202話 食料の値段が上がり始めた、男が徴兵されてるって
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ふむ、ゴブリンを外に飛ばしたところだな。今回のゴブリンは襲ってこなかった。聞き分けの良いゴブリンだったため、外に飛ばすだけにした。
これで今は14匹のゴブリンが繋がっている。方角はアンベマリノ王国方面だな。そちらの斥候代わりに使っているのである。殺されるのが彼らの役割だ。
今のところ減るという事は無い。送り込んでいる奴は全部生きている。という事は冒険者の入りも無いという事だろう。基本的にはゴブリン同士は協調するからな。
割れる場合は簡単である。リーダーが無能か食料がないかのどちらかである。ゴブリンにも個性はあるのだ。性格が合わないこともあるだろうが、一応な。
上位種に食われる可能性もあるのだが、今のところはそんな感じでは無いらしい。順調に増えていっている。多くのゴブリンがこちらから離れていっているのだ。
何故かは知らん。何故かは知らんが、離れていっているな。恐らくだが、食べ物がそちらにあるのだろうと思われる。ゴブリンの行動理由は食欲と性欲だからな。
それ以外ではうまくは動かんぞ。あいつらほど単純で訳の解らない魔物はいないのではないか? あいつらは安全であると不能になるのだよ。訳が解らん。
ゴブリンの養殖が出来ていれば、魔界はもう少し発展していたであろうに。まあ誤差の範囲かもしれないがな。どうなのであろうな。
まあそれだけ離れていっても殺されないという事は、人間の生活圏がそれだけ後ろに下がったという事である。魔物の活動領域が増えたという事だな。
アンベマリノ王国がどれだけの範囲を放棄しているのか知らんが、本当に大丈夫なのであろうな。まあ大丈夫な訳が無いのだがな。危険域である。
クレール曰く、食料の値段が上がり始めたようだ。農民がそこまで離反したかと言うところではあるのだが、不味いなんてレベルを当に超えている。
クレールからの情報ではあるのだが、どうも元アンベマリノ王国はアンベマリノ王国から農作物を輸入しているようである。
完全に末期状態ではないか? 塩の輸入もしているのであろう? どういうことなのだ? 属国と言っても過言では無いではないか。
やばすぎる。やばすぎて変な声が出そうになったぞ。どうなっているのであろうな。どの面下げてこのような事態になっているのであろうな。
何をするために独立したというのだ? 全く意味が解らんぞ。どうもこうもない。何がどうなってこうなるのであろうな。全く解らん。
来年には潰れているのではないか? そのくらいの勢いである。我が国にも難民がたくさん来ているが、それの内訳も女子供が多いのだ。
賦役は終わったのであろう? 防衛施設は出来たのではないのか? 一応探らせてはいるのだがな。結果はまだ来ていない。何故に男手が無いのだ?
男手が取られる所はもうないはずだと思うのだがな。防衛施設以外に何があるのだ? 後作っていない物は何がある? 何もないはずだがな。
何もなくて普通なのだ。何かがある方がおかしいのである。……何処まで離脱が進んでいるのか解らんが、鉱山夫が居なくなったら終わりなのだぞ?
それはジルバルク王国にも当てはまることなのだが、あそこの鉱山はもともと軍が管理していたのである。それが今では冒険者の管理になってしまっている。
何かおかしなことだとは思っていたのだよ。ジルバルク王国が戦争をする国になった時にシャノンから伝えられたのは兵士が弱いという情報だった。
そんな訳はあるまい? 軍が鉱山を管理しているのだから戦える兵士は多いはずである。武器が鶴嘴と少し変わってはいるが、戦えるはずだったのだ。
何時から鉱山の管理を冒険者に委託した? 戦争派の声が弱すぎたのか? だとすると派閥の声が強すぎても弱すぎても害があるという事ではないか。
派閥は均衡していないと機能しないとかであるならば、かなり運用が難しいぞ。どうなっているのだ? 何がどうなっている。訳が解らんぞ。
派閥の運営か? 王の権力か? どちらにしても人間社会はややこしすぎる。どうすればうまくいくのであろうな? 何をどうすればこんなに混乱するのだろうか。
『カルネラ様、少しよろしいですか?』
『クレールか。どうした?』
『男手が何処に取られているのか解りました。兵士として徴兵されているようです』
『……馬鹿なのか? 農民の男手はどうするというのだ?』
『さあ? どうするんでしょうね? 兎も角兵士として徴兵されているとだけ情報をつかみました。何処かに攻めるつもりなんですかね?』
『解らん。解らんが、とんでもない馬鹿が音頭を取っているという事が解ったな。農村の離反状況はどうなのだ?』
『半分程度は離反してますよ。正直、どう立て直したらいいのかが解りません』
『解らんだろうな。これは誰にも解らんぞ。今から内政に全振りしたとしてもどうにかなるのか? 兵士を一度、農民に戻さなければ治まらんぞ』
『まあそこまでしないと無理でしょうね。本当にどうするんでしょうね?』
『解らん。解らんという事が解っただけだな。全ての村から徴兵は行われているのか?』
『流石にそこまでは解りません。しかしながら、ほぼ全てじゃないですか? 食料もアンベマリノ王国から買い入れている状況ですよ? そんな状態でどうするんでしょうか』
『何もできずに終わると思うか? 戦争を吹っ掛けられると思うか?』
『無理じゃないですか? 兵站が持たないでしょう?』
『であろうな。どうするのであろうな』
『さあ?』
本当にどうするのであろうな。訳が解らなさ過ぎてどうにかなるぞ? 別れた意味があったのかと問いただしたい。既に半壊状態ではないか。
農民を兵士にした。これが一番意味が解らん。農民は農民のままで良いはずだぞ。兵士は別にいるのだからな。……兵士も離反したのか?
解らん。情報があっても、あまりにも馬鹿すぎてよく解らん。兵士と農民は別けないといかんぞ。屯田兵が許される数にも限界がある。ましてやこの世界の常識から考えろ。
戦うほどに強くなるのが人間だ。兼業兵士が役に立つわけが無いだろう。兵士は専業でこそだ。何を考えているのか。
農民兵が使い物になるころには国が崩壊しているぞ。大丈夫では無い。全く大丈夫では無い。どうしたものか。これでは難民が増えるばかりである。
言っても、何もできんのだがな。どうしたものか。難民に来るなとは言えんしな。来るしかない者たちなのだ。別の国に行けとまでは言えん。本当にどうしたものか。




