豊穣祭と誘拐
豊饒祭が始まった。
国中の人間が集まり、至る所でパレードや屋台も出店していて王都が大賑わいになっている。
ヨハネスが壇上に立ちスピーチすることは決まっているのだが、それでも民衆からは、戦争の功績を残したフリザス第三王子が国王になって欲しいという声も。
更に、ダイン第一王子のドワーフとの交渉成立によって、貴重な工芸品を見て感動した民衆からは、ダイン王子を推している。
今回の戦争でヨハネスの配下の魔眼使いが早期解決をもたらしたという噂も広がり、ごく一部の民衆から魔眼の偏見に疑問視する声も浮上してきていたりもした。
敵なのか味方なのか未だに分からないフリザス王子のおかげなのかもしれない。
単純にお祭りを楽しむ民衆もいれば、次期国王に対する様々な意見が飛び交ったりもする豊穣祭。
民衆が大盛り上がりの中、肝心な時に事件は起こった。
ヨハネスの配下の騎士が走って俺に尋ねてきた。
「レイス殿。ヨハネス王子はどちらに?」
俺たちは今日、ヨハネスとは会っていない。だが、前日の最終打ち合わせの時に、いつ頃何処にいるのかは確認しているのでわかる。
「ヨハネス様は壇上の近くの特設控室にいるはずですが来ていませんか?」
「はい、ヨハネス王子がその場所にも姿を現しておりません……」
ヨハネスが予定の時間に指定の場所にいないなんてことは今まで一度もないし、予定を変更したりする時は必ず伝えてくれていた。
ヨハネスに何かあったのかもしれない。
俺はフィリムとクレアがいるところまで急いで移動して、ヨハネスが控室に来ていないことを伝えた。
「用意周到のアイツが寝坊するなんて絶対あり得ないわね」
「ヨハネス殿、何者かに捕まったとか、拐われたじゃあるまいな?」
「アイツがそんなことになるわけないわよ」
三人で相談しているところに、血相を変えてさっきとは違う兵士達が走ってきた。
「此処にいましたか……大変です! ヨハネス様が……覆面を被った者達に縛られて連れ去られていく姿を見たという目撃情報が……」
「「「な!?」」」
──あのヨハネスが拘束され連れ去られた!?
俺たちは信じ難い報告を受ける。
あれ程の警戒心が強く、今までどんなことも対処していたヨハネスが……。
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