告白
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へイエスはジュリアにベッドに押し込まれて、昼寝をすることにする。
まだ疲れが残っているので、昼寝できるのは嬉しい。
目を閉じて、無意識に鼻歌を歌っているジュリアの声を聞きながら、寝ようとするのだが、今朝のジュリアを思い出してしまってなかなか寝付けない。
きのうはジュリアは疲れたことだろう。
婚約破棄宣言に続いての断罪。その後、落ち着いて魔石の話をし、解呪した。ジュリアらしく、キャシーに自分で解呪すれば体に響かないと情けをかけるが、聞き入れられず、悲しい思いをしたことだろう。
そのあと自分が倒れてしまい、看病してくれた。料理はとても美味しい。ジュリアは疲れていたのとほっとしたからであろう、初めて飲んだというワインに酔って寝てしまった。
そのあとうなされて泣いていたジュリア。きっとずっと我慢し続けてきて、それが出てしまったのだろう。かわいそうに、何年も辛かっただろうな。
夜中にうなされて、抱きしめると体がくにゃりと柔らかくなって、やがて腕の中で寝息をたてていた。なんとかわいいのだろう。
そして朝、一緒に寝ていたのがわかって、顔を真っ赤にして恥じらうジュリアは本当に初心でかわいらしい。
こんなに可愛い子を愛しいと思わない男がいるのだろうか?
しかし自分は教師だ。しかも、11歳も年が離れているオジサンだ。この気持ちを封じ込めて、彼女が幸せになるように、全力で応援しよう。
そんなことを考えているうちに、へイエスはいつの間にか眠っていた。
目を覚ますと、ベッドに突っ伏してジュリアが眠っていた。
ジュリアだって疲れているのに、看病してくれて、もっと疲れただろうなあ。
へイエスの心はジュリアへの愛しさでいっぱいになった。
そう思ってジュリアの頭を撫でていたら、目を覚ました。
「あ、お目覚めでしたか。いやだわ、私、寝ちゃってた。」
「君も疲れただろう。代わるか?」
「いいえ、私は大丈夫です。のんびり考えごとしてるうちに寝ちゃってました。あ、そうだわ、これ」
ジュリアはハンカチを差し出した。
「きのう、先生が意識がない時に刺繍したんです。もしよかったら。」
「おお、それはありがとう。君は刺繍も上手いのだなあ。」
「そうですか?ありがとうございます。実は刺繍は私のお小遣い稼ぎなんです。街の小間物屋さんで売ってもらって、少しですけど自分の自由になるお金を貯めてきたんですよ。もうだいぶ貯まったんです。そろそろ普段着くらい買えるんじゃないかしら。」
ジュリアはそう言って嬉しそうにニコニコしている。
「そうか。えらいなあ。」
「先生に褒めていただくと、すごく嬉しいです。えへへ。」ジュリアは本当にすごく嬉しそうにする。
「あのね、先生、考えがまとまったらっていうの、聞いていただけますか?」
「ああ、もちろんだ。どんな結論になったか、楽しみだ。」
「えーっとね、私のやりたいことって、やっぱり朝話したこと、好きな人と一緒に生きて、その人の子供を産んで、家族て楽しく暮らしたいってことです。」
「そうか、はっきりしてよかったな。」
「はい。それでね、まずは好きな人に好きって言うことと、好きな人に私のことを好きになってもらえるようになりたいです。」
「それは君なら大丈夫だろう。君ほど魅力的な女性はそうはいないからな。私も応援するよ。」
「では・・・・・・あの・・・先生、私、好きな人がいます。実は私、婚約しているから好きって思っちゃいけないって心に蓋をしていたんです。でも、もうその蓋を開けてもいいですよね?」
「ああ、もういいな。正直になれる時が来たよ。よかったな。」
ああ、そうだな。若くてきれいで心優しいジュリアに想い人のひとりやふたり、いて当然だな。へイエスは落胆を顔に出さないようかなり努力した。
「はい。では、私が好きな人は、へイエス先生です。」
「・・・ッ」
「私、先生のことが好きで、だから先生の授業を一生懸命勉強してました。おかげさまで、先生の科目の成績だけ良くなってました。えへへ」
「いや、それは」
「あの、先生、私、先生のことが大好きなんです。ご迷惑でしょうか。もし迷惑だからつきまとうなっておっしゃったら諦めます。悲しいけど、仕方ありません。でももし迷惑じゃないってお思いになっていただけたら、これから私、先生のお好みの女になるように頑張ります。」
「待ってくれ・・・君は私のことを知らないではないか。私はもう来年30だぞ。君からしたらオジサンだ。しかも貧乏貴族の3男で、ただの教師だ。」
「そんなこと、お年は知りませんでしたけど、そのほかはもう知ってます。それ以外にもたくさん知ってます。先生は生徒ひとりひとりのことを見て誠実に対応なさる、とても良い先生です。でも、怠けている生徒には時には厳しく注意なさいます。私のようなもののために、解呪の方法を調べてくださったり、解呪をしてくださったり、それで倒れてしまっても助けてくださいました。私がひとりで舞踏会に行くのはかわいそうだと何年もいらしてない舞踏会なのに私をエスコートしてくださいました。会場で、ちょっとはずすと仰って、お言葉通りすぐに戻ってきてくださいました。私をずっと見ていてくださって、大丈夫だって安心させてくださいました。お疲れなのに、私につきあって抱いて寝てくださいました。先生は本当に優しくて、すばらしい男性です。また、お仕事でもとても良い先生です。・・・ね、よく知ってますでしょ?」
「・・・・・・だめだ、私なんかじゃ、君にはもっと若くて将来有望な男が」
「若いことが良いのですか?将来有望って、なにが有望なんですか?私は先生が好きなんです。先生だから、先生と一緒にいたいし、先生の子供が産みたいんです。」
「・・・・・・」
「先生、もし迷惑でなければ、私に先生好みの女になるよう頑張らせていただけませんか?」
「君は今、自分が何を言っているかわかっているのか?」
「はい、わかっています。」
「君の言葉は男をその気にさせる魔力があるぞ。」
「そうですか?その気になっていただけたらこんなに嬉しいことはありません。」
「俺が勘違いしてもいいのか?」
「勘違い、ですか?勘違いではないと思いますけど。」
「俺がいままで独り身なのは、好みの女性に出会っていないからだ。だが、いざ惚れるとなったら、きっとすごく嫉妬深く、重たい男だと思うぞ。」
「そんなの嬉しいことじゃないですか。独占してください。先生だけのものになりた・・・」
ジュリアが最後まで言い終わらないうちに、へイエスはジュリアに熱いキスをした。
しばらく抱き合って、キスしていて、ジュリアはもう全身が溶けてしまったような感じがしていた。
へイエスはジュリアの髪を撫で、体中を優しく撫でていた。
言葉もなく、ただ寄り添っているだけで、とても幸せな気持ちになった。
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