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なくならない問題

「へえ、ケントは別大陸から来たのか。道理で見たことがない恰好をしているわけだ」


 レキは感心しながら手を動かす。


「ほしい香草があればとるのを手伝うけど?」


 とケントは申し出たのだが、彼は断ったのだ。

 護衛してもらっておいて採取まで手伝ってもらうと、報酬をとても払えないと。


 この大陸のヒューマンの感覚ならばと、ケントは彼の意志を尊重することにしたのだった。


「ところで護衛の謝礼は俺の料理でいいのか?」


 香草を取り終えたレキが、改めてケントに問いかける。


「ああ。コックの美味い料理を食べさせてくれるなら、それでいい。あと、襲ってきたモンスターの死体を、組合で換金する権利もできればほしいんだが」


 彼はレキに要望を伝えた。


「それはもちろん君らのものだよ。俺が倒せるモンスターかどうかは、関係はない

。戦うコックだと言っても、できれば戦いたくないからな」


 とレキは答える。


「じゃあ護衛を雇えばいいのに」


 シロが無邪気に言った。


「護衛を常時雇う金はきついし、おまけにハンターって俺と相性よくない奴が多くてなあ」


 レキは疲れた顔でため息をつく。

 どうやら以前に雇った経験があり、トラブルでも起こったようだった。


「まあヒューマン同士の相性は、きっとなくならない問題だろうな」


 誰とでも上手くやれる性格の持ち主なんて、めったにいないとケントは思う。


「まあいいや。とりあえず村まで戻ろうぜ」


 暗い話になるのを嫌ったようで、レキは努めて明るい声を出す。


「村があるのか……この付近に?」


 ケントは意外さを隠しきれない声で問いかける。

 樹海の近くで暮らすというのは危険ではないかと思うのだ。


「近くはねえよ。数時間は歩くぜ。あんたらは平気だろうけどよ」


 レキは彼の勘違いを笑って説明を返す。


「数時間か。シロに乗ればひとっ飛びだな」


「了解です。カゴですよね?」


 ケントの言葉にシロは返事したあと、確認する。


「もちろんだ。嫌がるのを強要するつもりはない」


「ですよね」


 彼の答えにシロは安心した。


「うん? 何の話をしているのか、さっぱり理解できないんだが」


 彼らのやりとりについてこれなかったレキが困惑し、ケントに話しかける。


「ああ、ひらけた場所で説明するよ。というか見せたほうが早いだろう」


 とケントは答えた。


「ふーん?」


 レキはよく分からないという顔のままだったが、


「じゃあひらけた場所に行くか。ちょうどこのまま道になりに行けばいい」


 と話す。


 そして十分ほど歩いたところで、樹海は終わって背が高めの雑草だらけの空間に出る。


「ここらならどうだ?」


「充分だと思うよ。なあシロ?」


 レキの問いにケントが応じつつ、シロに振ってみた。


「私は別に周囲が木でも平気でしたけど……」


 彼女はそんな風に答える。


「おや、そうなんだ」


 レキが彼らの意見の食い違いに興味を持つ。

 それに気づいたシロがあわててケントに頭を下げる。


「生意気言ってごめんなさい。配慮してくださってありがとうです」


「いや、いいんだ。お前のためだけじゃなく、レキのためでもあるからな」


 ケントは怒らずにニヤリと笑うと、シロは察してニコッとした。


「何か意味ありげだなぁ……」


 レキがつぶやくのを聞きながら、シロは本来の姿に戻る。


「うおおお!? シロちゃん、モンスターだったのか!? しかもこの見た目、もしかしてホワイトバード!?」


 彼女を見たレキは仰天したらしく、目を見開いてそのまま尻もちをつく。


「ああ。ひらけた場所でなら腰を抜いても安心だろう?」


「俺のためでもあるってそういう意味かよ。……ケントって案外性格悪いな」


 軽くどや顔をしたケントに対して、レキは納得しながらもぼやいた。

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