創作意欲
倒した。
ようやく、というか、倒せると思ってなかったが結局ゴリ押しで勝ってしまった。
「っっっしゃぁああああああ!」
「はっはっはーのはー!!!」
ジャイアントキリングにも程がある。
ウェンカムイを討伐した。そして、新たなエリアである北方領土が解放された。いや、解放されたって言い方だとなんか語弊を招きそうだが。
北方領土四島に行けるようになったようだ。
「なるほど。北海四島を護るボスがこのヒグマだったんすね」
「北海四島ね……」
この世界での言い方はそうらしい。
「北海四島には神を祀る神殿があるんすよ。神様にも会えるんすけど……アタシはどの面提げて行きゃいいんすかね? 絶対なぜ天界に戻って来たとか怒られるっすよ……」
「それは自業自得だろうがよ……。いや、まァ戦闘狂のお前を人間界に放つ神様も神様だけどよ」
こいつの実力はすごい。だからこそこんなのを世に解き放った神様も神様だと思う。
「まァ、今日は行かねェよ。疲れたわ……」
「そうだね。おれもものすごい疲労感が襲って来ているよ」
「今日は宿見つけてログアウトするかァ〜!」
ウェンカムイを倒したという満足感と疲労感。
シレトコにはもう用はない。あとは帰るのみだが、それは明日。強敵を倒した疲労感で、今すぐにでもログアウトして眠りたい気分。
「死に戻りでもするか」
「そうだな。それが手っ取り早い」
オレはラミュエルを戻し、とりあえず死ぬことにした。
自殺は出来ないようで、誰かに殺してもらうしかない。だがオレは祝福を持っているせいで人を殺せない。
となると魔物に襲われて死ぬ方が合理的だ。
「魔物いなさそうだな」
「となると……身投げか」
「あー」
なら良い方法がある。
オレはアマカケルを抱きかかえ、ターボジェットで上昇していく。
「なるほど、高さは作れるのだな! 素晴らしい! だが……」
「だが?」
「これは君がおれをキルしたことにならないか?」
「あー……ならねェんじゃねェの? 知らんけど」
「……おれのせいでカルマが溜まってしまうのはごめん被りたいが」
「まァ、大丈夫でしょ。もう十分だろ。離すぜ?」
「ああ。また、一緒に遊ぼうではないか!」
オレはアマカケルを手放した。
そして、オレもスキルの使用をやめる。パラシュートなしでスカイダイビングしてるみたいだぜ!
オレらはどんどん堕ちていく。これ現実だったら相当嫌だろうな。走馬灯何回見りゃいいんだか。
こういう死ぬ間際の曲……。とかも作ってみてェな。作るか?
「フライング……僕らは鳥なんかにはなれない……」
オレは地面に落ちるまで歌詞を考えることにした。
曲名はバードストライクだな。今のオレらのように堕ちていく曲にしよう。
歌詞を考えていると、地面がすぐそこまで迫って来た。
「じゃあな!」
オレはそのまま地面に激突して、目の前が暗転したのだった。
オレはヘッドギアを外しテーブルに置く。そして、今のテンションのまま、オレは持ってきてもらったノートパソコンを開き、迷惑にならないよう作曲を始めたのだった。




