荒廃したチバ
オレはバイクに跨り、トウキョウを走る。
このゲームの世界観は本当にごちゃ混ぜで、あまり手の加えられていない森林があったり、ネオン街のように光り、近未来の建物が並ぶ未来の街があったり、コンクリートで出来たビル群が立ち並ぶ現代の街であったり。
全てが入り混じってカオスだ。
「ヤマナシ県とカントウ地方が解禁されたんだったか」
昨日、ボスを倒した後にまた他のボスも次々撃破されたらしい。
カントウ地方全域を移動可能となり、イバラキ、グンマ、トチギ、チバ、カナガワ、サイタマが解放されたのだという。
で、気になるのがグルメだ。
その県には特産品があって、その特産品を売りに出す。そのグルメが多分この世界観入り混じった世界では変わっているかもしれない。
「未来のピーナッツとか魔法世界の納豆とか……。色々気になるな」
未来や魔法の違いである日本だからきっと納豆とかは出てるはず。日本人の根本的なところは変わらないだろう。とりあえず食べられるようにするとかは日本人は大得意。フグがいい例だろう。
「んじゃ、早速行くか! ヲタク!」
「はひっ! 失礼ながら同行させていただきますっ!」
オレはオータクン、クンツァイトと共にチバに行くことにした。
チバといえばぬれせんとか。ぬれせんはオレも好きで食べる。オーブンで焼いて食べるのがいい。マヨネーズを上にかけて焼くのが好き。
「それにしても……結構すごいね。本当に日本とは思えないくらい道整備されてない……」
「魔法世界にはアスファルトなんてものは開発されてないんですね! 科学ですから魔法とはまた違いますからね!」
「そうとも言えないと思うがな。行き過ぎた科学技術だって一種の魔法みたいなモンだろ。原理はあるといえど知らねェ奴から見たら魔法に見える」
「そうだね。魔法っていうのは科学なのかな」
「とも言い切れねェのが魔法なんだよな」
科学というのは全て論理がある。
どういう現象なのか、どういう力が働いているのかというキチンとした裏付けがある。
が、魔法は違う。魔力とかいう曖昧なモンで魔法を使うのだという。
「そろそろチバに着くんじゃねェかな」
「面積が3倍になってるから遠いね……」
「現実世界だと電車ですぐなんですけどね!」
結構時間かかったぞ。
区転移システムを使ったとはいえバカみたいな時間かかった。
すると、県境の看板が見えてきた。チバと大きく描かれた看板。チバにやっとついた。が。
「チバ、なんか砂漠になってない……?」
「オフロードが過ぎるぜ……」
チバを目にした。
砂が舞い踊っている。チバでこれなら異世界とか言われるグンマはどうなんだ?
とりあえず走ってみよう。バイクで走れるかはわからねェけど……。
「ちょっと遅くなるけどいけるね。でもなんでチバだけこんな荒廃してるのかな」
「草の一つも見当たりませんね……」
「いいねェ。世界が滅びた感じが最高にクール」
滅びた世界でキミは何を思う……。
なんか少しフレーズが出てくるな。こういうリアル体験型ゲームはフレーズとか創作意欲とか湧いてきて困っちまうぜ。
「歩けど歩けど砂ばかり……。オアシスなんてどこにもない……。私たちは何を求めて歩けばいいのだろう」
「歌ですか!? 作るんですか!?」
「フレーズを少し呟いてるだけだよ。作るったってメロディできてねェよ」
「続きは?」
「んーと……。昨日は私の誕生日だった、祝う者も全て死んだ。次は私の番だろう……」
「砂漠で遭難してる人だ」
「そうなんです。なんちゃって」
寒いギャグはまァいいだろう。
「作るんだったらもうちょいオシャレなフレーズ選ぶけどな。全部直訳だと歌としてつまらねェし」
「ですねー。結構オシャレですもんね」
ボカロはそういうのにも少し気を使う。
恋の歌でも少し遠回しにしたりとかな。
「なんかいる」
オレらはバイクを止めて武器を構える。
すると、目の前から走ってきたのは。
「エリマキトカゲ!?」
「エリマラソンって魔物だ」
「とりあえずどうします!? 結構数多いですしこのルートはオタクたちのルート一直線ですよ!?」
「逃げるしかねェだろ! あんなスピードでぶつかられちゃたまったモンじゃねェ!」
オレはバイクをものすごく吹かす。
ブゥウウウン!と轟音を鳴らし、バイクがエリマラソンの軌道から外れたのだった。
「エリマキトカゲが邪魔しやがって」
オレは銃を構えて狙撃していくことにした。




