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伝説のホワイトライダー

 ホワイトバードは勢いよく飛び、おそらく時速八十キロくらいは出てるだろうとケントは思った。


 怖く感じるどころか物足りなさがあるのだから、感覚そのものも《忍神》になったのだろうと推測する。


 やがて下の方向に集落が見えてきたところで、ホワイトバードは速度と高度を落として、町の壁の五十メートル手前くらいで着地した。


 街道から左にずれていたのは通行人を避けたからだろう。


 その通行人たちはいずれもポカンとして、ケントとホワイトバードを見比べている。


「ほ、ホワイトバードだ」


「すげえ」


「本物!?」


 彼らはホワイトバードを見上げながら驚き感動していた。


 うち革の鎧を着て短剣と手甲で装備した茶髪の若者が、おそるおそるケントに話しかけてくる。


「あのう、これはあなたがシモベにしているんですか?」


「ええ。そうですが」


 ケントはやはり言葉が通じるのかと思いながら、ひとまず敬語を使って答えた。


「ほ、本物のホワイトライダーだ!」


「伝説じゃなかったんだ!」


 何やら彼の答えを聞いた人々がいっせいに盛り上がっている。


「疎まれることはないと聞いたけど、この反応は予想外だったな」


 と彼はつぶやく。


 きらわれたり警戒されるよりはずっといいが、これではまるで珍獣を初めて見た時のような態度だ。


「ところでホワイトライダーって、ホワイトバードを使役する者って意味でいいのか?」


「おそらくそうだと思います」


 ケントの問いにホワイトバードは小声で答える。


「ところでこの町のことは知らないんですが、ホワイトバードを連れて町の中に入ってもいいのでしょうか?」


 ケントは自分に話しかけてきた若者に聞いた。

 町の出入り口はどう見てもホワイトバードのサイズよりも小さい。


 入るなら壁を飛び越えるしかないだろうが、果たして問題はないのだろうか。


「ホワイトバードなら大丈夫ですけど、小さな町なので入れるかどうか」


 若者は困った顔して答える。

 ルール的にはOKだが、物理的な問題があった。


「ここに置いていくか」


 小さな犬猫だったら目を離した隙にさらわれるリスクがあるが、乗るだけで伝説扱いされるくらいのモンスターなら、めったなことはないだろう。


 ケントのドライな判断に対してホワイトバードはあわててアピールする。


「わ、私は体のサイズを変えられますし、ヒューマンにも変身できますよ」


「ホワイトバードにそんなスキルがあるのか?」


 ケントが首をひねると、ホワイトバードの全身が光に包まれて十五歳くらいの少女の姿になった。

 

 背中まで伸びた銀色の髪と青い瞳は神秘的に美しい。

 服がないというお約束はなく、白い生地のワンピースドレスを着ている。


「どうでしょう?」


「意外と器用だな」


 ケントは淡々とした反応だった。

 どれだけの美貌を持とうとも、もとはモンスターだと思えば彼の食指は動かない。


「あれっ?」

 

 ひそかに自信があったらしいホワイトバードは、計算が外れたという顔になる。


「ホワイトバードの中には変化のスキルを持つ個体もいると聞いたことがありますが、これはすごい」


 若者はひたすら感心していた。


(こっちのホワイトバードは変化のスキルを覚えていたりするのか……たしかにレベル2から覚えられるスキルだったはずだが)


 とケントは彼とは違う理由で感心する。

 このホワイトバードはもしかしたらレベル52はあったりするのだろうか。


 そこまで考えた彼は一抹の不安を覚える。


(レベル50台としか思えないホワイトバードで伝説扱いってことは、レベル100を超えていたらどうなるんだ?)


 もしかして安易に神級忍法を発動させないほうがいいのではないか。

 そんな考えに至ったのだった。


「マスター、どうかしましたか?」


 少女の見た目になったホワイトバードに、少女らしい声色で問われてケントは我に返る。


「名前をつけたほうがいいかもしれないな」


 とケントは言う。


 このまま付き合いが続くなら、さすがに種族名で呼び続けるわけにはいかないからだ。


「名前をいただけるのですか?」

 

 ホワイトバードは目を輝かす。

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