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やってみたかったこと

 ケントは教えてもらった方向を目指して一直線に駆けている。


 ペスカーラ内部にいる時はひかえていたが、周囲に建物も人もいなくなったのなら遠慮は無用だ。


 長距離移動系神級スキル《一日千里》。


 最高速度は他の移動系スキルには及ばないものの、高速で移動し続ける間の消耗を大きく抑えてくれるスキルで、移動距離が長いマップでは重宝されていた。


 優れた名馬は一日で千里を走ったという故事から採用したスキルだろうと、プレイヤーたちには考察されていた。


 途中で一度位置をたしかめるために立ち止まったが、ケントの息は乱れていない。


 それなりの距離を走ってきたはずなのに、近所を散歩したような疲労感すらなかった。


「うん。神級スキルはさすがの便利さだな」


 とつぶやく。


 この先何回使うことになるかわからないが、神級スキルの恩恵の一端を感じ取れたには意義がある。

 

 そして《一日千里》のスキルを再発動させる前に、もう一つ違う神級スキルを発動させた。


 探知系神級スキル《天網恢恢》だ。

 アクティブな敵がいるかどうか探せるスキルで、種族は問わない。


 下位のスキルでは探すのが難しいアンデッド系やゴーレムといった、非生物系の敵も感知できるのが強みだ。


 有効距離は半径百メートルほどだが、充分おつりが来るとケントは思う。

 

(お、引っかかったな)


 前方から反応があることをスキルが伝えてくる。

 膨大な数であることから、目標のオークたちだと判断してまず間違いない。


 あたりをもう一度見回してみると、遮へい物のない平野だった。


 そこら中に小石は転がっているし、ところどころ木や雑草が生えているが、破壊したらまずそうなものは見当たらない。


「ここなら存分にやれそうだな。オークたちと戦うついでに、スキルも試してみよう」


 大都市の危機に不謹慎だという思いはあるものの、彼にとってはスキルの実験・練習をおこないつつ、モンスターを狩って報酬を稼げる一石二鳥の展開である。


 ケントがそっと忍刀を抜いて待っていると、やがて前方から無数の明かりが見えてきた。


 オークたちが右手にたいまつを持って行進しているようである。


(敵に発見されやすくなるリスクがあるのに……)


 リスクが理解できないのか、それとも数が多ければヒューマンたちに心理的圧力をかけられると思ったのだろうか。


 オークの性格を考えるとどちらもありえそうだった。


 姿を見せたオークの群れは徒歩ばかりで、狼の背に乗っている個体は見当たらない。


(歩兵を前に出したということなのだろうか?)


 まあいいとケントは思う。


 ここで全滅させるのは理想なのだが、のちのちのことを考えると多少は取りこぼしがあってもいいかもしれない。


 今回は戦える者がいない小さな村の防衛戦ではなく、銀級というオークなら鎧袖一触にできる実力者が何人もいる大都市ペスカーラだ。

 

(何ならシロもいるからな)


 彼女がその気になればオークの五十や百くらいは簡単に蹴散らせるだろう。

 ホワイトバードとオークでは、それくらい強さに差がある。


 つまり憂いなく彼は戦うことができるのだった。


「本来なら隠密系スキルを使っての奇襲もアリなんだが、今回は数が多いしな。それに一回やってみたかったんだよなぁ」


 とケントは言いながらオークの大群を見据える。

 彼がやってみたかったのは、たった一人で大物量相手に戦いを挑むことだ。


 まるで映画やアニメのワンシーンのように。


(もっとも俺は数が多いだけのザコ相手の戦いだから、絶望的な状況で戦うヒーローとはかけ離れているんだがな)


 と自嘲とともに苦笑を浮かべる。

 だが、形だけでもまねができるのは彼にとって喜ばしいものだ。


 空想の中では、ゲームの中では、彼だってヒーローになれたから。

 だが、今はゲームでも空想でもなく、れっきとした現実である。


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