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6:『アーティファクト』

 リド隊長が話してくれたのは、こうだ。


 出自は不明。年代は最低でも、『勇者』と『魔王』が争っていたような時代にまで遡る。


 異世界から現れたとも、当時のオーバーテクノロジーの結晶とも言われているアーティファクト。


 人が魔に対抗するための技術の結晶、『決戦兵器』。少なくともそれが、アーティファクト・"Legendiaシリーズ"なのだという。


 ヒトの形をした、自我を持つ機械。強力な異能(スキル)や魔法を搭載し、専用のアーティファクトを持つアーティファクト。


「……と、言うのが私が知っている情報だ。間違いはないな?ユグドラシル」

「はい。僕に記録されていることとの齟齬はありません」


 ユグドラシルに確認をしたリド隊長は、椅子から立ち上がった。


「"Legendiaシリーズ"はあまりにも強力であることと、見た目がほとんどヒトであると同時に確固たる自我があるため、基本的に情報が伏せられている。が、それそのものを見つけて来られては、開示せざるを得ないのでな」


 「他言無用だ」と、隊長は私達を睨む。


「ということは……隊長、もしかしてフェルトリア軍?の奴らの目的って、"Legendia"だったってことですか?!」


 タンザがハッとした様子で声をあげる。すると、リド隊長はひとつ頷いた。



「おそらく、な。どうやってその情報を手に入れたかは分からないが、大きな目的はそれだと考えて間違いないだろう」

「な、なるほど……?」

「そういう訳でな。まあ、この件に関しては後程、上に相談した後にラピス・ラグドールへ連絡すべきことがあるかもしれん」

「分かりました……って、それまでユグドラシルはどうするんですか?」


 ふと思ったことを口に出す。


「ああ。とりあえず見ておかなければならないが、今のマスターはラピス・ラグドールだったな?ユグドラシル」

「マスターですか?そうですね。現在はラピスがマスターとして登録されていますよ、リド様」

「……だから、今から中庭でお前達の稽古をつけてやるが、共に来させる」

「は、はい」

 

 稽古をつけるために、アーティファクトも持ってこいと隊長は言ったのか。


 さて、それでは行こう……という前に、タンザがあっと言って意見を出した。


「その……ユグドラシルさん?だっけ?」

「ユグで構いませんよ」

「あ、うん。いや、ユグのその格好って目立つんじゃないかと思って。隊長、余ってる服とかありませんか?」


「む、それもそうだな。少し待っていろ」


◆◆◆


 中庭は、庭園部分と演習場部分がある。

 外から見える以上に広いのは、空間魔法やそれを元に作られた技術等で広げられているかららしい。ある程度習いはしたけど、詳しい事まではあまり知らない。工学系はあんまり得意じゃない。


 演習場部分は格小隊ごとの専用のものと、最も大きい共用のものとある。今居るのは、専用の演習場だ。


「……と、言うことでだ。今からお前達がアーティファクトを扱えるように稽古をつける。いいか?」

「「はい!」」

「よし」


 私は剣のアーティファクトを、タンザは東洋の剣……確か、太刀といった剣のアーティファクトを持っている。

 演習場の端っこには、私達と同じ白い軍服──外套つきのものを着たユグドラシルが佇んでいる。手の形をしたマフラーはちゃんと巻いている。


 タンザの発案により、もしも見られてもいいようにユグドラシルにも同じ軍服を着てもらうことになった。この演習場は格小隊専用のものだけど、万が一というところだ。あのローブはかなり目立つ。


