねる。

「炎や水など、自然のチカラを刀身に変える魔道具だ。ここは水だらけだから武器とり放題よ。おまけに――」

 店長はプールに突っ込んだ柄を引き抜き、さらにその水の刀身に指を触れる。

「弁財天はもともと水を司る神。触れた水は浄化され聖水となる。さしずめ聖水剣といったところか。魔物にはよ~く効くぞ?」

 狼男たちは怯んだように動揺している。もともとルナールさんと乙姫ちゃんしかいないという事前情報だったのだろう。こんなヤバそうな集団がいたら俺でも怯む。

 しかし狼はさすがに素早い。俺はともかく、店長や因幡さんは狼男のスピードに対応できないらしく、爪や牙をいなすので精一杯だ。

「チッ……」

 店長と因幡さんは一旦エネルギー体の翼で飛び上がり、狼男たちと距離を取る。

「どうします姉さん、意外と厄介ですよ」

「本当に野生の力というのは恐ろしいな……爪と牙のみという原始的な攻撃ながら、まともに食らえば大怪我だぞ」

「ちょいちょいちょい、百合ちゃん白ちゃん、戦線離脱すんなや! うちホンマに戦闘力ないんやって!」

 幽子さんの慌てた声に振り向くと、幽子さんはルナールさんと乙姫ちゃんを守ろうと、狐火で狼男が近寄らないよう、必死に応戦している。

「わあぁ! 幽子さんすんません!」

 俺はいま相手している狼男を蹴り飛ばすと、幽子さんたちのほうへ向かっていく狼男たちを如意棒で横一線になぎ倒す。

「っていうか幽子さん九尾の狐なんでしょ!? なんかすごい能力持ってないんですか!?」

「うちが九尾から引き継いだモンなんて幻惑眼と九尾の姿くらいのもんやで。狼男を化かしても次から次へわいてきよるし、管狐とかも効きそうにないしなあ」

 幽子さんの言葉に頭を抱えそうになったが、まだだ。まだルナールさんがいる。なんとなく強そうな気がするし。

「ルナールさんはなにか闘う手段ないんですか?」

「いやはや、王族が闘う機会なんて滅多に無いものですから……コウモリになって逃げるくらいですかね」

 使えねー!

 と内心思ったが、言わないことにした。

 すると、狼男たちの動きが止まった。

 というか、狼男たちが水の塊に包まれて、身動きが取れなくなったのだ。

 何が起こったのか分からずにいると、「乙姫!」と海人の声がした。

「動きは封じた! あとは頼む!」

「……はい……」

 乙姫ちゃんは不意にプールに飛び込んだ。と思うと、イルカがジャンプするように水中から跳び上がる。

 ――乙姫ちゃんは、魚の鱗のような柄の入った白い着物に、人魚のように下半身が魚という、世にも美しい姿だった。

「……消えて……」

 施設のプール中の水がドッと噴き上がり、龍のような姿になって狼男たちを飲み込む。そのまま施設のガラス窓を突き破って、獣たちは水龍に飲み込まれたまま遠くへと吹き飛ばされた。

「すげー……」

 俺は呆然と割れたガラス窓の向こうの空を見上げる。

「これ、俺たちいらなかったのでは……?」

「そんなことないよ。竜宮家は水さえあれば最強ってだけで」

 海人がそんなことをサラッと言った。

「ところで乙姫ちゃん、普通に変身してたけど、あの魔法薬は飲んでないのか?」

「? あれは日常生活で使うやつ。今回のデートは相手も妖怪だから正体を隠す必要もないだろ?」

 言われてみれば、たしかに。

「やはり貴女は強く美しいですね、乙姫」

「……ルナール様……」

 ルナールさんが優しく微笑みかけると、乙姫ちゃんはポポポ、と顔を赤く染める。

 いい雰囲気だけど、せめてルナールさんもマトモに戦えてたらなあ……。

「うう~……虎吉、飲みに行こうぜ」

「はいはい、自販機でサイダー酌み交わすかね」

 妹をとられて傷心気味の海人の肩を叩き、俺は海人と一緒に自販機へ向かう。

「店長さん、ウォータースライダーやろ~」

「お前とはやらん」

 店長はイービルの誘いを無視して、帰り支度を始めるのだった。


〈続く〉

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