5話 クレール視点 商会長の父との商談
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クレールは困惑した。幾ら龍が強いとはいってもこれだけの魔石を貯めこんでいるとは……。殆どがゴブリンの物の様だが、その上位種の魔石も幾らか有った。
これだけの魔石を持っていれば、魔界では5年は遊んで暮らせるだろう。2000、いや3000はあるだろう魔石を眺めてそう思った。
これで死体も有ればいう事は無かったのだが、ないものは仕方ない。この魔石だけでも売り払い、城の飾りつけの足しにしないといけない。
「ともかく、まずは龍の血で家の商会からマジックバッグを買わないと……魔石を運ぶのにも苦労するなんて」
簡易召喚で自分を対象にし、転移する。向こうの座標さえ押さえておけば、転移は簡単なのだ。……地界へ行くときは、初めは怖かったものだが、今は慣れたものだ。
地界へ飛ぶにしても座標を適当に入れて飛ぶのだが、飛んだ場所が悪いと死んでしまうし、町中に転移しても人間の相手をしないといけない。割と博打だったりするのだ。
運よく、弱い魔物の生息地を引き当てたから良いものを、これで死ぬ悪魔も多数居るのだ。私は運が良かった。
今回の事にしてもそうだ。龍と波長があったのは運が良かった。おかげで龍の血が手に入った。永遠の忠誠を誓ったが、安いものだと思う。それ程に龍の血の価値は高い。
「戻ったわ。父さんはいる?」
「商会長なら会長室におられます。お客様も見えておりません」
「そう、ありがと」
店番の子に声を掛けつつ、父さんの所へ急ぐ。マジックバッグは何個かあったから譲って貰えるとは思うけど、交渉はしないといけない。私は龍の召使になったのだから。
「ただいま、父さん。ちょっと大きな商談をしたいんだけど、大丈夫?」
「おお、クレール。戻ったのか。それで、商談とはなんだい?」
「ええ、それよりも先にいう事があるわ。……召喚に応じたわ。これからは龍の召使として生きることになるから」
「ええ⁉ それは凄いことだが、召喚に応じたのかい? 危ないから止めろと言われてただろう?」
「対価が大きかったのよ。龍の血よ。それを対価に貰ったわ。……それを使って商談をしたいのよ」
「龍の血……それは凄いものを貰ったものだ。それで、商談とは何だね?」
雰囲気が変わった。家族のものから商人のものへと空気が変わった。ここからは父さんとの勝負だ。なるべく利益を、龍の召使として最大限の利益を引き出さないといけない。
「マジックバッグが欲しいのよ。これからは子爵級の力を持ったまま地界へ行けるわ。それに龍の力もある。今まで以上に地界の魔物を仕入れられるわ。だから欲しいの」
「……確かに龍の血は対価として大きい。だが、マジックバッグも貴重な物だという事も解っているだろう? ダンジョンでしか取れないものだ。魔界にあるダンジョンにはジャックが潜っているから確かにマジックバッグは幾つかある。だが、今後の利益を考えるとマジックバッグの方が価値が大きいよ。幾ら龍の血とはいってもね」
「解っているわ。だけど、マジックバッグでないと運び出せない量の魔石があるのよ。……魔物の死体はすでに処分されていたから無いけれど、少なくとも2000の魔石は有ったわ。それをこの商会に売る。これからも継続的にね」
「うむむ……龍の血に魔石が2000、それに継続的に地界の魔物が手に入るとなると、確かにマジックバッグを手放してもいい話だ。……それで、龍は対価に何を求めているんだ? それ如何では話を蹴らないといけなくなるよ?」
「城の充実ね。側はあるのよ。でも絨毯も無ければタペストリーも無い。窓ガラスも無ければカーテンすらない。そんな城なのよ。それを充実させるのが私の仕事。この商会にも沢山ある商品でしょ? それを買いたいのよ」
「成る程、それならうちにも旨味がある。生地はどうするんだい? 魔界で採れるものならば安く売れるけど、地界産の物やヘルモスやヘルスパイダーの物なら高くなるが……」
「初めは安いものでいいわ。まずは体裁を整えようと思っているから。高級品はその後ね。一番使用頻度の高い所から順次入れ替えていくつもりよ」
「そうかい。それならば数も問題ない。お金はどうするんだい? 魔界の通貨をあげても良いのかい? 地界の通貨なんて持ってないけど」
「当分は魔界で買い物をするから魔界の通貨でいいわ。地界の方は今後考えていくから。まだまだ先だと思うわ」
「……分かった。マジックバッグを売ろう。龍の血と交換でいいね?」
「ありがとう、父さん。それと、段々と空気が緩んでいるわよ?」
「娘と商談をする予定なんて無かったんだ。しょうがないじゃないか」
段々と空気が緩んでいっていたのは仕方ないのかな? 普段は大丈夫なんだろうか。大商会の商会長なんだから、しっかりとしてもらわないとね。
「しかし、龍の召使か。大変そうじゃないのか?」
「さあ? 私もなったばかりだから。大変なのかどうかは解らないわ。それと、人手も欲しいのよ。魔物の対処は私とカルネラ様——龍のご主人がするから問題は無いわ。雑魚級の小悪魔でもいいからとにかく人手が欲しいのよ。日帰りになるでしょうけど」
「人手ね。分かった。募集をしておこう。小悪魔でも良いのならたくさん集まるだろうけど、どうする? 何で条件を縛る?」
「不慮の事故で地界で死んでもいい者ね。それで縛って頂戴。縛れているか解らないけど」
「小悪魔だからねえ。そのくらいで縛られるのか解らないけれど、分かったよ」
「強さよりも器用さを買ってちょうだい。城の運営だもの。食事はまだ出せないけれど」
「食事は持参ね。日雇いになるかもしれないが、いいかい?」
「ええ、給金は今回運んでくる魔石から差配してくれればいいから。今後は魔物の死体も手に入るはずだから損はしないはずよ」
「無くなり次第送るのを打ち切るから大丈夫だよ。座標だけ教えておいてくれるかな?」
「そうね。紙をくれるかしら。ペンもね」
「分かった。これに書いておくれ」
座標は……あの一番広い部屋でいいだろう。まずはそこから充実させて行けばいいか。……でもあの城は何のために作ったんだろうか。さっぱり解らないのよね。
まあお仕事だもの。その辺はしっかりとやるつもりだ。悪魔は契約を遵守する。それが存在意義でもあるから。契約を破ると爵位が下がっていくのだ。それが悪魔なのだ。
さて、何のための城かは解らないが、運営する手筈は整った。後はどれだけ稼ぎがあるかだが、足りなければカルネラ様に何か倒してもらえば問題無いだろう。
ともかく、マジックバッグは手に入った。さあ魔石を売りに来ないといけない。魔石の金は受け取らない。プールしてもらってそこから給金やら内装の費用に充てていく。手元にお金が残らないが魔界の金を地界に持っていっても何の価値も無いだろうから。
これから忙しくなりそうね。弟は、ジャックはどれくらい強くなるかしら。大悪魔には成れるのだろうか。成れてもカルネラ様を倒す事はできないような気がするが。大悪魔になれば龍と渡り合えるとは言われているが本当だろうか?
勝てる様に見えないのよね。龍は魔力の密度が凄まじいのよね。まあ戦うことは無いでしょうけど。どちらかといえば味方なのだし、契約を遵守しつつ、利益はしっかりと貰いましょう。悪魔なのだから。