195話 キックボードは完成した、錬金術師から石鹸を奪おう
建てることは止めぬ。それ以外に私の仕事が無いのだからな。必要な事はしなければならん。人口の増加に備えるのだよ。そのうち足らなくなってくるからな。
足りなくなってくればどうすればいいのであろうな? 路上に生活するものが増えるのか。それはそれで問題なのだが、遠くない未来にはそういう事になるのであろうな。
完全にそうなると決まったわけでは無いのだが、増えれば増えるほどに人口は増えていくだろう? そうなると足りなくなるのは必須だからな。
まあ仕方がない。こうなったのは私が国を興すと決めてから解っていたことではあるからな。まあ問題しかないのだが、なるべく先延ばしにしたいのである。
それで、まあいろいろとやっているのであるが、キックボードは完成したぞ。相当苦労はしたそうだがな。ベアリングがネックだったようだな。
相当の技術が必要だったようだな。何がとは言わないが。ともかく苦労する点はベアリングだったのだ。それがうまくいくまでに相当な時間がかかったみたいだな。
なんでも球がうまくできなかったそうだ。なんともならんかったそうだぞ。技術不足というよりかは鋳物自体をしてきていなかった弊害だな。
鍛造ばかりをやっていたのだよ。鋳造をやっていなかったのだ。仕方があるまいよ。完全な球体の型作りからスタートしたのだ。時間がかかるのも無理はない。
標準の大きさを決めるのにも四苦八苦していたのだがな。まあ何とか形にはなってくれたのである。球作りには今も苦戦はしているがな。
鋳造ではミスリルの鋳型を使っているのだがな。その鋳型を作るだけで一苦労であった。そして鉄を削る作業も一苦労である。
どうしてもな。削りの作業は必要である。流し込む場所は作らねばならん。その場所はどうしても削らねばならんからな。まあ何とかなるのである。
それで何とかかんとか作ったわけではあるな。結局は職人技も必要なのだが、なんとかなったのは良いがな。時間がかかるのと大変なのは変わりない。
手間自体はなんともならんのだよ。なんともならんから問題ではあるのだがな。まあできたのは出来たのだ。それで良いではないか。
乗ってみた感じは良い感じだったぞ。曲がろうと思えば曲がれるしな。あれはあれで完成だとは思うのだがな。悪魔には必要ないな。そもそも飛べるのだから必要はない。
最終的にはあれに動力を積み込むのだが、魔道具になるのか。結局は魔道具職人の育成にも力を入れないといけない可能性があるな。魔界で作ってもらうにしても限界があるのである。できる事であればこちらでしなければならん。
まあ魔道具はまだまだ先の話であるな。そこまで行くのに何百年かかるか。解ったものでは無いな。当分は無理である。まずは人を増やすことから始めなければならんからな。
キックボードはとりあえず形になった。それで良いのだよ。問題は量産性だが、量産性は悪い。鋳造でできるところばかりなのだがな。それでも最終加工は必要である。
鍛冶師の仕事はそれだけではないのだからな。仕事は山ほどあるのだ。まあ何人かは取られても問題は無いがな。ゴムの方もそれなりの量でよかったしな。
ゴムと接着剤を作るだけであるならばそこまでの手間ではない。手間ではないのだが、錬金術師が思ったよりも増えないのがいかんのだよ。
錬金術師は本当に増えない。何か働いているのかと言いたくなるほどに増えていないのである。今は12人らしいぞ。錬金術師も大変である。色々と作らないといけないからな。
石鹸に宝石に他のこまごまとしたものにと、とにかく何でも屋として機能してしまうのが錬金術師だ。地界ではポーションの生産くらいしかしていないというのがもったいない。
錬金術師の仕事は他にも沢山あるのだからな。薬は薬師でも代用できるのだから薬師に任せればいいのである。その他の物の方が大切なのだよ。
本来は石鹸も普通に作りたいところではあるのだがな。いかんせん作り方が解らない。そのうち研究させるが、品質を確保できるまでにどのくらいの時間がかかるのか。
解れば良いのだがな。簡単に作れるとは思うのだがな。とりあえず油と灰があればできるのだからな。灰から灰汁を取れれば後は混ぜるだけではないのか。
労力がどのくらいかかるのかが解らん。とりあえず暇なご婦人にお願いするか。恐らくはそこまで難しくない仕事のはずである。
錬金術師以外で片づけられる仕事はそれで片づけないといけないからな。錬金術師の仕事は錬金術師しかできないことをやらせるのだ。
でだな。誰に仕事を張り付けるかだが、農業担当が3人いるのだからその中の誰かに就けるとするか。暫定でカトリーヌにつけておくか。農業の比重は重いが、何とかなるであろう。
それかソフィーに付けるか? 役所とそれに付随する風呂屋の管理だけであったな。建物も近くにあるからな。……いや、あそこはいっぱいだったか。ならば多少は場所が遠いのか。
ふむ。ソフィーに付けるか。役所の仕事は正直なところ問題が起こった時以外にないのが実情だからな。何かと動きやすいのが役所の担当である。
であればソフィーに張り付けるか。うむ、そうするか。とりあえずそうしよう。石鹸作りを錬金術師から剥がさねばならん。
「そんな訳でだな。石鹸作りの方をよろしく頼む」
「それは良いけど、なんで人間の言葉を話してるの?」
「偶には話さんと忘れるであろう? 気まぐれといった所だな。それで頼めるか?」
「まあ仕事は少ないし、頼まれるよ。思ったよりも問題が起きないんだよね。魔界でももう少しあると思うんだけど」
「単に人口が少ないからだな。人口が増えればその分問題が産まれるだろうさ」
「それにしては少なすぎないかなって思うけどね。難民がこれだけ来てるのに問題を起こさない方が不思議なんだよね」
「そこまでは知らぬ。困窮はさせてないつもりだからな。困窮すれば違うのかもしれんが」
「地下でここまでやってるんだから、困窮はしないよね。ここで困窮しようと思ったら余程働かないかしないと無理だよ。まあ働いて無いのも一定数居るけどさ」
「そういった者は意外と大事にせんといかんのだよ。手鞠の件もある。何かの発想を持って来てくれる可能性があるのだ。そのままにしておいてやってくれ」
「それで、雇用の充てはあるのかい?」
「婦人部で何とかならんか? 暇をしている者がいるであろう? そういった者たちで何とかならんか?」
「そこから雇用するんだ。まあ別にいいけど。それでも一定数は絶対に残すからね。石鹸作りよりも優先するから」
「悪魔のこだわりは解らんが、まあそれでいい。暇をしていて働きたいと思っている者で良い。恐らくは割と大変な作業だとは思うのだがな」
「了解、適当に人を集めてやってみるよ。油と灰汁を混ぜるだけでいいんでしょ?」
「そのはずだ。詳しくまでは解らん。灰汁が濃い方が固まるのではないかとは思っているが。そこは実験してくれ」
「錬金術師から仕事を剥がすのは良いことだし、任されるよ。なんとかするでしょ」
ソフィーは気楽に考えているが、どうであろうか。そう簡単に終わるのだろうか。まあなるようにしかならんのだ。仕方があるまいよ。どうにもならんのなら仕方がないが。
とにかく錬金術師の仕事は奪えるのであれば奪った方が良いのだよ。錬金術師は錬金術師しかできない仕事を任せるに限るのだ。その辺りは考えているのだぞ。
まあ人手不足でどこまでできるかは未知数ではあるが。まあ何とかなるであろう。何とかしてくれるであろう。多分そこまで難しくないはずだ。多分な。




