ランクと蟹
休暇。とは言っても、近衛兵としての年俸だけでは今後の生活は厳しい。
俺は副業として、生まれ変わったギルドに冒険者として登録することにした。フィリムとクレアに話したら、何故かフィリムまで登録すると言い始めたので、三人でギルドに登録しに行った。
「ギルド登録をお願いします」
「承知しました。クレア様は既にご登録されていますので、二名様でよろしいでしょうか?」
ギルドの入口はすんなり入れたし、ギルドの受付のお姉さんもとても丁寧でしかも美人さんだ。
「簡単にギルドの説明をさせていただきます」
生まれ変わったギルドガブリエルのシステムも随分と変わっていた。
今までは王宮や貴族からの依頼を紹介してギルドが仲介料を取る仕組みだったが、一般市民も依頼ができるようになった。
ギルドランクというのがあり、SS、S、A〜Eとクラス分けされ、SSが最高ランク、Eが駆け出し冒険者となる。
依頼は自分のランクより高い内容は受けられないが、四人までのチームで依頼を受ける場合はそのチームの一番高いランクの依頼まで受けられる。
五人以上だとまた基準が違うらしい。
依頼を完了すれば依頼者が提示した金額の8割をもらえる。2割はギルドへの手数料となる。
注意しないといけないのが、依頼に失敗した場合、場合によってはギルド登録が抹消され二度とギルド登録が出来なくなることもある。
かなり厳しいが、信頼関係で成り立つ仕事だから当然と言えば当然かもしれない。
他にも色々と説明された。
「では、このカードにご自身の魔力、腕力、魔眼、いずれかの力を全力で流してください」
「全力ですか!?」
「はい。特殊なカードになっておりますので破損することはありません。この力によってギルドの最初のクラス分けがされます。遠慮なく全力でお願いします」
俺とフィリムは、魔眼で全力でカードに力を注ぐ。
真っ黒だったカードが、金色に変化した。
フィリムのカードは銀色に変化した。
これを見て、受付のお姉さんだけでなく、クレアまで驚いていた。
「フィリム姫も凄いが、レイス殿!! あり得ない……いきなり金色とは、一体どれだけ凄まじい魔眼の力を秘めているのだ!?」
「レイス様は……ラ、ランクSからのスタートになります……ね。フィリム様はAランクからのスタートになります……」
「うぅ……レイスに負けたわ!」
フィリムはとても悔しがっていた。
俺はいまいち良く分からなかった。
「フィリム姫……Aランクからの冒険者スタートなど滅多にいないから悔しがらず誇りに思っていいと思う……私も最初はBランクからのスタートだった。レイス殿がおかしいだけなのだから」
「実感がないんだけど……まぁこれで殆どの依頼を最初からできるって事で」
あっけらかんとするお姉さんも、咳払いをして再び俺たちに続きを説明してくれた。
「登録は完了です。再発行が基本は出来ませんのでギルドカードは無くさぬようお願い致します」
「わかりました。ありがとうございます」
俺達は受付のお姉さんにお礼を言って、奥にある任務依頼の掲示板に向かった。
掲示板に様々な依頼が紙で貼ってあり、受けたい依頼の用紙を剥がして受付に申請する仕組みと教えてもらった。
「私が前回見た時よりも随分と依頼内容が増えたようだ……誰でも依頼が出来るようになったお陰なのかもしれんな」
ギルドガブリエルがヨハネスの管理になって僅かの間にここまで大きく変わるのはそれだけヨハネスが頑張って動いたからなのだろう。
酒場の皿洗い ランクE以上
赤子の子守 ランクE以上
ドワーフ族謹製の工芸品1個入手 ランクB以上
新鮮なキングタラバンガニの脚肉16本 ランクB以上
色々な依頼が貼ってあるが、ランクA以上の依頼は貼っていないのか。
まぁ肩慣らしに簡単な依頼で良いんだけど。
「ねぇ、私たちのランクなら、この【新鮮なキングタラバンガニの脚肉16本】って良いんじゃない?」
「脚肉だけなら本体の部分は私達でいただけるし反対の理由もない」
「ランクBか……」
「レイス殿、キングタラバンガニ自体はランクDの冒険者が五人もいればなんとか倒せる。問題なのは、生息している場所だ。ここディラスト王国からとても距離があるということと、新鮮なうちに届けなければいけない理由で難易度が上がっているだけだ」
クレアは俺の顔を見てニタニタ笑っている。
フィリムも何かわかったかのように俺を見て笑い始めた。
「レイスの魔眼なら!」
「なるほどね!」
理解した。
ここから馬を使った程度では到着できないくらい遠く離れた海岸にしか生息しないキングタラバンガニ。
俺の空間干渉を使えばそんなに時間はかからなくても到着できるはずだ。
しかも、マジックボックスに入れておけば真空状態を保てるから腐りにくい。
「よし! これにしよう!」
俺達の初めての討伐が始まる。




