表彰式と勲章
「それではこれより此度の一件でのレイス殿の活躍にあたり表彰を開始する」
オルダニネス国王陛下の横に控えた宰相の宣言と同時に、大臣貴族全員が跪く。
表彰式。
俺は今、玉座の間でオルダニネス国王陛下が座っている玉席の前で跪いている。
「レイス殿! 我が息子ヨハネス第四王子、及びフィリム公爵令嬢を暗殺者から守り、更に犯人を突き止め捕らえた此度の活躍、大変大儀であった」
「は……ははっ! もったいないお言葉……」
俺は噛むほど緊張していた。このような状況を経験した事がない。目の前にいるのは現国王陛下。
ヨハネスとの初対面の時も緊張したが、国王陛下は年も離れている分、尚更緊張する。
だが、緊張したのは一瞬だった。
「何故オルダニネス国王陛下はあのような魔眼の者を称賛するのだ……」
「恐ろしき魔眼で国王陛下が操られているのでは?」
「たかが平民の分際で……」
俺のところまでも聞こえるような声で貴族の方々が不満を露にしていた。
なんだ……いつも通りじゃないか。
おかげで俺の緊張はほぐれた。
国王陛下は周りの会話など全く聞く耳持たずに段々と進めていく。
「さて、レイス殿! 此度の活躍を称し、これを授けよう思う」
国王陛下の部下が何かを持ってきた。
金色の丸いバッジのような物だ。
「金竜勲章である。受け取りたまえ」
国王陛下の言葉に、受勲式なのにもかかわらず、どよめきが起こり始めた。
「金竜勲章だと!? 何故あの民があれ程までの認定を!?」
「ありえん! 国王陛下。本気か?」
「魔眼持ちの人間がそのような権利を得て良いなど……」
玉座の間は、以前の裁きの時と同じように騒がしくなった。
「何言ってるのよ……王子の命を救ったくらいなんだから、王族に対して功績を残した証の金竜勲章を授かって当然よ! ……ちょっと、ヨハネス。アンタこの騒ぎ黙ってていいの!?」
「問題ない。こうなると父上も予想していたはず。放っておけばいい」
「でも……」
心配していたフィリムだが、ヨハネスは当然のことのように動じなかった。
その時……。
「フッ……貴様らにあれだけお膳立てしたというのに……間抜けな奴等だな」
「兄上!?」
「ダイン……アンタまた邪魔をしようと」
「フッ……そうではない。私はこのうるさい連中に文句があるだけだ」
ダイン王子は大きく深呼吸をして、大きな声で怒鳴る。
「貴様らそれでも貴族か大臣か!? 命令にしか従わぬ愚か者どもよ! 文句があるのならここに参列しなければいいだろう! 少しは己で考え己で行動するんだな。だからたかが民に遅れをとるのだ!」
ダイン王子は言いたい事を言って、スッキリした表情でこの場から姿を消した。
ダイン王子の怒声によって、無音と言えるほどの静かな表彰式に戻った。
静かな玉座の間になったが、俺への睨みの視線や殺気が一層強くなった気がする。
「さぁ、改めて受け取るが良い。その勲章に己の魔力を注ぎ込むがよい」
「は……はい」
俺は魔眼を解放して、この勲章に魔眼の眼力を注いだ。
すると勲章は光り輝き、すぐに光が消えた。
「これでこの勲章は其方専用の物になった。無くさぬようにして欲しいが、盗用されても悪用される事もない。大事に使ってくれたまえ」
「ありがとうございます、国王陛下!」
俺は再び跪く。
「これにて表彰式を終了とする」
静まり返った玉座の間で、全員が一斉に跪く。
悔しそうに表情を歪める貴族たちの顔を覚えておいた。今後、敵対する可能性の高い相手だろうから……。
♢
今まではフィリムが一緒でないと王宮の出入りは出来なかった。だが、勲章を授かったことで、ヨハネスの近衛兵として、俺一人でも王宮への出入りが許されるようになった。
勲章は普段はマジックボックスに入れておいて、王都や王宮内では首からぶら下げて歩く事にした。
今は受勲式終わり、王宮の外でフィリムと二人で喋っている。
「似合うじゃない」
フィリムが真っ先に褒めてくれた。
「ありがとう。一時はどうなるかと思ったけど。そんなに凄いの?」
「そりゃそうよ。金竜勲章なんて、私も初めて見たわよ」
他にも勲章があるんだろう。
「それを授かったんだから、レイスは王宮の出入り許可も与えられるし、王都内での貴族しか入れない店にも入れるようになるのよ。ギルドに個人としての依頼も出来るようになるわ」
俺が王宮の出入りが自由になるということか。魔眼を嫌う貴族から見れば、俺が何度も王宮に出入りされたら気に食わないかもしれないもんな。
「それであれだけ騒ぎになったってことか。ダイン王子が助けてくれたけど……」
「そうよね! なんでダインのやつ、あんな事を……敵なのか味方なのか分からないわよね」
「いや、あの後、大臣や貴族達の俺への睨みが酷くなったね」
「アイツ! また裏があったわけね! 私、ダインは苦手だわ……」
ため息吐きながら空を見上げたフィリム。
「あんな奴の挑発や嫌がらせに負けないくらいにならないとダメね。ま、ここまで来れたレイスなら楽勝だろうけど。これから頑張ってよね!」
「油断はしないけど。ここまでこれたのもフィリムのおかげだ。これからも宜しく!」
「な……なによ急に……」
フィリムが急に赤らめて恥ずかしそうな顔をしている。
フィリムにあの時、出逢っていなかったらヨハネスと出逢えなかったかもしれない。
全てはフィリムとの出逢いから始まった気がする。そしてこれからもきっと。




