再会と犯行
「お嬢様、レイス様。盗聴器からの会話の情報によりますと、次の太陽が昇った後、昼間の食事中にヨハネス様の暗殺を行うそうです」
「丁度私とレイスでヨハネスのところに会いに行くタイミングじゃないの。レイス、何で何度も予感が的中するのよ!?」
そう。俺がこうなるんじゃないかと話していた通りになってしまった。
「もし俺達が狙われてるのなら、ヨハネスと三人でいる時だろうかと思っただけだよ。一箇所でまとめて暗殺した方が早いっていう発想しかしないだろうし」
「ヨハネスは危機対処でレイスは予知対処……最強コンビね」
フィリムの誘導力と行動力も凄まじいものがあると思うけど今は言わなかった。
「それから、会話ではザガル伯爵がバルス伯爵に命じていました。勿論記録もしてあります」
「上手く出揃ったってわけね。レイス、しっかり捕まえてアイツを結果で納得させるわよ!」
「これだけ情報も入っているし、失敗しちゃったらヨハネスに顔向けできないけどね」
父と義母の会話で、俺がどれ程魔眼によって忌み嫌われていたかという盗聴も聞けた。好都合。容赦なく捕まえられる。
捕まえるだけとはいえ、久々にリングベルド家と再会するのかと思うと、ため息が出てしまうが、しっかりとケリもつけないといけないなと思った。
♢
暗殺者が来る当日、俺とフィリムの二人で王宮のヨハネスの応接室前まで来た。
「よく来たな。フィリム、レイス」
「ヨハネス様。今日はどんな話をしましょう」
一瞬ヨハネスの眉間が動いたように見えた。
「そうだな、では中で」
成功だ。
王宮内で盗聴されている可能性が高いし、いくらヨハネスでもいつ暗殺してくるかまでは分からない。
事前に暗殺の決行日当日だとわかっていたら、俺達が会う時には僅かな会話の違和感で状況を把握して、何食わぬ顔で暗殺者を受け入れようと計画していたのであった。
♢
いつもの応接室に移動した。換気扇側への注意は絶えずしていたが……。
「レイス、上だ」
来たか。
ヨハネスが指を挿した場所、換気扇からわずかに離れた天井裏辺りか。
「よし」
俺は【空間干渉】の魔眼を開放し、天井の壁部分を全て一時的に消した。
すると……。
──ベチャ
「がぁ!!!」
急に穴が開けばそこにいた者は落ちる。
「久しぶりですね……リングベルド伯爵」
もはや父とは呼べない。
痛みと突然起きたこの状況が理解できていなそうな顔をしているバルスは、やがて、よろよろと立ち上がり、持っていたナイフのような鋭い刃物で刺そうとしてきた。
足元にマジックボックスからガラクタをばら撒いておく。バルスは突然現れたガラクタに気が付かず転倒した。
「ぐぶううう!!!!」
ヨハネスは更に隠れている者を発見し、俺に指示した。
「次はそっちの壁だ」
今度は通路と反対側の壁。再び魔眼を開放。【空間干渉】で、僅かな時間だけ壁を消し去った。その先にいたのは、狂乱状態で我を忘れているようなルーラの姿だった。
「なんで……あーもうっ! だからこんなの嫌だったのよ!!! しっかりした暗殺者を雇えばって! 何で私がこんなところに! 狭くて汚くて……あああああああ」
訳もわからないような足取りで、俺ではなくフィリムの方にアイスピックを持って襲いかかった。
俺が魔眼で助けようとしたその時、
「問題ないわよ」
とフィリムが言う。次の瞬間、フィリムは軽々と避け、そのままルーラをガシッと絞めて捕まえた。
「空き巣捕まえた時の方がてこずったわね」
ルーラに侮辱とも言える言葉を放った。
ルーラはそのままうるさく騒いでいるので、ヨハネスが持っていた鎮静剤をルーラに打ち、徐々に部屋が静かになっていく。
俺は二人の持っている武器を奪い、マジックボックスに収納した。
空き巣を捕まえた時のように、フィリムはロープを使って二人をグルグル縛っていく。
ルーラは既に白目状態で気絶しているようだ。
縛られて動けないバルスは、信じられない事を口にした。
「お前を追い出したのは間違いだった! すまなかったレイス……」
「は?」
思わず口にしてしまった。何を今更言い出すかと思えば……。
「頼むからロープを解いてくれ。一緒にリングベルド家に帰ろう。な、レイス」
聞いているヨハネスもフィリムも嫌悪感も露な顔でリングベルド伯爵を睨んでいた。
俺は怒る気にもなれなかった。
「俺達を殺そうとしておいて……何を今更……」
「頼む……戻ってきて欲しい」
どんなに戻ってこいと今更言われても、もうすぐヨハネスやフィリムと国を変えるために動き始めるから……答えは一つしかない。
「もう遅い!」
グッタリと黙り込むバルスに俺はもうかける言葉すら思いつかなかった。
……しかし、俺はこの時、違和感を感じた。
「ヨハネス、もう一人隠れていないか?」
「いや、レイスの魔眼開放中もフィリムの大暴れ中も常に厳重にチェックしていたが、この二人だけだ。それは間違いない」
「大暴れってアンタね……捕まえただけよ!」
やはりアイツがいない!
「ミルトは一緒じゃないのか?」
俺は仕方なくバルスに問う。
「もう今更だ……教えてやろう……アイツは……ここに来る途中に逃げ出したのだ」
俺は一応義兄。ミルトの性格をある程度は嫌でも知っている。
逃げるような人間ではなかったはず。だとしたら何処へ……?
考え込んでいるとバルスはさらに驚くべき情報を口にした。
「家の金は全部ミルトが持ち出していた」
「なっ?!」
「それでこんなお粗末な暗殺劇になったわけか。泳がせていなければ衛兵が捕まえて終わりだったぞ? 間抜けめ」
「くっ……それもその気持ちの悪い目で見たのか!」
次期国王に対してよく言えたと思うが、ヨハネスも俺も、フィリムも、バルスにかける言葉はなかった。
「ぐっ……なんなんだ! 何か言ったらどうだ!? ああっ?!」
逆に耐えきれずバルスが叫ぶ。
「……魔眼なんて関係ない。今のお前の目のほうがよっぽど、気持ち悪いのだからな」
絶句したバルスはついに、声を上げることもなくうつむくだけになった。
この後、グルグルに縛り上げられていた二人は、ヨハネスの部下によって、地下の牢へ閉じ込められた。
その牢の中ではずっとルーラが騒いでいたと言う。
「ミルトちゃん……どうしてなの…… ああぁぁーあああぁぁー!!!!」
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