二人の出会いと協力関係。二人が困難を乗り切・・・るのか?
エリザベスは王太子トルクスに追い出された後、トボトボと歩いていた。
このような事態にまで至った原因は自分にあると自責していた。
(私が殿下の手綱をしっかり持っていれば・・・)
(それに私は王太子の異変に気付いていながらそれを改善しようとしなかった・・・)
それに加え、最もショックを受けていたことは
(理解してもらえなかったわ・・・)
自分の行動が理解されていると思っていたのに、全く見られてすらいなかったということだ。いや、エリザベスは「殿下が私のことを恋い慕っておりますの!」みたいに、うぬぼれていたわけではない。
先にも言ったが、エリザベスは将来の王妃として、裏でも表でも一生懸命走り回ってきた。泣きそうになりながら、足に鞭を打って、脳に気合を入れて、あちこちを走り回ってきたのである。しかし、これまでの努力は無駄だったのか。
確かに、この国には「男は政治を、女は社交を」という固定観念はあまりなく、女性でも独立することはできた。しかし、エリザベスは王太子を支える道を選んだ。
(自業自得なのかもね・・・)
まるで黒い波が浜辺に次々と押し寄せるように、エリザベスの心に闇が押し寄せているという感覚だ。
一刻も早く公爵である父に報告しなければならないことはわかっていても、気が乗らない。
エリザベスはあまりに自責の念に没頭していたため、近づいてくる馬車の音など聞こえるはずもなかった。
「わ!!――――」
エリザベスと馬車がぶつかりそうになり、即座に避けようとする。しかし、その反動で大胆な尻もちを完成させてしまった。
「―――!!君!大丈夫かね!!」
乗っていた人と従者が急ぎ足でエリザベスのもとに駆ける。
「いたた・・・。いいえ、お気遣いなく、だいじょ・・・!!」
どうやらこの世界はエリザベスの言葉を最後まで発言させてくれないようだ。
今回エリザベスが言えなかった要因は、そこにはここにはいるはずのない人がいたからである。
エリザベスの銀髪とは対照的な、金色の髪、服の上からわかる鍛え上げられた筋肉。そしてトルクス王太子にも負けない知性を持つ第二王子マルクス・ヴェリスティアであった。
「マルクス殿下!お、お見苦しいところを見せてしまったことをお詫びいたしますわ!」
エリザベスはマルクスに迷惑をかけないようにと思い、さっそうと立ち上がってこの場を去ろうとした。しかし、体はそれほど早く動かない。
「―――――!!!」
エリザベスの体はふらっとしたため、マルクスが支えるという形になった。とっさのことにエリザベスの心臓は時差を作った後、心臓を暴れるように脈打ちだした。
「いや、いいんだ。それよりも君の顔色がすぐれないようだが、体調は大丈夫かね?」
「―――あ、い、いえ!大丈夫ですわ!それでは私はこれで失礼いたします。」
エリザベスは焦った。この問題範囲を第二王子マルクスまで広げたくはなかったからだ。
「いや、待ってくれ!さきほどもふらふらであったし、心配だ。送っていくよ。君の馬車には私が連絡を送っておく。乗っていってくれ」
マルクスはもう一人の従者を彼女の馬車へと行かせるという既成事実を作ってしまったため、断りようがなかった。
普段よりも早い馬の欠ける音、車輪の道を踏む音、振動が馬車に伝わって車体がきしむ音。そんな中、エリザベスはマルクスにこれまで起こったことを話していた。というか、マルクスが話させた。
「――――あのバカ・・・・」
マルクスは頭を抱えていた。どうやら王太子トルクスに失望しているらしい。そして、冷静にトルクスの行動を理解しようと思案しているようである。
「あいつは本当に政治をわかっているのか。私にはどうも向こう見ずな行動をしているようにしかみえん・・・」
「最近トルクスの様子がおかしくなっていると感じたのですが、それをだれにも相談せずに・・・。申し訳ありません・・・」
エリザベスは自責の念で、まるで飼い主に捨てられた犬のようにシュンとしてしまった。
「いや、誤らなくてよい。異変を感じても言いにくいだろ。これからは何かあったら私に相談してくれてもかまわない。協力しよう。いや、協力させてくれ!」
うん。マルクスにもエリザベスの性格をしっかり理解しだしたらしい。この後、遠慮することが予想できたのであろう。しっかり目を見て頼み込むマルクスであった。
―――この出会いと協力関係は、この後の国の混乱にとって大切なキーになることをまだ2人は知らないーーー
気軽~にやっていきます!