休息と笑顔
暫く時が過ぎ、黒幕を掴むための準備が整った。
そんな中、今日は、王都の街を歩いている。俺とフィリムの二人で。
最初の頃は、公爵令嬢という地位とフィリムの可愛らしい容姿で、緊張していたが、今は随分と仲良くなって、それもない。
「アンタ、盗聴器はもう設置したの?」
「あぁ、既に忍ばせてもらっているよ。急にどうしたの?」
相手側が動いてくれるのを待てば良いだけなので、街で買い物を楽しんでいる。
「随分と気楽な顔しているから心配だったのよ」
「あ、ごめん、街で買い物したりするの初めてで楽しんでた」
「それは別にいいのよ。私も楽しんでるし。で、盗聴器なんてどこに?」
またどこから盗聴されているかもわからないから、俺はフィリムの耳の側に近づいた。
「ちょ……ちょっと!? なに!?」
顔が赤らむフィリムに小声で話した。
「盗聴されてたらまずいから。実は俺の父バルスに。もう忍ばせてある」
「アンタの家族が王都に!?」
フィリムも小さい声で聞いてきた。
「そういうこと」
ヨハネス様と話をした時に盗聴されていた。俺の実家や書庫監禁の事も聞いていたはず。
セバスさんからの情報では、ザガル伯爵はズル賢く、俺の父とも敵対していると教えてくれた。
だとすれば次にやりそうな事は見当がついていた。
「でも……アンタいつの間にそんな事してたのよ!?」
「いや、忍ばせてもらったのは俺じゃないんだ。セバスさんに頼んでいた」
「セバスに? なるほどね」
フィリムのセバスさんに対する信頼が窺える反応だった。
「どうやって忍ばせてくれたかも教えてくれたけど、フィリムの言う通り、名執事さんだね」
「そりゃ……そうだけど……」
「今回の件、俺だけの力じゃ無理だと思うけど、フィリムも、その周りの人も頼って良いって話だったからセバスさんに甘えたんだけど」
「あんたねえ……まあいいけど。次からはやる前にちゃんと私にも教えなさいよ」
フィリムは拗ねているように見えた。
普段は国や俺のことに一生懸命で優しいフィリムだけど、こういう自分の感情を露わにするフィリムも可愛い。
「セバスさんが会話を全て記録してくれているみたいだから、駒が出揃ったらいよいよだと思う」
「……もう! だったら王都で情報なんて、不要だったんじゃないの?」
俺は首を横に振った。
「セバスさんが行ってきてほしいって。フィリムは今まで休まずに国のことや今回の事でも動いているから、情報収集の名目でいいから外へ連れ出してって」
「はぁ……私ってば、まんまと騙されたわね……」
ため息を吐きながら肩を落とすフィリム。
俺も最初はこんな時にダメでしょうと、断ろうとしたが、普段休まずに動いてて、心身共に気が張りすぎているから、楽しませてあげてと、これも仕事ですと断れなかった。
ついでに俺も楽しんできてと言われてしまう。
でも、王都をこうして歩いてたら……
「まぁ少しの間は俺に付き合ってよ。俺もフィリムとこうしてて結構楽しいし。あっちに王都名物料理の屋台もあるみたいだし、行こ!」
俺はフィリムの手を掴んで連れて行った。
「もう! みんな私に甘くしすぎ!!」
そんな事をブツブツ言っていたが、暫く王都をぶらついて楽しんでフィリムの家に入る直前に俺にこう言った。
「レイス……今日はありがとう」
既に日が暮れて一面の星空の明かりで映されたフィリムは、今までで一番の笑顔だった気がした。
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