きさらぎ駅にて ②
オレらは階段を上っていく。
階段を上っていくが、一向に上にたどり着きそうにない。ループしている……のだろうか。そのこともミヨシさんはすぐに感じ取ったようで、上には行けないと悟ったようだ。
前回のように墓石を壊して進む系ではなく、本当に何もない。
上っても上っても同じ場所に戻されている気がする。なので今度は下りてみると、普通に元の階段を上がる前の場所にすぐについた。
「上は行けそうだけど今行く方法はなし……」
「しょうがない。戻るとしよう。それに、戻る方法はまだ試していないのが一つあるだろう」
「あー」
あそこだな。
オレたちはとりあえず駅のホームに戻った。二人は世間話していたのか、アザトースの恐怖心もちょっと和らいでいたと思う。
「どうでした?」
と恐る恐る聞いてきた。
「出る方法は未だない……」
「そんな……私たちずっとここにいるんですか!? 嫌ですよ!? 私こんなとこにいたら死んじゃいますってぇ!」
「さすがに脱出する方法は用意しているはずさ。それを今から全員で探すしかないだろう!」
「いや……まだ行ってないところがある」
「ど、どこですか!?」
「この線路」
どうやらここはちょっとしたトンネルの中のようで、地下鉄ではないことはなんとなくわかった。
「ここが本当に駅ならば歩いたら次の駅に着くかもしれない。だが……戻ってこれない場合を考えると、あまりここに残していくのは危険が過ぎると思う」
「ぜ、全員で行くしかないってことですかぁ?」
「そうなるな」
「嫌ですぅううううう!」
そうわがまま言われてもな。
オレはとりあえず線路に降りる。そして、すぐ歩くと外が見えると叫んだ。やはり線路はどこかに通じているようだった。
電車、新幹線が来たら相当まずいが、ここしか脱出する方法がないのならここを歩くしかないだろう。
オレがそういうと、後ろから二人と、びくびくしながらゆっくり歩いてくるアザトースがいた。
「ほ、ほほ、本当に外です……。け、けど、こんな不気味なんですか……? 太陽の光も入ってこないような木々に囲まれてっ……」
「さて、何が出てくるか……。ただのホラーイベントならまだいいが戦闘系は勘弁……。前みたいなニセモノは嫌だな」
「私もニセモノは勘弁願いたいものだ……。と、またトンネルだ」
トンネルの前には看板が立てられており、「伊佐貫トンネル」と書かれていた。オレらはそのトンネルの中に足を踏み入れる。
トンネルの中には明かりはあるのだが、少しまだ薄暗い。ゆっくり、歩いていた時だった。突然、明かりの一つがパリンと音を立てて割れる。
「きゃあああああああ?!」
「なんかいるなァ……。こういうのにはつきもんだよなァ。覚悟は決まってるから怖くはねェぜ」
「戦うとなっても大丈夫だろう。遠くの明かりが割れている」
「もう一つ割れたな! だんだん近づいてきていないだろうか?」
「そういわれれば……。急げってことなのかもしれねェな! 走るぜ!」
オレらはとりあえずトンネルの出口目指して走ってみる。
走りながらオレは後ろに耳を傾けるとパリン、パリンと奥から順にライトが割れていっている音がしていた。
追いつかれたらなんかまずい気がする。オレらは全力で走り、やっとトンネルの外が見えてきたのだった。
トンネルの外に出ると、すぐそこには踏切があり、踏切には車が止まっていた。カメラを手にしていた男性がいて、何をしているんだと尋ねてくる。
「いや……知らない駅に降りてしまって」
「そりゃ災難だったね? ここら辺の駅はどうも怖い駅ばかりだからさ……。気を付けたほうがいいよ」
「すんません」
「よかったら乗っていくかい? 近くの駅まで送るよ。そこからまた電車に乗るといい」
「いいんですか! ありがとうございますぅ!」
と、アザトースは嬉しそうに笑っていた。
オレは怪しいと思いながら、全員、その男の人の車に乗りこんだ。なんかあってもいいようにオレが助手席に乗り込んだ。
が、男の人はにやりと笑った気がした。
だいぶ空想の設定も入ってます。




