油断と無双
「よくもまぁここまでボクをコケにしてくれたんだネ。お陰でボクが国王になるチャンスはなくなっちゃったんだネ……」
「ガブネス王子の仕業か……ヨハネス様を捕らえて何をするおつもりですか!?」
「もう吹っ切れたんだね! ボクが直々に君達全員を殺すことにしたんだネ」
発狂はしていないが、ルーラのように思考がメチャクチャになっているように見えるガブネス王子にフィリムが呆れながら怒鳴った。
「アンタバカじゃないの? こっちにはレイスや剣聖クレアもいるのよ。勝てるわけないじゃないの」
「ボクの配下の兵士達は毎日戦闘用訓練を積んだ猛者しかいないんだネ。しかも全員に身体強化の魔道具も使っているんだネ。余裕で勝てるし、ヨハネスが人質にすれば君達が現れるって言うもんだから待っちゃったんだネ。ヨハネスには配下が死ぬ姿を見せてから殺すんだネ」
ガブネス王子の発言が着火材料になったのか、周りにいる兵士が次々と俺たちに暴言や卑劣な言葉を言ってくる。
「レイス! 貴様は王宮に出入りしていた時から気に食わなかった。遠慮なく殺す!」
「気色悪い魔眼にようやく制裁が下されるのだはっはっは!!」
「令嬢と剣聖はウザいが顔は可愛いからな。殺す前に俺たちがたっぷりと可愛がってから殺してやる」
俺は兵士達とは思えない発言を黙って聞いたままマジックボックスから短剣を取り出した。
しかし、クレアに止められる。
「レイス殿、フィリム姫。戦闘なら私に任せるのだ。たとえ身体強化していようと私には関係ない。レイス殿とフィリム姫はヨハネス殿の救出を」
俺達はコクリと頷き、兵士の方からヨハネスに視線を動かす。
「このような非道な行為、全くもって許し難い! 剣聖クレアの名において制裁を下す!」
「ボクの配下を舐めるんじゃないんだネ!! 全員でかかるんだネ!!」
ガブネス王子の指揮によって、一斉に攻めてきたが、なんということだろうか。
まさかヨハネスの周りにいた兵士達もこちらへ向かってくるではないか。ガブネス王子一人だけでヨハネスを人質にするなんて。
俺たちが立っている所からヨハネスのところまで兵士がたくさんいるからって、油断しすぎなのでは。
ヨハネスの周りの兵士がガラ空きになった隙に、フィリムと共にヨハネスの側まで瞬間移動をした。
「し……しまったんだネ!! 貴様、魔眼でそんなことまで……ただ物の出し入れしかできない無能な魔眼のはずネ!」
フィリムがヨハネスのロープを解いている隙にガブネス王子と対峙した。
「俺たちのこと盗聴したりして全てお見通しと聞いていましたが、肝心なこと調べられなかったようですね」
「ぬぬぬ……うるさいんだネ!! おい! 剣聖相手にせずまずはこっちを……ネ!?」
剣聖クレアの凄まじい二刀流の短剣裁きと身体能力で、身体強化して強くなっているはずの五十人以上いる兵士達を次から次へとバッサバッサと斬っている。
「ガブネス王子よ、安心するがよい。人間相手には刃を削り落としている物を使っているからな。骨の数本折れる程度で済む」
余裕の表情であっという間に全滅させた。
残るは目の前にいるこの王子。
ガブネス王子は剣を持ちながらガタガタと震えていた。
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