30話 クレール視点、ドルレアン商会へ借りに行きます
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存在力を高める薬がカルネラ様に効果が無かったとすれば、人間にも効果が無い可能性がある。……このことはドルレアン商会はどの程度把握しているのだろうか。
人間と悪魔の技術格差、それはこの薬のおかげだと思っていた。でも人間には効果がない可能性がある。そして人間は戦う事で存在力とは違う何かを得ている可能性、無いとは言い切れない。
マジックバッグの一件から技術の格差は本当にあるのかと疑問に思いかけていた。……人間はゴブリンを用いなくとも皮紙やインクを潤沢に生産できるのではないか。そう思えてならなかった。
調べるしかない。ドルレアン商会には借りを作ることになるが、……今回は致し方ない。父さんに確認は取らないといけないが。
「戻ったわ。父さんはいる?」
「商会長でしたら会長室にお出でです」
「そう、ありがとう」
情報をどれだけ握っているのか解らないドルレアン商会、あそこ以外も情報は持っているだろうが、貸しを返してもらう訳にはいかない。貸したままでいたいから。ドルレアン商会ならば問題はない。どこの商会もあそこに借りはあっても貸しは無いだろうから。
「父さん、戻ったわ」
「クレールか。どうしたんだ?」
「ドルレアン商会に確認したいことが出来たの。借りてくるけどいいかしら?」
「……仕方ないね。あそこには返せる見込みは無いんだけどね。しょうがないんだね?」
「ええ、解らないことが多すぎるもの。しょうがないのよ」
「そうかい。車を使って行きなさい。誰か!」
部屋の前で待機していた職員が来て私を案内する。慣れたものだけどね。それにしても借りを何とかして返す算段も付けないといけないのは難しいわね。何をもって返せるかしら。
お金では無理。お金はそう言うものではない。薬にしても向こうの方がシェアは上。ゴブリンの供給がうちの商会の方が安定しているというところ位しか優位性がない。
今は諦めるしか無いわね。何かしら後で返せるといいんだけど。そうなると人間の作った物になるのよね。向こうがどれだけの物を確保しているのか知らないけど。
「着きました、お嬢様。どうぞ」
「ええ、ありがとう」
ドルレアン商会の門を開ける。さて、今回も商会長と上手く会えるのかどうか。今回は別に重役でも構わないわ。知っていることを聞ければ良いのだもの。
「ご用件を伺います」
「商会長のご予定は空いているかしら? 地界について聞きたいことがあります」
「ご予約はされておりますか?」
「いいえ、急に来たのよ。無理なら解るもので構わないわ」
「少々お待ちください」
さて、向こうがこっちをどう見ているかよね。新興の商会ごときと思われているようなら、暇でも重役に通されるでしょうね。龍の眷属という札はすでに切ってしまっている。もう使えるとは思っていない。マジックバッグもどきももうない。こちらには切る札がない。
「商会長がお会いになるそうです。どうぞこちらに」
……今回は重要情報を持っているわけでもないし、向こうに情報も渡っていないだろう……いや、待ちなさい。小悪魔を使っている可能性があるのか。となれば城下町の状況も知られていると思った方が良いのかもね。情報はあちらの方が上手なのは変わらないけど。
「どうぞご令嬢、座ってください」
「ありがとう。突然の来訪なのに予定を空けてくださり感謝します」
「いえいえ、何やら面白いことをなさっているようで。大きく育ってくれることを祈ってますな」
「ありがとう。なるべく大規模にして見せるわ」
「ええ、是非に。と、これはこれは、ご用件を伺っていませんでしたな」
「ええ、地界の事、人間の事についてお話を伺いたくて。人間には存在力を高める薬の効果が無いことはご存じ?」
「ええ、ありませんな。あれは悪魔にしか効果が無いですな」
「そう、龍にも効果が無かったわ。天使は試していないけれど」
「天使にも無いでしょうな。天使は信仰によって強くなるもの。悪魔とは違いますな」
「そうね。人間が強くなるには戦って勝つ以外に方法が無いとは本当かしら?」
「本当ですな。人間は戦ってこそ強さを獲得する。それは同種同士でも成り立ちますな」
「人間が同種で争いを止めないのはそう言う理由があったのね」
「それは違いますな。人間も魔物とだけ戦えば良いのですな。同種と争うことは別に必要無いのですな」
「……そう、でも争うと。流石卑しい者ね」
「そうですな。人間とはそう言った者ですな」
「悪魔が信仰によって強くなることも無い訳ね」
「その通りですな。悪魔は薬でしか存在力を高められないのですな。必然的に薬を扱う事に長けるのですな」
「そうね。でも技術は私たち悪魔の方が上と言い切れるのよね?」
「ええ、マジックバッグの複製以外は劣化品と言えますな。マジックバックの複製もこちらでも作れたのですな」
「でしょうね。研究者が負けていられないもの。何年も経ったものね」
「当然ですな。人間もダンジョン産の物はマジックバッグ以外は複製出来ていないようなのですな」
「そうなのね。こちらでも確認は出来ていないわね。冒険者の持ち物にそれらしいものは無かったわ。そうなると、技術では追い越したと思って良いのかしら?」
「良いでしょうな。探りを入れましたが、他のダンジョン産の物は複製出来ていないようですな」
「ダンジョン産といえば魔剣ですけれど、魔剣は無理なのかしら?」
「魔剣はまだ出来ていないようですな。鍛冶職も頑張ってはいるのですな。錬金術師と何かできないかを探っているところですな」
「そうなのね。マジックバッグはまだ市場に流せないのには理由があるのかしら?」
「そうですな。大公爵級の悪魔がでないといけない魔物の素材を使いますな。今は代替品を探しているところですな」
「そう。結局のところ地界に行くか、爵位の高い悪魔が出張るしか今は方法は無いのね」
「そうなのですな。安定供給とはいかないのですな」
「では、暫くはうちの地界産のマジックバッグもどきは市場に流せない訳ね」
「そうですな。自分のところで使うのに止めておいて欲しいのですな」
「そう。ところでビッグモスを大きく育てたいのだけれど、何かいい方法は無いかしら?」
「そうですな。名を付ける方がよろしいですな。それで商人を呼び寄せれば良いのですな」
「商人が寄り付くものなんてあったかしら?」
「ビッグモスの糸は地界では高級品ですな。それに魔蜂の蜜も蜜鳥の蜜も高級品ですな。それを売ればよろしいですな」
「そうなのね。そうしてみるわ。今日はありがとう。参考になったわ」
「こちらこそ、マジックバッグの報告がまだだったので丁度良かったのですな。誰か!」
控えていたであろう女性に案内されて出る。……悪魔信仰は意味のないことではないと。天使から信仰を剥がすチャンスね。それと、商人を何とかして呼びこまないといけないと。名前を付けるとしても何と説明すればいいかしら?
ともかく大きな借りが出来てしまったわね。返すかどうか悩ましい所だけれど。借り得って事もあり得るからね。まあ返した方が良いのは良いんだけど。
何か考えましょう。人間を使ってみても面白いかもしれないけれど、許可がいるわね。何かいい方法があれば情報を流しましょう。返すチャンスは窺っておかないと。
ともかく名前ね。何と言い訳すれば良いのかしら? まあいいわ。その辺は素直に言いましょう。カルネラ様に不利になることでもないのだから。