「とはいえ、真名の解放が今回だけで出来るとは思っていない。とにかく、実力テストのようなものだな。まず使ってみろ」


 一部のアーティファクトには、真名が存在する。その真名を知るためには、アーティファクトの機能を解放しなければならない。

 もし機能を解放出来れば、その所有者に真名が解放され、強力なチカラを制御する権限が与えられる……らしい。


 真名が分からなければ、アーティファクトそれぞれの本来のチカラを使えない。なら何故そういう仕組みになっているのかと言うのは、今のところ分かっていないそうだ。


 アーティファクト部隊の隊員各個人に与えられるアーティファクトは、全て真名が存在するものだ。


「あの、使ってみるってどう……」


 私がそう問おうとした瞬間、ザンッという音を立ててリド隊長は槍を地面に突き立てた。


「私との手合わせに決まっているだろう。構えろ、小手調べだ。同時に来い」


 私とタンザは困惑しつつ顔を見合わせて、頷く。

 それからお互いにアーティファクトを抜き、構えた。


「よろしくお願いします!」「お願いします」


「その意気だ。来い!」


◆◆◆


 結論から言えば、リド隊長はとても強かった。私もタンザも、地面に伏せさせられてしまった。


「ふむ……成程な。とりあえず立て」


 まず何が強かったと言われれば、反応速度と対応力がとんでもなかった。

 確かに私とタンザの連携もまだまだというのもあったが、前後同時の攻めでも完全に対応されてしまった。具体的には、前から攻めたタンザの太刀を槍で受け止めた上でバランスを崩させて、後ろから攻めた私の剣を蹴り上げて逸らし、尚且つ私自身を蹴り飛ばした。とてつもなかった。


 立ち上がった私たちに、リド隊長はアドバイス(?)をくれた。


「大きなところからだな。まず、ラピス・ラグドール。お前はその場での判断が少々遅い。最適解を毎度取れ……とは言わんが、迷うな」

「はっ、はい!」

「タンザ・ベルベットは逆に思いきりが良すぎる。もう少し思考しろ」

「分かりました」

「2名とも基礎は出来ている。判断速度は戦場で重要な要素だからな」


 確かに、リド隊長の槍撃を避けた直後にどう攻めるかで一瞬悩んでしまった。その際に回し蹴りをくらっている。


「よし。では、各個人との────」


 その時、時を告げる鐘が鳴った。夕方の合図だ。


「……個人指導はまた別の日に、だな。私は先に戻っている。お前達、一息ついてからユグドラシルを連れて戻って来い。道は分かるか?」

「分かります」

「よし。ならば、二十分後に部屋に集合だ。分かったな?」

「「はい!」」


 気の抜けた様子でリド隊長が腕をおろすと、持っていた槍が姿を消す。そのまま隊長は、扉の方から出ていった。



 私達はアーティファクトを鞘に戻すと、息をついた。


「はー!疲れた!」

「入った初日にいきなり任務、帰ってきたら隊長直々の鍛錬!嬉しいけど、ちょっとキツイな」

「うん。でも、隊長、怖いけどいい人みたいで良かったよ」

「だな。しかも美人だし!俺、どんなオッサンが隊長かと思ってたもん」

「あの試験の時にいたムキムキマッチョのオークの人だっけ?あの人、別小隊の人なのかな」


 あはははは、と2人とも笑った。扉の前以降話せていなかったけど、やっぱり、こうやって話せる同期ってのがいると楽しい。


 すると、ユグドラシルがゆっくりとこちらへやってきた。


「お疲れ様です、ラピス、タンザ様」

「様付け無くていいよ」

「分かりました、タンザ。お二人共お疲れ様です。回復させて頂きますね」


 ユグドラシルは微笑んでそう言った。

 確かに多少の怪我はあるけど、鍛錬で打撲したとかいうレベルだ。大きくてもちょっと擦り傷。手当が必要なものではない。


「回復?大丈夫だよ……って、え?」


 ユグドラシルの掌から、薄く淡く輝く粒子が放たれる。粒子は私とタンザを取り囲んだかと思えば、ふわりと消えた。

 すると、傷も痛みもなくなっていた。なんなら、体力も回復している。



「まっ、え?えーっと……ユグは何したんだ?コレ」

「はい、僕の異能(機能)のひとつです。僕は支援を目的に造られたので、回復から強化まで可能です。リド様にはお話済みですよ」

「お、おう……」


 タンザがなんとも言えない顔でこちらを見てきて、


「……すげー拾い物したんだな、ラピス」


 と言ってきた。私はそれに、


「……うん」


 としか返すことが出来なかった。

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