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謁見と婚約指輪

お立ち寄りいただきありがとうございます。


 陛下の謁見の間についた。

陛下の横には宰相と王子がいた。

こちらはジュリアと後見人としてオドネル先生。


 「陛下、ご機嫌麗しゅう。」とジュリアはカーテシーをする。

「おお、ジュリア、よく来てくれたな。堅苦しいのは抜きだ。この度は、うちのバカ息子がとんでもないことをしてしまった。心から詫びる。」

「もったいないお言葉にございます。」

「バカ息子の所業は常軌を逸していたようだ。気づかなかった余も我ながら情けなく思うぞ。ジュリア、余も王妃もそなたのことが好きなのだ。どうか、今回のことを許して、今一度婚約者に戻ってはもらえまいか?」

「陛下、私はこれまで、陛下にも王妃様にもとてもよくしていただきました。親のない私にとって、本当に有り難いことでございました。また、今のお言葉ももったいないことでございます。ですが、私はどうしても今回のいろいろなことを忘れることができません。たとえ今、再び婚約者に戻していただいたとしても、再び信頼関係を築くことは難しいと存じます。心の内は外面に現れます。信頼関係を築けない妃は王家の嫁としてふさわしくないとも存じます。これからは私は領地に戻り、粉骨砕身してお国のために尽くそうという所存でございます。大変恐れ入りますが、どうか私のわがままをお許しいただきたく、伏してお願い申し上げます。」

「おお、この子は本当に惜しい。娘のように感じておったのに、残念でならぬよ。しかし、あれほど傷つけて、その上強いることはできない。そうか、領地に戻るか。どうか、婚約者ではなくなったとしても、領主として、たまには顔を見せてくれ。王妃も寂しがるであろうしな。」

「有難き幸せに存じます。」


 謁見の間から出て、ジュリアはあらためて膝がガクガクと震えた。オドネル先生が、

「よく頑張ったな。君はとても頭が良いな。」と言ってくれた。

帰る前に、宰相に叔父の脱税の証拠書類を提出したところ、宰相は大いに驚き、叔父を罰することになると言われた。しかし、ジュリアからは、税の未納分を分割払いで返却することだけで許されそうで、ジュリアはほっとして、よけいに膝に力が入らなくなった。


 へイエスの部屋に戻り、ドアをノックすると間もなくへイエスがドアを開けてくれて、ジュリアを抱きしめた。

ジュリアはほっとして、震えが止まらない。

オドネルが

「上手くいったよ。いやあ、ジュリア君は頭が良いねえ。ああ言われたらそれでも、と押せないな。それから、俺には初耳だったのだが、すぐに学園をやめて領地に帰るということだな。生徒がひとりいなくなるのは寂しいことだが、王子や取り巻きがいるところに引き続き通うの気分が悪いだろうから、良い選択だと思うぞ。まあ、すぐにでも領地に帰りたいだろうが、帰る前に一度ぜひ我が家に食事に来てくれ。妻も会いたがっているし、子供もかわいいから会わせて自慢したいからな。」

と、食事に招待してくれた。

「うわあ、ほんとですか!すごく嬉しいです。ありがとうございます。」ジュリアは本当に嬉しそうにニコニコしている。

そのジュリアを目を細めて見ているへイエスを見て、オドネルが

「お前もそんな顔するんだな。」と嬉しそうに言っていた。


 オドネルが帰った夕方。ジュリアはちょっと出かけたいと言う。

「フィルはお昼寝していてください。私、少しお買い物したいんです。」

「俺も行く。」

「でも、まだお体が本調子じゃないでしょう?疲れてほしくないんです。」

「何を買うんだ?」

「お菓子とね、それからナイショです。」

「俺も行きたい。」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫だ。リアと一緒に買い物したい。」

「ふふ、それじゃ、お願いします。」


 ジュリアは貯金箱を取り出して、それを壊して中にいくら入っていたか数えている。

「がんばってよく貯めたなあ。」

「これはねえ、刺繍の売上なんです。結構貯まりました。これは私が買いたいものを買うのに使うお金です。」

それを持って、アクセサリー店に行く。

「すみません、しばらく別行動にしてもいいですか?」

「ああ、俺が見立ててはいけないのか?」

「いけません。ふふふ」

そう言って、ジュリアはこそこそと店員と話している。

ジュリアは紫のピンを買った。タイピンにも、襟のピンにもなるもので、男性がつけても良いようなシンプルなものにした。貯金箱の中身がかなり減ったが、嬉しい。

「お待ちどうさま。」

ジュリアはすごく嬉しそうだ。


 「それじゃあ今度は俺に付き合ってくれるか?」

「はい。」

へイエスは店員にエメラルドの石の指輪を見せてくれと言った。

店員がいくつか選んで持ってきたのをへイエスはジュリアに「どれがいい?」と訊く。

「え?」

「婚約指輪を買いたいんだ。よいか?」

「えっ、えっ・・・そんな・・・」

「嫌か?』

ジュリアの目に涙が盛り上がって

「嫌なわけないじゃありませんか!」

と、へイエスの手を取った。

「これはどうだ?」

へイエスがひとつ手にとって見せた。

「はい、それがいいです。」

「なんだ、ずいぶん簡単だな。」

「だって、フィルが好きなのがいいですもん。」

指輪とピンを買い終わって、ケーキを買って、へイエスの部屋に戻って夕食にする。



お読みいただきありがとうございます。

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