カナリアの住んでいた街
カナリアの住んでいた街は、王都から一番近隣にある場所で、馬車で向かえば三日もあれば到着できるところだという。
「馬車で向かわれないのですか……?」
カナリアが不思議そうな表情を浮かべていた。
「これも訓練になるんで」
「まさか、走っていくというのですか⁉︎ 騎士だけでなく魔眼部隊も相当厳しい訓練をされているのですね……」
「いや……、言い方を間違えました。魔眼の訓練です」
「ふっふーん、レイスの魔眼は他の人とは比べ物にならないほど優れているのよ~。アンタもしっかりと見ておきなさいよね」
何故フィリムが自慢げになっているのかはよくわからない。
フィリムの石化魔眼も戦闘において規格外だとは思うが。
カナリアの街へは行ったことがないから転移の魔眼は使えない。
だから、俺が初めて王都へ来たときに使ったやり方で向かうことにする。
目視で見える範囲のギリギリの部分を意識して集中した。
『カット』
目視できる範囲で距離短縮させて一気に転移した。
それを何度も繰り返して目的地へ向かう。
『カット』
『カット』
『カット』
『カット』
『カット』
『カット』
『カット』
「よし、到着だ」
「はぁ……。なんでもありよね」
「すごいです! しかも、こんなに何度も魔眼を発動してしまうなんて。私の彼もそこそこ魔眼は使えたんですけれど、連続使用は疲れるって言ってましたよ」
魔眼の力には個人差がある。
俺の場合は両親から幽閉生活を余儀なくされていたから、毎日魔眼の訓練をするくらいしかやることがなかった。
魔眼で家から逃げ出さずに従っていてよかったと思っている。
カナリアの故郷は王都の隣町というだけあって、それなりに栄えている。
商店も賑わっているし、人混みも多い。
「どろぼうーーー‼︎」
突然商店のおばさんの叫び声と焦っている姿を目撃してしまう。
指差す方を確認すると、いかにも悪人ヅラの男が走っている。
手に店の商品と思われる高そうな金属を持って逃げていた。
「まかせて!」
「ぐ……な……」
フィリムがすかさず石化魔眼を発動して、男の足を動かせなくした。
初めてフィリムと会ったときは、フィリム自身が犯人を走って追いかけていたっけ。
今のフィリムはあのときより確実に強くなっている。
警備兵が不思議そうな表情をしながら犯人を捕らえた後、フィリムは石化魔眼を解除した。
「良いんですか?」
「別に手柄なんてどうでもいいわよ。それよりも、早く伯爵家に乗り込みましょう!」
「そうだな」
だが、この街では治安が悪すぎるのか、同じような事件にこのあと二度も遭遇した。
その度に魔眼で対処して犯人は残念な結果になったのだが、事件起こりすぎだろう。
「警備兵増員したほうが良さそうだな……」
「いえ、以前はもっと平和な街だったんです。魔眼の力がなくなってしまい、収拾がつかなくなって荒れくれものが増えたんですよ……」
「伯爵が原因か……」
「なんで領地を守る立場の人間が、領地を崩壊させようとしているのか意味わからないわね」
「着きましたよ、あの屋敷が伯爵家です!」
「でか‼︎」
王都の公爵家規模かよ。
フィリムの屋敷と同じくらいの広さ、それ以上かもしれない。
門の前には警備兵がやたらと多く配置されていて、簡単には進入できないようになっていた。
できれば穏便に済ませたいものだな。




