公爵令嬢が王太子に振られる・・・のか!??
「エリザベス、この時を持ってあなたとの婚約を破棄する!」
ここはヴェリスティア王立学園。その耳鳴りがするくらい静寂なホールで、王太子のトルクス・ヴェリスティアは高圧的な態度で言い放った。
誰に?
ホールにいる全員の視線を浴びる先、侯爵令嬢エリザベス・スティアートにである。
エリザベス含め、ホールにいる人はピクリとも動かず、まるで草木に隠れるトカゲのように動かない。
「?・・・・・・・・・!?」
エリザベスは何を言っているのか理解するのに数秒かかってしまった。それほどあり得ないことであった。彼女はこれまで王太子の婚約者として、将来の王妃として、裏でも表でも一生懸命走り回ってきた。泣きそうになりながら、足に鞭を打って、脳に気合を入れて、あちこちを走り回ってきたのである。最近では王太子や宰相の息子が学問理論に反した、馬鹿なことを言うようになったこともあって、より王太子をサポートすべく、これまで以上に働いてきた。しかし、今その努力が報われないということになりそうである。
「――い、いまなんと?」
エリザベスは驚きのあまり、聞き返してしまった。はやり信じられないようだ。
「聞こえなかったのであればもう一度言う。エリザベス・スティアート。この時を持って、私とあなたとの婚約を破棄する!」
うむ。エリザベスは1回目よりもすんなり聞き取れたようだ。
「――え、な、なぜです・・」
しかし、依然として戸惑いの気持ちは変わらない。
「あなたはアリス・メルケルに何度もひどい仕打ちをしていただろう!身分が低いから、気に食わないからといって、いじめ行為を働くのは、婚約者として、いや、人間としていかがなものか!」
(私はそんなことしてないのに!)
エリザベスは焦りだす。心臓は早く脈打ち、体は熱くなり、頭はくらくらする。そう感じたエリザベスは体へと意識を集中させ、落ち着きを取り戻す。
息を2秒吸い、8秒吐き出した。
周りは依然として、草木に隠れるトカゲであることが見えてきた。
(やばい、とりあえず誤解を解かなければ!)
「殿下、一体どのような行動でそのようにお思いになったのでしょうか?」
「階段の上から彼女を押して落としたり、彼女の持ち物を壊したり、盗んだりしただろ!他にもたくさんやっていただろ!」
王太子トルクスはまるで満杯のダムから水を放流するかの如く、言葉をものすごい勢いで排出していく。トルクスの顔も真っ赤で興奮していることが第三者から見ても分かる。
「いえ、事実無根です。私はそのようなことをした覚えはありません!それはどなたの目撃でしょうか。」
「アリスが言ってくれたよ!今まで誰にも言えずに我慢していたところを言ってもらったんだ!だから間違いない!」
「そんなの証言にもなりません!それにーー」
王太子トルクスはエリザベスの言葉を邪魔する。
「言い訳は聞きたくない!私とは婚約者ではないのだ!もう君の顔は見たくない!出ていけ!!」
一瞬、エリザベスの取り巻きが動いたが、どうやら王太子トルクスの覇気に止められた。
「殿下!とりあえず落ち着いてくだーー」
「で て い け !」
「・・・・」
王太子トルクスはあつかましいハエを見るかのような目でエリザベスをにらんでいる。
再び広いホールに静寂さが戻る。
エリザベスの耳にも耳鳴りが聞こえてきた。
(とにかく、まずは王太子と距離をおいて冷静になってもらわねば・・・)
エリザベスは冷却期間が必要だと思い、出ていくことにした。
周りがピクリとも動かない中、エリザベスは優雅な礼をして、さっそうとその場を去っていくのであった。
―――この後、この事件をきっかけに王国は大混乱の時代に突入することを、ホールにいる誰もが予想できなかった。―――
連載ですけど続きを書く可能性は低いかも・・・
元々小説創作の一歩を踏むために書いたので。
それでも続きを読みたいという人は高評価をつけていただければうれしいです。続きを書く可能性も高くなります。