ウェンカムイ ③
状況を説明するならば、マズイという一言に尽きるだろう。
巨大化したウェンカムイは吠える。その声も爆音で、オレらの耳をふさがせた。その瞬間、目の前にウェンカムイの前足が飛んできた。
オレはぎりぎりで躱す。
「どうするよ」
「これはどうしたものだろうか」
倒せるビジョンが思い浮かばねェ。
オレはとりあえず、銃を撃つ。脳天めがけて撃ってみるが、当たりはしたものの、硬いのか弾がはじかれたのだった。
頭を狙えない……? さっきは目だったからダメージが入ったが、頭がい骨を貫通できないのか。ヒグマの頭って固いのかよ。
となると撃つのは胸。心臓あたりを狙って狙撃するしかない。だが、この巨体では胸辺りに撃っても弾は心臓まで届かないだろう。
ならばどこに撃つのが正解なのか。
「口ン中しかねェなァ!」
ウェンカムイは大きく口を開け、かじりつこうとしていた。
オレはウェンカムイの正面に回り込み、弾を放つ。口の中に入っていった銃弾はダメージを与えたようで、痛そうな叫びをあげた。
その隙にアマカケルは懐にもぐりこみ、仕込み杖を思い切りぶっさした。胸のあたりにぶっ刺し、ウェンカムイはもがく。
あと、忘れていたことがあるな。
「ラミュエル! 来い!」
「じゃじゃーん! 召喚されたっすー!」
ラミュエルがいたじゃないか。
ラミュエルは光をまとって現れた。
「うおおお!? 馬鹿でかいクマっすねぇ! なるほど、これと戦うんすか」
「少しでも人数を増やすために呼んだ」
「二人じゃきつそうっすもんね! じゃ、クマ公! アタシとも喧嘩だァ!」
オレとラミュエルはそれぞれの弾を放つ。
再び口の中に着弾し、ウェンカムイは口から血のようなものを流した。そして、ぎろりとこちらをにらみつけてくる。
ウェンカムイは再び地面を持ち上げ、ぶん投げた。
「うおおおおおおお!? 地面えぐって投げつけて来るとはなんたるパワーっすか!?」
「そのくだりはもうやってんだよ! 躱さねェと死ぬぜ!」
「全力で躱すっす!」
オレとラミュエルは岩を躱す。
岩はオレらの後ろに飛んでいった。
「クマ公のくせに生意気っすね……。ラミュエルちゃんの必殺技見せちゃおうかなー」
そういって、ラミュエルの弓が変化していく。
弓から、なんとボウガンに変化したのだった。矢の先っぽがハートマークになってるあたり天使だったんだなというのがうかがわせる。
ラミュエルはボウガンを構え、一閃。ピンク色の光をまとったハートの矢が、ウェンカムイを貫いた。
「アタシの戦闘愛から生まれた愛の一矢! こりゃ効くっすよねぇ!」
「グガ……」
ウェンカムイはふらつき始めた。
体力あともう少し! ここまで来たなら削りきれる。オレは銃を構え、連射しまくった。あんなでかい図体だ。外すことはない。
アマカケルも守りを捨てて斬りかかっていた。最後の最後はごり押しで削る。
そして、ついに、その時は訪れる。
「グラァアアアア!!!」
と、大きな叫び声をあげ、そのまま地面に倒れ伏せる。そして、ウェンカムイは光となって消えていったのだった。
「た、倒した……ぞ」
「いよしっっっ!!!」
倒せたぜ!
《ホッカイドウのボス:ウェンカムイ を討伐しました》
《???:クナシリ島が解放されます》
《???:エトロフ島が解放されます》
《???:シコタン島が解放されます》
《???:ハボマイ群島が解放されます》




