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5:報告

あけましておめでとうございます

 途中で起きかけた赤い軍服の男をもう一度気絶させる作業が挟まったりはしたものの、無事に帰ってきた。

 赤い軍服の男は別の部隊の人へ引き渡されていった。


 そして、戻ってきた拠点。リド隊長がカウンターテーブルに座って、書類に向き合って待っていた。


「たーいちょ!帰ったよー」

「早かったな。……とりあえず聞きたいことが山ほどあるが」


 リド隊長の視線が、ユグドラシルの方を向いたのが分かった。ユグドラシルは首を傾げた。


「まず聞こう。ローズ、コイツは誰だ?何がどうしてここにいる?」

「ラピスちゃんに聞いてもらっていい?当事者だもん」


「ほう。なら、聞かせてもらおうか、ラピス・ラグドール」

「はっ、はい!えっと、まず彼は────」


 リド隊長からの視線が痛い。しかし、きちんと報告はしなければならない。だから、所々噛みつつもなんとか話しきった。


 すると、リド隊長は悩むような素振りを見せた。


「レジェンディア、か……」

「隊長、何か知っているんですか……?」


 リド隊長は額を抑えて、大きなため息をついた。


「……まあ、な。中々に面倒な拾い物をしてきたな、お前は」


 少し待っていろ、と隊長は奥の方の扉を開けて部屋に入っていった。


 数分後、隊長は若干げっそりした様子で戻ってきた。それから、カウンターテーブルの横の椅子に腰掛け、また大きなため息を吐き出した。


「とりあえず、お前達。一旦物を置いてこい。報告に必要なものは持ってこい。あと、ラピス・ラグドールとタンザ・ベルベットはアーティファクトも持ってくること」


 20分後にここへ来い。シャワーは各部屋にあるぞ、とリド隊長に促されるまま、「はい!」と返事をして部屋へと向かった。


 ただ、私についてこようとしたユグドラシルをリド隊長が引き止めた。


「おい、貴様はここで話がある」

「僕ですか?……ラピス、良いでしょうか?」


 ユグドラシルに返事を求められて、えっ?!と一瞬なったものの、そっか、一応マスター認定されてるのかと思い出した。


「もっ、勿論いいよ。その人は、私の上司だからね?」

「分かりました」


 「話は終わったか」とユグドラシルに言うリド隊長の声を背に、私は部屋へと入った。


◆◆◆


 20分後。


「戻りました!」


 私とタンザはアーティファクトを持って、ほぼ同時にカウンターテーブルのある部屋へと戻ってきた。

 リド隊長とユグドラシルは、私達に気付いてこちらを向いた。


「戻ったか。さて、報告を聞かせてもらおうと思っていたが……」

「?」

「先にローズが報告しきったからな。報告と言うよりかは、状況確認に近くなるかもしれない。何から話したものか……」


 そう前置きして、リド隊長はひとつため息をついた。


「まずは、聞きたいことが幾つかある。まず、タンザ・ベルベット」


 リド隊長のライムグリーンの目が、タンザを捉える。タンザはビクッとしつつも姿勢を正した。


「捕まえてきた赤い軍服の男が『リーダーのように』振舞っていたというのは、本当か?」

「はい」

「アレが、本当に、リーダー格として行動していたのだな?」


 その事にタンザがもう一度肯定の意を伝えると、リド隊長は「そうか」と言ってから言葉を続けた。



「おそらくタンザ・ベルベットはローズから聞いているだろうが、その軍服はフェルトリアのものだ。流石に、フェルトリア国のことは知っているな?」


 『フェルトリア』は、白亜の国・グランティアと対立している国だ。"直黒の国"などと呼ばれているのは、グランティアとの対比だけではなく、その周囲を守るように聳える「霊峰」からの呼称だろう。


 グランティアとは反対に、科学が研究のメインに据えられており、『古代遺跡』の数はグランティアよりも少ないものの、ひとつひとつが大きなものが多い。


 昔からかどうかは知らないが、グランティアとフェルトリアは仲が悪い。まだ戦争に発展こそして無いが、それこそ戦争スレスレのようなものだ。


「はい、それは知っています。ですが、フェルトリア軍の軍服って青色じゃ……?」

「ああ。確かに青色だ。だが、一部精鋭部隊の軍服は赤色だ。フェルトリア内では有名だが、こちらに情報を流さないからな、奴らは……」


 奴らとは誰だろうか。多分フェルトリアのことなのかな?と思って、その時は勝手に納得した。


「少し話が逸れたな。それで、お前達が連れてきた男だが……奴はリーダー格ではない。精鋭部隊ではあるが、下っ端も下っ端だ」

「下っ端?!」


 タンザがとても驚いている。その声に少しだけびっくりしてしまったのは内緒だ。


「そうだ。尋問と真偽審判の結果、奴は下っ端も下っ端だ。おそらく、作戦に失敗したり見つかった場合に切り捨てられる駒という所だろう」


 グランティア内の……敵国内の『古代遺跡』を漁りに来たりするなら、確かに危険が高い。なら、緊急手段として捨て駒……といっては酷い話だが、そういうものは必要だろう。

 ん?いや……それなら、疑問がある。


 私は、そっと手を挙げた。


「どうした、ラピス・ラグドール」

「その、質問なのですが……」

「言ってみろ」


「どうして、フェルトリア軍は敵国であるグランティアの古代遺跡に居たのですか?わざわざ敵国に来なくても、フェルトリアには大きく質の高い古代遺跡がありますよね?しかも、来た古代遺跡も一応探索済みのものでしたし……」


 フェルトリアは『古代遺跡』がグランティアよりも少ないが大きいと言ったが、それに加えて質が高いものが多いのは有名な話だ。ひとつひとつの『古代遺跡』から見つかるアーティファクトの量が多く、強力なものも結構見つかっていると聞く。


 グランティアは『古代遺跡』が多いが、その分規模自体はそこまで大きくないものが多い。

 しかも、今回行った『古代遺跡』は一応探索済みだったものだ。あの地下のことも、初めて確認された感じだった様子だし。



「そうだな。確かにそうだ。だが、奴等の目的は確実にあの『古代遺跡』だったようでな。その理由に、そこのユグドラシル……アーティファクトである、Legendia(レジェンディア)シリーズがある」

「あ、アーティファクト?!ユグドラシルがですか?!」


 ユグドラシルは「はい?」と微笑みながら首を傾げた。確かに本人は「機械だ」とは言っていたけど、未だに完全に信じられてはいない。


「知らないのも無理もない。ほとんど情報は伏せられているようなものだからな」


 そう言ってから、リド隊長は『Legendia』について話し始めた。

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