ドブルネ伯爵と面会(後)
「考え方が変わったのだ。魔眼使いなどこの世から絶滅させるべき存在なのだよ」
極端すぎるだろう。
俺は冷静になって経緯を聞く。
「何故考え方が急に変わったのです?」
何かしら理由がなければ考えが極端に変わることもないはず。
俺はその理由が知りたかったのだ。
だが……。
「答える筋合いはない。用事は済んだだろう。とっとと帰れ」
「やれやれ……」
話にもならない。
それに、先ほどから伯爵の様子を伺っていたが、何か様子が変だ。
まるで、興奮剤を大量に飲んだあとのように、精神と身体が噛み合っていないような気がする。
その予感は大方外れてはいなかった。
伯爵はいきなりフィリムとカナリアに向かって嫌らしい視線を向けながら徐々に距離を縮めていた。
「なんなのよ⁉︎」
「どうしても話せというのなら、それなりの態度を示すべきだろう」
「やめてくださいドブルネ伯爵! 以前の貴方様はそんなようなことをするお方じゃなかったではありませんか!」
「ふん……。もう私には地位や名誉などもいらぬ。魔眼を排除すれば大量の金が手に入るのだからな。民衆も貴族も皆、金の前には逆らえぬのだよ」
伯爵の発言までおかしなことになっている。
何か中毒にでもなっているのかはわからないが、既に正常ではない。
そのことに二人も気がついたのか、伯爵から距離を開けた。
「帰らずに私と話をしたいというのなら、私の欲望にも従えと言っているだけだ……。困った連中にはお仕置きが必要だ」
「待て! 俺たちは王宮に仕えている身分だ。国家反逆にも該当するぞ⁉︎」
「知ったことか。どうせお前たちも捕らえるのだからな、魔眼を隠したところで私を欺けると思ったのか⁉︎」
「知っていたのか……」
伯爵の態度が荒れている原因の一つに、俺たちの正体がバレていることもあったようだ。
ならば仕方がない。
強行突破をするしかないだろう。
「この侵入者どもを捕らえよ‼︎」
伯爵はフィリムとカナリアの身体を狙っている可能性が高い。
計画にはなかったが、俺は彼女らを危険な目にあわせたくがないために二人に魔眼を発動した。
『転移!』
「ちょっと……え⁉︎」
「レイス様⁉︎」
二人の地面に強制的に転移魔眼を発動した。
空間に落ち、二人は別の場所へと強制移動させたのだった。
「貴様、何をした⁉︎」
「二人には荷が重そうだったんでね。あらかじめ避難させただけですよ」
「よくも私の餌になりそうな女を……」
「その発言がそもそもおかしいんで!」
「だまれガキには大人の気持ちなどわかってたまるか! こいつを捕らえよ」
俺は周りにいた警備兵たちにロープで締められて身動きが取れないような状況になった。
もちろんわざと捕まってやったのだが。
伯爵はこのことに気がついていないようで、俺に対してざまぁみろと言わんばかりの気持ち悪い笑みを浮かべていた。
「このガキも魔眼持ちだ。魔眼の効力が無効化される地下牢へ閉じ込めておけ!」
「承知いたしました」
「魔眼を無効だと?」
「当たり前だ。お前ら魔眼持ちの人間を安全に捕らえておくにはそういう魔道具がある空間でないとすぐに逃げられてしまうからな。転移ができる流石の貴様もこれまでだ」
ロープにも魔眼を無効化させる魔道具が発動していることに気がつく。
正攻法で戦ったらここで詰んでいただろう。
先にフィリムたちを逃しておいて大正解だったようだ。
「観念するんだな」
「ち……」
俺はわかりやすいように伯爵に向けて舌打ちをして、悔しがる表情をした。
これを見た伯爵は、更に馬鹿笑いをして嘲笑ってきたのだ。
俺は警備兵に連れられて地下の牢屋に放り込まれてしまった。
概ね計画どおりだ。




