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フィルとリア

お立ち寄りいただきありがとうございます。


今回はちょっと短めですので、続けてもう1話アップします。


 「お待たせしました。」

ジュリアがお茶を持ってきた。

「オドネル先生、陛下には明日、陛下のご都合次第でそれ以降にご謁見をお願いしていただけますか?」

「ああ、明日言えばたぶん明日来いと言われると思う。」

「そうですか。まあ、お目にかかっても、婚約破棄は受け入れましたし、それは変わりませんけど。他の方々はもとに戻った方はいらっしゃるんですか?」

「いや、他の婚約関係にあった家も『たとえ魅了がかけられてたとはいっても、魅了がかかってしまったということは浮ついていたからで、そんな男の嫁にはやれん』ということでだめになっているようだな。中には高額の慰謝料を出すということで、なんとかしようとしているところもあるようだが、魅了されていた間に全員肉体関係を持っているので、令嬢のほうがなかなか承知しないようだ。」

「キャシーったらなんてことを。」

「まあ、明日ははっきりと思いを伝えればいいだろう。それでも押してきたら、今まで王子たちにされたことを話そう。私が代わりに話してもよい。」

へイエスが

「ジュリア、明日は叔父上の不正の証拠も持っていったほうが良いだろう。キャシーだけに罪を着せられてしまわないようにな。一家全員追い出さないと結局又ジュリアが苦労することになってしまう。」

と言った。

「はい、そうします。明日、ちょっと怖いから、帰りに甘いお菓子を買ってこなきゃ。」

「ははは、そうだな。それがジュリアの良いところだ。」

へイエスが楽しそうに笑った。

「さて、それじゃ私はこの辺で家に帰るよ。妻と子が待っているのでな。ま、フィル、お前もそのうちこういうことを言うだろう。はははは。」

オドネルは嬉しそうにそう言って帰っていった。


 「へイエス先生」

「フィル」

「え?」

「俺の名はフィリップで、家族や友人はフィルと言っている。」

「そうですか・・・」

「君にもフィルと呼ばれたい。」

へイエスはそう言うと、ジュリアの顔を覗き込んで待っている。

「あの・・・いきなり言いにくいです。」

「フィルと呼んでくれる女が好みだなあ。」

「・・・ッ・・・ずるい。」

へイエスはちょっと意地悪な笑みを浮かべて、期待してジュリアの顔を見ている。

「では・・・いいですか・・・いきますよ・・・1,2の3,フィルっ。」

「よくできました。」

へイエスはそう言って抱きしめた。

「あの、それでは、私のことはリアと。父と母がそう呼んでくれてました。今はそう呼ぶ人は誰も居ないので、せん・・・フィルが特別です。」

「おお、いいな、俺だけの呼び方か。リア。可愛いな、リア。」

ジュリアは嬉しくてへイエスの胸に顔をこすりつけた。

「んんー、フィルのいい匂いがする。」

「・・・ッ、またそういう事を言う。俺をあまり困らせるな。理性があぶない。」

本当に、理性があぶなくて辛いな、とへイエスは思った。


 「あのね、フィル。」

「ん?」

「私、学園をやめて領地で働こうかと思うんです。どうお思いでしょうか?私はカカオやリープやスノウがいるので、転移魔法と同じことができます。ですから、王都に住んでも領地で働けます。私は絶対フィルと一緒にいたいんですけど、学園は王子様がいたり、いろいろ今回の騒動を知っている人たちがいるからなんだか居心地悪いので、いっそのこと領地に行って、叔父の不正によって領民に迷惑をかけたぶん取り返したいなと思って。」

「リア、それは俺にとってすごく好都合だ。実は俺は辞表を出そうと思っているのだ。やはり教師と生徒が恋仲になったというのは、やましいことがなくてもなにかと都合が悪いだろうからな。そもそも俺は魔導具屋で、それに戻ろうかと思っているんだ。君が領地に戻るのであれば、俺も共に行きたい。もしかしたらなにか手伝えることもあるかもしれないしな。」

「まあ!それはとても嬉しいです。私、フィルとずっと一緒にいたいんです。実は私こそ重たいくっつき虫かもしれません。お嫌でしたらおっしゃってください。気をつけて、我慢します。」

「いや、言っただろう?俺こそ重たい男なんだ。できることならリアをずっと膝の上に乗せていたい。」

「あははは、いいないいなー。私もそうしていただきたいなー。」


 翌日、オドネル先生が朝訪れ、

「陛下に言ったらいますぐ来てくれ、ということだったので、今から行こう。」と言ってきた。

すでに制服を着ていたジュリアは

「ずっと制服着てるのって便利でしょー。」と笑って出かける。

へイエスが

「叔父上の税の証拠書類は持ったか?」

「はい、ばっちりです。」

「大丈夫だ。きっとすべてうまくいく。もしどうしても婚約を続行しろと言われたら、2人でどこかに逃げればいいさ。それもまた楽しいかもしれん。」

「はい!」とジュリアもにっこりした。


お読みいただきありがとうございます。

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