うざい
家に帰りゲームにログイン。
オレは事務所に最初に向かうことになった。というのも、ログインして早々イリオモテから事務所に来てくれないかというメッセージが届いたからだ。
オレは事務所に入ると、イリオモテがやぁやぁと笑顔で近づいてくる。
「ラズリさん。僕と一緒にクエストを受けないかい?」
「クエスト? まァいいすけど……。なんでオレなんすか? ガッチガチの初心者だし装備とか整ってないからほかの人といけばいいんじゃないすか?」
「それがね……。誰も僕とは行ってくれないんだ」
なぜ?
クンツァイト曰く、この人はゲームがものすごくうまいゲーマーの人。そんな強い人となら一緒に行きたいといわれそうなものだけど。
なにか一緒に行きたくない理由があるんだろうな……。だがしかし、この人は害悪プレイと化するようには到底思えねェ。
なにか裏があるのか、それとも……。
「人望がない……」
「そうなんだよね……。僕って人望がなくてさ……。頼むよ、僕と一緒にクエストいこ?」
「いや……」
「この通り! 一生のお願い!」
こんなところで使っていいのかそれは。
こんな縋りついて行こうって言われると断れねェじゃねェかよ。いい大人が女子高生に縋りつくなんてはたから見たら事案だぞ普通に。
「わかったっすよ……。オレでよければついていきますって。だったら行く前に弾補充しておきたいんで武器屋にいってくるんすけど」
「僕が買ってあげよう。装備も買ってあげようね」
「はぁ……」
なんでこの人とは一緒に行きたがらないんだろうなほかのメンバーは。
この人と一緒に行ったら理由がわかるかもしれねェ。ものすごく厳しいとか? そんなことはあってほしくないんだが。
オレらはとりあえずクランに寄せられていた依頼を受けて、クエストに向かうことになったのだった。
オレらが活動できるのはまだトウキョウだけ。ほかのエリアはキークエストと呼ばれるものを複数個クリアしないと解放されないと言っていた。
キークエストを探して依頼を片っ端から消化しているんだとか。
「あの、カンストまでいいんすか? この弾結構威力出るやつっすよね?」
「構わないよ。メンバーのためになるからね!」
「あの、この銃、初心者が持つようなものじゃないっすよね? 今の段階でものすごくいい銃なんじゃ」
「初期投資は惜しまないことにしてるんだ」
「んじゃ、とりあえず……」
「戦闘の邪魔になるんだったらいつでも言ってね。僕もがんばるよ」
なんとなくわかった。避けられる理由。
小うるさいからだ。おせっかいというか、本当に気まずくならないよう常に話題をひねり出している感じがするし、気を配りすぎてそれをうざいと感じるようになってる。
いや、銃とかのプレゼントは嬉しいんだけどな……。なんか無理して話題を繋げてる感じがして話し慣れないのに頑張って気を配っている感じがひしひしと伝わってきてそれがダメなんだろうな……。
「あの、オレが言うのもなんすけど、少し会話をしてみないということもしたらいいんじゃないすか? なんか無理して話そうとしてるのが伝わってくるんで……」
「う、うるさかったかい!? ごめんね!」
「いや、気を使いすぎなんすよ……。思春期の娘を持つ父親みたいなんで嫌なんじゃないっすかねほかのメンバーも……」
「うっ……」
なんとなくそういう感じがする。
うちの父さんがそうだった。私や妹に嫌われたくねェから常に気を配っているけど妹はものすごくうざそうにしていた。なんなら「父さんうざい! 近寄んな!」って言われた。
構いすぎると結構嫌がられるもんだぜ子供は。オレは別に気にしてなかったけど……。
「そうだったのか……。ほかのメンバーも言ってくれれば直したのに……」
「いや、本人に悪意もなんもねェんだから指摘しづらいでしょ」
悪意ある行動より善意でやっているのが注意しづらくてたち悪い。
「そうか……。みんなには迷惑かけてたんだな……」
「まァ……無理してない世間話くらいならみんなも普通にすると思うんでほどほどがいいと思うんす」
なんでオレはリーダーにこんな指摘をしてんだろうなァ。
ゲームしてるのになんか人生相談みたいな感じになってんだよなァ。
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