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明日、王城へ

お立ち寄りいただきありがとうございます。


 そこにドアが小さくノックされた。

「オドネルだが、起きてるか?」

へイエスがドアを開けに行くとき、ジュリアはお茶を淹れにキッチンに立った。


 へイエスがドアから廊下に出て、結界を張った。

「ど、どうした?」

「深みにはまった。」

「は?」

「生徒を愛してしまった。」

「お、おお」

「もう引き返せないので、近く辞表を出す。」

「それは、その、なんだ、もう・・・したのか?」

「え?」

「だからだな、その、子供ができるようなことをしたのか?」

「いや、まだだ。だが、おそらく近い将来そうなるだろう。」

「急だな。」

「じつは、俺の方は急でもないのだ。ずっと惚れていたのだが、王子の婚約者だし、生徒だから気持ちに蓋をしていたのだ。」

「そうか、でもまあ、堅物のお前らしいな。」

「それで、問題がある。」

「なんだ?」

「俺が学園を去ったあと、彼女を守ってやれない。」

「それは」

「彼女は10歳で両親を亡くしてからずっと叔父一家に虐げられてきた。また、ここしばらくは王子たちにいじめられてきた。明るく笑っているが、夜中に叫んで泣きじゃくるくらい傷ついているのだ。これでまた俺との噂が彼女を苦しめたらと思うと、心配でならない。」

「そうだな。お前が倒れた時、一度あの子の家に着替えを取りに行ったんだ。その時、制服を着てきたから驚いたのだが、制服かお仕着せしか持っていないと言って笑っていた。妻の服でもと思ったが、制服で慣れてるから大丈夫と言っていたな。かわいそうに、苦労してるのだろうなと思っていたのだ。」

「そうか・・・」

「卒業まであと1年か?」

「そうだな。」

「魔道具屋は王都でやるのか?」

「まだ決めていない。」

「彼女といろいろ相談したほうがいいな。俺もできることがあればなんでもするよ。他ならぬお前のためだからな。」

「ありがとう。」

2人はそれだけ話して部屋に入った。


 「あら、どこかにいらっしゃったのかと思ってました。すみません、お茶、淹れ直しますねー。冷めちゃったから。」

「いや、それでいいよ。それより話があるんだ。」

「はい。」

「怖い話ではないから心配しないでいいよ。」

「はい。」

「今、陛下と君の叔父さんが君のことを探しまくっている。陛下としてはなんとか婚約を解消しないでもらいたいと説得したい意向だ。叔父さんは君がキャシーを陥れたと言っている。が、すでに陛下の側で魔女から魔石を買ったのはキャシーだという言質もとってあるし、王子たちもキャシーになにかされたようだと言っている。また、女子生徒たちと魅了にかかっていない男子生徒たちがキャシーが君に辛く当たっていたことをいろいろと証言しているので、叔父さんの申立は却下される。」

「そうですか・・・」

「だが、そろそろ陛下と会ったほうが良さそうだ。探し出されると印象が良くないだろう。はっきり意思表示をしたほうがいい。」

「そうですね。いつまでも甘えているわけにはいきません。明日の朝でもいいでしょうか?先生、もう一晩だけここにいてもいいですか?」

「もちろんだ。明日はついていこうか。」

「いや、私のほうが良いだろう。」オドネルが「へんに勘ぐられるといかん。」と言った。

「フィル、心配するな。悪いようにはせんよ。」


 「ジュリア、オドネル先生は俺の親友なのだ。信頼できる人だよ。」

「まあ、そうですの。羨ましいです。そういうお友達がいるっていいですね。」

「そうだな。まあ、俺が世話になっているばっかりだがな。」

「そうでもないぞ。お前は無自覚だが、よく俺のことを助けてくれている。」

「そうか?」

「ああ。」

「素敵なおともだちですわね。」


 「俺は、お前がやっと最愛の人にめぐりあえて嬉しい。」

「え?もしかして・・・」

「ああ、君とのことを少しオドネルに話した。」

「あ、そうですか。」ジュリアは恥ずかしくて赤くなった。

「マクレガー君、こいつはとても良い奴だ。きっと君のことを幸せにしてくれる。君もこいつを幸せにしてやってくれ。俺はいつでも協力する。」

「ではオドネル先生、ひとつお伺いしてもいいですか?」

「何でも訊いてくれ。」

「私はへイエス先生が好きだと思う女になりたいのですけど、先生に伺っても教えてくださらないんです。先生がどんな女を好きだとお思いになるのか、教えていただけませんか?」

「それは、へイエス先生に訊いたほうがいいな。私がわかるのは、正直で、一生懸命で、見栄をはらず、人をばかにしたり人より優位に立とうとしないような人かな。実はこれ、彼が嫌う女のタイプの逆を言ったんだけどな。」

「ジュリア、君がそのままでいてくれたら、それが俺の好きな女なんだよ。」

「うほほっ、いいねえ。恋してますなあ。」

ジュリアはますます赤くなってしまって

「あ、あの、お茶淹れますね。」とキッチンに立って行った。


 「良い子だな。」

「ああ。」

「幸せになれよ。」

「ああ。」

「彼女さ、学園やめたっていいんじゃないか?」

「やめる?」

「まず、彼女の魔法の能力をお前が鑑定して、そこから先はお前が教えればいいだろ?俺に訊いてくれてもいいし。」

「そうか・・・」

「彼女はお前と一緒にいるほうが幸せなんじゃないかな。お前だって彼女を守れるし。王都にいるとたぶん王子とかがうるさいかもしれんぞ。王子は学園は彼女と同学年だし。2人で彼女の領地にでも行って、そこで魔導具屋やればいいじゃないか。」

「そうだな。あとで話してみる。ありがとうな。」



お読みいただきありがとうございます。

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