推測と友達
黒幕が発覚してから一夜が明け、俺達は歩いて王宮に来た。今回は国務ではなく、フィリムが遊びに行くという口実にしてあるため、馬は使わない。
直ぐにヨハネス様とお会いできたのも、執事のセバスさんが王宮に魔道具を使って連絡をしてくれたためである。
セバスさんは本当にスーパー万能執事様だと思う。
そのため、前回とは違い、今回は真っ直ぐヨハネス様のプライベート応接室の近くまで移動する。
「フィリム、レイス君。待っていた」
何度みてもドキリとしてしまう美しい容姿のヨハネス様は、挨拶を早急に済ませて直ぐに応接室の中へ案内してくれた。
ヨハネス様は、辺りをキョロキョロと見回している。
「アンタ、今までこの部屋にいたんでしょ? それでも調べる気?」
「当たり前だ。一瞬でも部屋から退出したら必ず全て調べておいた方がいい。前回よりも念入りにだ」
「前回よりも……ですか?」
「そうだ。後でその訳は話そう。今回は時間もたっぷり用意してある。まずは、本題を聞こう。その後は……いい機会だから雑談をしようか。レイス君の話にも興味がある」
ヨハネス様と雑談とは嬉しい提案だ。俺も聞きたい事があったのでちょうど良かった。
「さて、始めるか」
ヨハネス様は、ポケットの中から前回と同様に、不思議な石を取り出し、その石に魔力を込めている。
暫くすると、部屋中が石から発せられる光に包まれた。
「また!? ちょっとヨハネス! 盗聴されてるの!?」
「いや、前回は言わなかったが、この王宮内には魔道具を使わずとも常に盗聴できる者がいるのでな。今度は、盗聴対策もしているぞと、こちらからアピールする事にした。少しだけ魔道具の寿命が短くなってしまうが、光を消しながら外に音を漏らさないようにすることも出来るから、暫し待て」
次第に眩しい光も消え、魔道具を使っていないような状態に戻った。
♢
俺は今回、黒幕がガブネス王子、俺の両親と義弟が命を狙ってくる事。
そして……。
あえて泳がしておくからヨハネス様は何か起こっても自分で守って欲しいですと伝えた。
「俺を餌に泳がせるか。剛毅なやつだ」
笑うヨハネス様。次期国王に対する扱いとしてはどうなのだろうか……。
「すみません。流石にまずかったでしょうか」
「何を言うのだレイス君。私は何があっても死にはしないと信用しているから決めた事なのだろう? 部下にもこのような事は言われた事がない。むしろ爽快だ」
「ま、私も昨日この作戦に賛成したし。今更でしょ」
普通だったら叱責されてもおかしくはない。しかし、ヨハネス様の器の広さと明るい性格がそうならなかった。
「でもアンタ、何か暗殺対策はあるの?」
「勿論大丈夫だ。奴らの動きは俺も見ていると言っただろう? あれだ」
さした指先は人がなんとか入ることも出来そうな大きさの換気扇だった。
「あそこに最近ザバスの息のかかった業者が入っている。何かあるならあそこだ」
「で、場所は分かったけどどうする気なのよ?」
「何か起こるまで待つのだ」
堂々と答えるヨハネス様に、俺とフィリムはそのまま暫く黙ってしまった。
これは対策と言って良いのだろうかと。
「アンタの能力……なにかあるまでは役に立たないわよね」
「本来ならば何か起こる前の対策が出来れば良いのだろうが、私の場合は大丈夫だ。魔眼と私自身の力と魔力でどうにでもできる」
「対策じゃないわね……」
フィリムの声のトーンが下がった。ため息をはいて呆れている状態である。
「それにああいう場所なら、ある程度推測も出来る。レイス君、ここで問題を出そう」
「ちょっと! アンタ遊んでるつもりなの?」
「いずれ私と一緒に国を変える男になるのだろう。これくらいすぐに判断出来るようにならなければいけない。私からの訓練と思ってくれれば良い。あの場所からどのように私を暗殺すると思う?」
俺ならばどうするだろうか、父なら、義母なら、ミルトなら。
「あの換気扇の大きさなら、あそこから暗殺者の投入。もしくは……毒、催眠ガス、何かしらの魔道具投入、吹き矢や武器放銃の可能性もあると思います」
「よく直ぐに浮かぶわね」
「いや、何となくそう思っただけだよ。ただ、命令によって家族がここに来るのだとしたら、おそらく……直接暗殺」
「発想力もいい線言っているのだな。レイス君。本来ならば直ぐにでも一緒に世界を変えようと言いたいのだが、私は一度決めた事は覆すことはしない。私の身は案ずるな。良い報告を待っているぞ」
本題の報告も終え、テーブル上に用意されたお菓子や飲み物をいただきながら、三人の雑談が始まった。
♢
王子相手とは思えない程、話が盛り上がってしまった。フィリムが場を盛り上げてくれたのもあるだろう。
三人で長時間のお喋りをした。
書庫で読んでいた俺の好きな本の話、ヨハネス様やフィリムの好きな事や、2人の仲が良い理由も話してくれた。
仲の良さから何となく察してはいたが、2人は同じ時期に生まれ、幼馴染だという。更に、俺も2人と同じ時期に生まれていた。
同世代ということもあって、俺はヨハネス様とも随分と打ち解けた。
「レイス君。フィリムと話をしている時のように、俺にも友達のように接して欲しい。いや、俺は友達として接したい。敬語などいらん。同じ時期に生まれた仲ではないか」
「流石に王子相手に敬語を使わないのは……」
俺の発言にフィリムが剥れた。
「何よ!? 私には直ぐに敬語なくしたのに、ヨハネス相手には出来ないっていうの!?」
「う……ヨハネス……」
「うむ、よろしい、レイス!」
おかしくなってしまい、三人で笑い合う。
時間が経つのを忘れるほど楽しい時間だった。
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