第8話 彼女を助ける為の策を考えたい!
「良かった!人が居ます!どうか、助けて下さい……。」
そこに居たのは俺の2倍近くたるゴブリンに持ち上げられ、銀色の髪を揺らす女性だった。
ゴブリンの足元には空の鍋と共にキノコ、野菜、木の枝が沢山置かれている。
状況から察するに、ゴブリンは女性をメインディッシュにし、食事をするのだろう。
女性の目元にはに涙と思われらしき物が輝いている。
そんな女性を助けないなんて選択肢は1ミリたりともない。
「今、助けます!」
その言葉と同時にゴブリンに飛びかかろうとするが、ふと、我に帰る。俺は補助魔法しか使えない...。
攻撃力なんて、さっぱり無い。
そんな俺がゴブリンと戦っても、俺という犠牲者が増えるだけ。自分だけでも逃げた方が良い、歪んだ考えが脳裏をよぎる。
でも、ここで俺が逃げたら彼女はゴブリンに食べられてしまうだろう。
ここで女性を見捨ててこそ、本当の無能となってしまう。
俺が来て、彼女の涙は若干だけれども消えている。
せっかく、希望が見えたというのに俺が逃げてしまったら、彼女はまた絶望のどん底に突き落とされるだろう。
彼女は俺が来てからずっと金色の瞳輝かせ、俺の方を見ている。
少しでも俺だけ”逃げる”事を考えてしまった事が恥ずかしい。
こんな俺でも期待してくれている人がいる。
求めてくれている人が居る。
もう、悩んでいる暇など無いだろう。
心の迷いが消え、気合いを入れるために息を大きく吸い直す。
「ゴブリン、俺がこの手でお前を倒してやる!!!」
声を上げ、更に自分に喝を入れる。
そして、スマホが装着された自撮り棒を構える。
構え方はローイの剣の構え方の見よう見まねだが...。
ゴブリンの手の甲にジャンプし、自撮り棒を振る。
「おりゃぁ!!!その女性から手を離せ!!!」
勢い良く、自撮り棒がゴブリンの足に当たり、付いていたスマホが外れる。
俺が着地する音と同時に、ボンっと大きな音が自撮り棒とゴブリンの手の甲の間からは音が鳴る。
しかし、全く緩まない彼女を握る手と効いてないですよと言わんばかりに傾げる首。
あれ、全然効かない...。
仙人から貰った配信中強くなれるスキルがあるのに...!
効かない攻撃にヤキモキしているが、早く次の手を打たなければ。彼女が食べられてしまう。
どうすれば、ゴブリンを倒せるだろう。
他に方法が見当たらなく、唇を噛む。
待てよ、俺。
今の目的はゴブリンを倒す事では無く、あの女性を助ける事だろう。
落ち着いて考えよう。深呼吸し、荒くなる息を整える。
幸いにも、ゴブリンは鍋の準備をしている。
彼女を助けるにはゴブリンの指を開かせなけばならない。
ゴブリンの指を開くには...。俺の力で無理くり開くのには、無理がある。
ゴブリンが自ら、指を開く事...。
ならば...!
俺は地面を蹴り上げ、ゴブリンの足元へ走り出す。
お読み頂きありがとうございます!
続きを書くパワーとなりますので良ければ、下にある評価やブックマーク等お願いします!
また過去話を修正、致しました。
皆さんの学校や会社、家事など応援しています。
良い一日になりますように。