会議と秘策
「なんなのよっ!」
ダイン王子が帰り、緊迫した空気がなくなったが、フィリムは荒れていた。
確かにダイン王子の訳の分からない報告には俺も少し頭を抱えた。しかも今もあの嫌な睨みを考えると……。
だが、ダイン王子と対談したおかげで進展が見えたのは確かだった。
「フィリム、大丈夫?」
ここまで乱れたフィリムは見たことがなかったので、心配で声をかけた。
「ありがとう。ごめんね、私、アイツは苦手なのよね……」
「俺も、帰る前の睨みは嫌だったな」
「よくアイツの睨みに耐えられたわね! その辺の衛兵でも恐怖で固まって暫く動けなくなるわよ」
「それは……もう魔眼みたいなものだね……」
「あんたが言うと笑えないわね」
そんなことを言いながらフィリムが笑う。
良かった、すこし表情が和らいだようで。
しばらくたわいもない話をして、フィリムも落ち着いたので、食事をしている部屋に戻って話を始めた。この部屋が、一番会話がしやすい。
♢
「アンタはダインの言ったこと、どう思った?」
「本当の事を言っていたとしても、帰り際の睨みは、何か裏があるんじゃないかと思った。けど、今はダイン王子の言ってた事を信じて進めていくしかない気がする。もちろん、ダイン王子には警戒が必要だけど」
「そうね……」
そもそも、ダイン王子って俺はどんな人物かは新聞での情報しか知らないし、他の王子のことも、フィリムなら何か知っているかもと思ったので聞いてみることにした。
これが何か手がかりになるかも知れない。
「フィリム、王子達の事、教えて欲しいんだけど」
「そうね……ダイン第一王子は金が全てで王位継承に執着はないと自分で言っていたけど、本当にそれだけよ。国王になったら民から多額の税を徴収するって騒いでいたし」
「とんでもない王子だな……そのダイン王子はガブネス第二王子が黒と宣言していた。フィリム、新聞でしか見たことがないから詳しくは分からないけど、ガブネス第二王子は古い文化を取り戻すと宣言していたのは事実?」
フィリムは首を縦に振り頷いた。
「あの王子ならそれは間違いないわね。当然魔眼も忌み嫌っている。ヨハネスにも『ガブネスには注意しろ』って言われてたし」
どうやら、本当にガブネス第二王子が黒なのかも知れないと思えてきた。同時に、たとえ黒でなくても警戒が必要な人物だろう。
「残りの王子と王女は?」
「第一王女は気まぐれだし、王都から外へ出て滅多に帰ってこない自由気ままな人だから、王位継承には関わってこないはずよ」
フィリムは一息置いて話し始めた。
「第三王子は私が幼い頃から王宮の地下の奥深くに幽閉されていて、私も詳しくは知らない。なんで幽閉されたか聞いても、ヨハネスですら知らないと言っていたのよ。セバスは知ってる?」
「いえ、私も存じ上げておりませぬ。ただ、オルトリレス国王陛下が手を焼くほど扱いが難しく、王子としての心得も全く持っていなかったと聞いたことはございます。事実かどうかは分かりかねますが」
さすがセバスさん。フィリムが知らない情報ですら知っているんだな。この人になら、何でも頼れる気がする。
「可能性はあっても幽閉されてては何も出来ないかしらね……レイス、アンタはどう思う?」
俺は王子と王女の事を聞いて、更にダイン王子との対談で話したことも少し考えていた。
第二王子が黒と仮定した場合ならば、次にやりそうなことは想像がつく。
「ヨハネス様は言ってたよね。ザガル伯爵とウイガルという者に盗聴されてたけど、こっちからも盗聴したって。ヨハネス様が使っていた盗聴器って、フィリムも持ってる? 使いたいんだけど」
「本邸の宝庫を探せばそのくらいの魔道具ならあると思うけど……何に使うのよ?」
「ちょっと考えがある」
誰が黒かは分からないけど、可能性が高い以上、やったほうが良いと思う。
この判断が、今回の問題解決の重要な方法に繋がるのだった。
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