ファイアーボールに魅せられた女
酒井はあこがれのゲームの世界へやってきた。
ネームはアザトース。好きなクトゥルフ神話からとってきたらしい。アザトースってなかなか渋いチョイスするな。
「なんか日本って感じのゲームですけどすごいですね! みんな武器持ってるのに逮捕されない! 銃刀法違反ですよね!?」
「みんなそこつっこむな……。魔物いる世界で生身でいるほうが危険だろ」
対抗する手段がなければ無駄に殺されるだけの世界だ。そりゃ誰もかれもが防衛手段を身にまとう。
「んじゃ、まずは戦ってみるか?」
「戦います! 魔法、使ってみたかったんですよねぇ……」
にたりと笑うアザトース。
魔物が出る森に移動し、アザトースはどこからでもかかってこいと剣を構えていた。オレも一応手助けできるように拳銃だけ装備しておく。
すると、目の前に機械でできたゴブリンらしきアンドロイドが飛び出してきた。
『敵感知』
「初戦闘だぞ。メカリンってやつだ」
「頑張ります! えっと、最初はファイアーボールしか使えないでしたっけ? ファイアーボール!」
火の玉がメカリンに飛んでいく。
メカリンは火の玉に当たり吹っ飛んでいくが倒れるにはダメージが足りないようだった。
「ええ!? 死なないんですか!?」
「そりゃレベル1だしファイアーボールってそこまで威力ないし」
「ファイアーボール! ファイアーボールぅ!」
何度もファイアーボールを放つ。
そのファイアーボールはオーバーキルだ。メカリンはとっくに倒れている。
「ま、魔力全部使い果たしてしまいました……」
「そりゃたくさん撃ったからだろ。敵の体力を見て攻撃すんだよ。敵には必ず弱点属性ってのがあって、弱点場所も存在するんだ。そこを狙えばあまり魔力を消費しなくて済む」
基本は弱点を狙うことだ。
オレは戦闘に関する知識を教えていくことにした。そして、戦闘のことについてとなると切り離せないのがスキル。
魔法もスキルの一つであり、スキルは基本的に5つまでしか装備できない。オレの祝福のような常時発動特殊スキルに関しては例外らしく、5つにカウントされないらしい。
オレ自身はまだスキル一つも持っていない。特殊スキルはあるくせにして。
「ここがスキルサイクルショップだ」
スキルサイクルショップ。
スキルの巻物を売ってくれる店だ。もちろん、ここ以外で入手する方法はたくさんあるし、ここはメジャーなものしか置いてないから序盤以外訪れることはなさそうだってリーダーが言っていた。
が、ここにはオレのような銃を使うためのロックオンスキルなどがあるらしいので、銃をメインに使う人は一度は来ないといけない場所らしい。オレ自分で狙って外してねェから来たことなかったぜ。
「たくさんの巻物がありますね……。これ一つ一つスキルなんですか? これアイスボールって書いてますが」
「それはアイスボール……ファイアーボールの氷バージョンのようなもんだ。氷属性の魔法だな」
「へぇ……。でもなんか違うんですよねぇ。私ファイアーボールが好きになったのでファイアーボールを強化したいんですが……」
「となると魔法威力強化スキルが必要になるんじゃねェか?」
「ですよね。威力強化は必須です」
オレも入れるとしたら弾の威力強化だなァ。あとは属性付与があると便利か。
属性は全部で6つ。火、水、雷、氷、闇、光。火は水に弱く、水は雷に弱く、雷は氷に弱く、氷は火に弱い。また、闇と光はどちらも弱点だが、闇魔法は基本的にデバフ魔法、光魔法は回復魔法とバフ魔法らしい。
「オレはとりあえず属性付与スキルと威力強化スキルだなァ。一度スキルを覚えると取り外すのめんどくせェしロックオンはオレ自分で狙えるしいらねェな」
「えっと、火属性魔法強化……超強化……魔法射程距離増加……魔法攻撃力アップ……遠距離時魔法攻撃力強化スキル……」
「お前案外脳筋だったりするのか?」
買おうとしてるスキルが全部ファイアーボールのために投資だ。
火属性魔法強化系以外は割とどの属性にも使えるが、序盤はいろんな属性の魔法を覚えておくのがいいだろうに。
「火属性を無効にしてくるのがいたら困るな……。無効化を無効化するスキルってどっかにあるだろうから探してみようかな……?」
「どんだけファイアーボールにこだわるんだよお前……」
ファイアーボールに取り憑かれてないか?
アザトース……話したことはなかったが割と変わってる女だ……。




