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(前編)暗殺と重荷【バルス視点】

 ザガル伯爵からの脅迫文により余儀無く王都に向かわないといけなくなったリングベルド家。


「ねえ、大丈夫なの? 大丈夫よね? ミルトちゃん」


 今にも狂乱状態になりそうなルーラは必死に我慢をして、脂汗を流しながら息子に訴えた。助けを求めるように。


「すぐに殺すつもりなら、こんなことせずにそうなってるよ」

「ザガル伯爵が弱みに付け込んで出す命令だぞ! ろくでもない命令をするに決まっているだろうよ。そうでなければ真っ先にヨハネス王子に告げ口しておるだろう」


 この言葉にルーラは更に不安を覚えながら馬車に揺られる。


 ♢


 王都に到着し、指定通りに待ち合わせ場所に向かっていく。ここからは馬から降りて歩いて向かう。


「お待ちしておりましたリングベルド家の皆様。ここからは目隠しをお願いします」

「何故だ、そのような事は今まで一度もないぞ」


 バルスは不審な表情で警備兵に問いただす。


「ザガル伯爵の御命令です。ご無礼をお許しください」


 バルスは更に不安になった。

 ルーラは目隠しをされそうになった瞬間暴れ始めた。


「なんでこんな事するのよ!? とっとと殺しなさいよ!! もうなんなのよ!!」


 ルーラは言葉が滅茶苦茶になってしまう程の狂乱状態になった。


「仕方あるまい!! ミルト! やれ」

「母さん、悪いね」


 ミルトの機敏な動きで、念の為に持っていた効力が弱めの鎮静剤をルーラに打った。

 暫くしてルーラは大人しくなった。


 三人が目隠しをされ、そのまま引っ張られて進んでいく。

 その先で待っていたのは……。


「やあ、悪かったネ。わざわざこんな形で呼びつけてしまってネ」


 三人の目隠しは周りにいた使用人に外される。

 リングベルド家の三人は、予想もしなかった人物がそこにいたため、慌てたように名前を叫んだ。


「「「ガブネス様!?」」」


 バルスとミルトはすぐに跪いた。

 鎮静剤を打ってフラフラのルーラですら状況を理解して跪く。


「ガブネス王子……何故あなた程のお方が私共を出迎えていただけたのですか? ザガル伯爵殿に王宮へくるようにと──」

「喋らなくて良いネ。ボクはザガル伯爵から全て聞いているから、リングベルド家からあの魔眼持ちを追放したことも、監禁させてたことも知っているんだネ」


 語尾に独特の、聞くものによっては苛立ちさえ覚えそうなイントネーションでネ、と繰り返す。

 この喋り方が、もしかするとその容姿よりもガブネス第二王子の特徴をよく表しているかもしれない。

 この言葉を聞いてルーラは正気を取り戻した。


「やっぱりあのガキ……王都に来て私達のこと喋ったんだわ……」


 再び狂乱状態になるとバルスは焦ったが、思いもよらぬ言葉が……。


「レイス君はザガル伯爵に助けを求めたみたいだネ。リングベルド伯爵とザガル伯爵は仲が悪いって聞いてたんだネ。でも君達を守ろうとボクに相談してきたんだネ」


 全てガブネス王子の嘘発言。そうとは知らずにバルスは驚いていた。


「あのザガル伯爵がですか!?」

「そうなんだネ。感謝するんだネ。でも、ただ助けるのは嫌みたいだから、ザガル伯爵に命じようとした任務を君達にやってもらおうってわけなんだね」

「し……しかしガブネス王子……あの子は魔眼持ちで……私は伝統と秩序を持って……」

「知ってる知ってる。だから、後片付けをして欲しいんだネ。ついでに、公爵令嬢のフィリムとヨハネス第四王子もなんとかしてネ」


 公爵令嬢や第四王子の名前が出てきて、バルスは何をすれば良いのか答えが出ない。


「と……言いますと?」

「んー……見込み違いだったかな? 君は優秀だと思ったんだけどネ」

「もったいないお言葉……」


 これが褒め言葉ではないことはバルスも重々承知していた。

 冷や汗をかきながらバルスは必死に頭を回転させる。


「もしや王子は……私に第四王子や公爵令嬢を……」

「それ以上言わなくて良いんだネ」


 それが答えだった。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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よろしくお願いします!

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