イリオモテ、大雪山を目指す
サッポロのとある雑居ビルの中。
やっぱり死ぬのは嫌だな……と思いながら上体を起こす。
「おろ? 珍しいね。ラズリさんが死ぬなんて」
「まァ……ちょっと面倒なクエストを受けまして」
「面倒?」
オレは財宝伝説というものをリーダーに話した。
リーダーは面白そうだといっていて、ぜひクリアしようということ。一度行ったんだから場所がわからないとしてもどういった場所にあるのかは把握してるだろということで事前の準備を行うことになった。
「ちょうどラズベリーもいるしヴァルキリーもいる。おい、二人とも!」
「なぁに?」
「なんだい?」
と、リーダーはラズベリーさん、ヴァルキリーさんを集めてさっきの話を始めたのだった。二人もそれに行くのかということを悟ったようで、向かう準備を始めていた。
「あの、オレどこにあるのかまったくわかってないんすけど。吹雪いていて周りに目印とかあっても何も見えなかったし落ちたのは偶然だしどこのクレバスかわかんないんすけど」
「しらみつぶしに探していくほかないね。それに……多分そのクレバスの中に入る入り口ってのもまた別にあると思うんだよ」
「なんでそう思うのかしら」
「隠したのは大貴族なんでしょ? つまり人間だ。人間がそんな深さのクレバスにどうやって入るというんだって話だよ。しかも財宝もってということは相当重いはず。ラズリさんみたいな翼もないのに落ちて隠すというのは少々無理がある」
「だから別の入り口があると……」
「そう。俺らはそれを探せばいい」
な、なるほど。
たしかにリーダーの言うとおりだ。大貴族が隠したっていうんならそのクレバスの中に行けるような入り口がすくなくともどこかにあるはず。
「でもすべて憶測だよ。メタ的な視点からすると、俺らのような空を飛べない人間でもはいる方法は用意してるはずだよ。空を飛ぶというのはデフォルトなはずがないしね」
「まぁ、そりゃそうだね。空を飛ぶというのはその幻の店で必要なものを買うしかないからね」
「ま、話すのはあとだね。さっそく大雪山に向かおうか。一応、俺らの居場所はクランメンバーに伝えておこう」
リーダーはテキパキと大雪山攻略を目指して動き出した。
オレは活躍できなさそうだが、攻略したらあの財宝を少しもらえるんだからまぁお得だろう。もらえるかどうかはあの令嬢次第だが。
一度でも嘘をつかれたり、嘘だと勘違いしてしまうとどうも疑ってしまうからな……。
「大雪山攻略だったらそれなりの装備を整えに行こう。未来人はデフォルトで寒さ対策できてるんだけど、魔法世界とか現代人は普通に状態異常になるからね」
「そうなんすか?」
「なるよ。凍傷とかにね」
「凍傷……」
「行動するたびにダメージが入ってくのと、物理攻撃のダメージが倍になるんだよね。めちゃくちゃ厄介な状態異常だから対策していくんだ」
なるほど。未来人はデフォルトでそれが効かない、と。なかなかやばくないかそれ。種族に寄っての違いが出てきたってことか。
「じゃ、まずは防寒具売ってる装備屋にレッツゴーだね!」




