ドブルネ伯爵
「レイス様! おかげで今までとは比べ物にならないほどの性能にすぐれた武器防具を作成することができました! 鍛冶師としてこれほどの道具を作れたことが誇りです!」
「そんな大袈裟な……。作ったのはあなたでしょう? 俺はただ素材を提供しただけですよ」
「その素材がとんでもないからこれだけの道具が完成したのですよ。あなたの支援がなければ絶対に作れませんでしたよ。性能も特化していますし、騎士団の強みとなるでしょう!」
「そうですか。もしもフィリムに会ったら彼女にも伝えてあげてください。俺一人では倒せなかった相手だと思いますし」
「承知しました。必ず!」
王都一番の鍛冶師にこんなことを言われるとは思わなかった。
ドラゴンの素材はこれだけ需要があるのなら、もしまた遭遇することがあればなんとか討伐できるようにしたい。
どうやったら一人でも倒せるようになるか考えておくか。
♢
「レイス様‼︎ いただいた剣がとんでもない切れ味なんです!」
「これを使えばどんなモンスターもズバズバ切れそうですよ!」
「ですが、剣だけに頼らず、己自身の力も鍛えて磨いていくるもりです!」
「私たちに素晴らしい贈り物をありがとうございます‼︎」
騎士の演習場に見学に行くと、騎士たちがお礼を言ってくれた。
「気に入ってくれたようでよかったです」
騎士たちは深くお辞儀をしてから、一人を除いて訓練に戻っていった。
「あの……ところで、レイス様は魔眼の使い手だと聞きましたが……」
「そうですけど」
騎士団の中で、唯一の女性騎士が寂しそうに聞いてきた。
今までは見下したり嫌な目で見られることが多かった。
だが、今回のような反応は初めてだ。
クレア率いる騎士団だし、悪い固定概念はないと思うのだが……。
「実は、私の恋人が魔眼持ちです」
なるほど。
俺の魔眼を見て恋人が恋しくなってしまったのかもしれない。
だが、騎士団は王宮に仕える身だ。
確か彼女の名前はカナリアだったか。
カナリアだって承知の上で騎士団に入ったと思う。
「そうなんですね。会えなくなるのが辛いのですか?」
「いえ、もう彼とは会いたくても会えないんです……。それももう一ヶ月続いてしまって、騎士団へ入ることも告げれずに街を出たことだけは残念でした」
「会えないとは?」
「私の住んでいる街の領主……ドブルネ伯爵が……。あぁ……、でもすでに国に仕える身だからこんなこと言っちゃダメですよね。ごめんなさい」
カナリアは寂しそうな表情をしていた。
「今は誰もいないし気にしないで良いですよ。ドブルネ伯爵という方が何かあったんです?」
「実は……、先月のヨハネス陛下に就任した直後なんですが、伯爵の考え方が急変してしてしまって……」
「どういうことです?」
「私の地元は魔眼持ちの人間が多く、他の街と比べても偏見を持つものは少なかったかと思います。ドブルネ伯爵も平等主義者でした。それが、急に魔眼持ちを無意味に投獄させてしまったんです」
「じゃあ、カナリアさんの恋人も……?」
「牢獄中です。何度も直談版しましたが、追い返されてしまって……。私が騎士団に入ったのは、魔眼への偏見を減らしたいという思いもありますが、国と繋がりをもってなんとか恋人を助けられないかと思ったのもあります」
魔眼持ちが囚われの身というのもいまいち理解に悩んでしまった。
魔眼の力で脱出したりできないのだろうか。
それとも、伯爵が捉えた牢獄では何か特殊な力が……。
「行きましょうか」
「どこへですか?」
「恋人を助けにですよ」
「え⁉︎ でも……」
「ヨハネスにはまだ話していないのでしょう? もし同じように話したら、きっと同じことを言ってるはずですよ」
カナリアは涙をポタポタと溢しながら声を振り絞っていた。
「どうか……どうか力を貸してほしいです!」
「クレアとヨハネス、それからフィリムにはこのことを伝えていいですか?」
「いえ、自分の言葉で伝えたいです」
カナリアはこのあと、ヨハネスたちに現状を説明した。
聞いていた三人か怒りの表情になっていくのがはっきりとわかった。
「伯爵ともあろう人間がそんなことをするなんてありえないじゃないの!」
「私にはいまだに驚いている。ドブルネ伯爵は魔眼の偏見などなかったはず。一体何が……」
「すまない……。街の状況も知らずに私は騎士への勧誘を……。気がつくべきだったのだ」
「そんなことはありません! 剣聖と名を轟かせているクレア様に声をかけられ、これはチャンスだと思ったからです。現にこうやって救出の手助けを一緒に考えてくださっているではありませんか」
「というわけだ。ここは俺とフィリム、カナリアの三人で乗り込もうかと考えているんだが……」
ヨハネスは申し訳なさそうな表情をしていた。
別にそんな顔しなくたって事情くらいはわかるから気にしなくてもいいのだが。
「すまない。立場上、私は直接介入ができない。そのかわり、伯爵へ向けて内部調査と立入許可証の書類は用意する。これで伯爵の住む屋敷へお前たちは合法的に自由に出入りができるようにはなる」
「それだけで十分だ。あとは俺たちが伯爵に事情を聞いて、状況によっては強硬手段で救出させる。その後は、……いいんだな?」
「それは問題ない。最終的には私の心眼鑑定で善か悪かははっきりするからな」
「つまり、私とレイスの魔眼召集の国務という程で乗り込むってことね」
「私としては部下の面倒見をしたかったが、さすがにまずいってことか……」
「あぁ、クレアが乗り込むとギルド問題にもなってしまう可能性があるからな。だから任務として俺とフィリム、案内役でカナリアを借りて乗り込みたい」
全員の意見も一致し、ちょっとだけ準備をしに俺は一人になった。
カナリアの言っていたことが引っかかっていたのだ。
「念のため……これは持っていくか」
王宮の地下一階にある武器や防具、更には国宝が保管されている部屋の持ち出しはヨハネスから許可をもらっている。
俺はここに眠っている魔道具を一つ、マジックボックスではなくポケットに忍ばせておいた。
更に、俺は個人的に用事があったため、ある人のもとへ向かった。




