銃のうちかた
とりあえずバッツさんの工房にある武器練習場にやってきた。バッツさんは武器を作っていて、こちらに目を向ける。
「なんだ。仲直りしたのか?」
「オレはもともとあまり怒ってねェっすよ。バッツさんが怒鳴ったあとラズベリーさんが優しく諭したんす。鉄は熱いうちに打てってことっすか?」
「そういうもんだ。俺は優しくすることなんてできねぇからな。ケアはあいつのほうがうまい。保健室の先生だからな」
保健室の先生なんだ。保健室の先生ってああいう母性あるよな。
「これに懲りたらそういう真似するんじゃねぇぞ。なぜ負けたか反省して次に活かせるようにしろ。それは現実でもそうだ。反省できなきゃ成長できねえからな」
「はい」
「武器練習場はあっちだ」
オレはカゲロウを連れて武器練習場に向かう。
「さて、とりあえずカゲロウ。武器を出せ」
そういうと、素直に武器を見せてきた。
武器は初心者武器と同じものだ。これじゃオレが撃った狙撃距離よりはるかに短い。射程距離が短いと敵に近づかれやすいからな。
「これじゃ射程距離みじけぇだろ。金全部使ってでもいいから銃を使いたいならもっと射程距離があるやつを使ったほうがいい」
「……そうなんですか?」
「銃は射程距離ぎりぎりであればあるほど威力が増す。それに、オレもそうだが、こういう狙撃中使うプレイヤーは基本的に接近戦に弱い。接近戦に持ち込まないためにも射程距離は長いほうがいい」
「……なるほど」
「それと、ジュピータから聞いたけどロックオンスキル積んでも外すらしいな」
オレがそういうとこくんと小さくうなずいた。
「撃つときに軸がぶれてんじゃねェの? ちゃんと抑えてるか? ちょっと撃つ構えをしてみろ」
「こうっすか」
撃つ構えを取っていた。
トリガーに手をかけているのは右手だけ。そりゃ安定しねぇよ。
「左手も使え。こういう狙撃は拳銃で十分だ。かっこよさを求めるんだとしてもその恰好は割とダサいから普通に左手で支えながら狙撃したほうがいい。だからブレるんだ」
「うっす……」
「例えばあの100m先にある的あるだろ? 片手でやると……」
オレは片手で撃ってみる。
当たった。
「……今のは当たったがオレでも片手は割と厳しい。妙にリアルに忠実だから撃った時に反動がある。それでブレるんだよ」
「は、反動……? そんなのあるんすか?」
「現実での科学でもやったろ……。作用反作用の法則だよ。ロケットと同じようなもんだ」
作用反作用の法則は知っていると思っていたが。
「両手でやると……」
オレは数発弾を撃つ。全弾命中。
「す、すげぇ……。全部当たった」
「ロックオンスキル積んでいたら普通は紺くらいの精度なの……。左手で支えながら撃ってみろ。そしたらロックオンしたら当たる」
「えと」
カゲロウは銃を構え、狙いを定めてトリガーを引く。
五発放って一発外したが命中率が上がったように思える。
「すげぇ、四発当たった!」
「な? 持ち方変えるだけで割と変わんの」
「今まで俺は間違ったうち方を……! あ、あの、もっとコツを……!」
「コツつってもあとは練習あるのみだからな……。とりあえずカゲロウがやることは武器の新調、スキルの厳選だな。スキルは最大5つまでしかセットできねぇし、銃を使うオレらにとっちゃロックオンスキルで一枠消えるからな。火力を盛るか、射程距離を盛るか、属性を盛るかになる」
ロックオンスキルが基本的に必須スキルなのが銃使いにとって大きな痛手だ。
5つまでしかつけられない以上、スキル枠一つが半強制的につぶされるのはゲームとしては痛い。
「ま、あとは実戦で慣れてくしかねぇ。サバゲーで負けた敗因はその狙撃能力ともう一つ、警戒心だ」
「警戒心……?」
「銃を撃ったら居場所がすぐばれる。弾の向きは一定だから来た方向をたどりゃ狙撃手がいる場所なんだよ。だから一発で決めなければならないし、外したと思ったら即移動。これが鉄則」
「即移動……」
「特にサバゲーみたいなバトルロワイアルみたいなゲームじゃ場所にもよるけどあまり残しておきたくない。遠くから狙撃されるのは誰にとっても相当厄介だからな。だからわかってるやつは早めに潰そうとしてくる。もっと警戒しろ」
「う、うす!」
「まぁ、これでオレの話は終わり。バッツさんに頼んで銃でも作ってもらえよ。最初なら何でも作ってくれるとは思うぞ」
「でも……あんなことして怒ってないですかね」
「さっきも笑って話してたろ。もう大丈夫だって」
「ならいいんですけど……」
カゲロウは恐る恐るバッツさんのところに向かったのだった。




