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ボロディア樹海

「マスター、あそこじゃないですか、目的地」


 とケントを背中に乗せたシロが、眼下に広がる樹海をながめながら言う。

 富士の青木ヶ原樹海をほうふつとさせる広さだった。


 むしろボロディア樹海のほうが広いくらいだが、ケントはそれがわからない。


「コカトリスがどこにいるかわからないから、適当なところで降りてもらおうか」


「はい」


 とシロは彼の指示に返事したあと、疑問を口にする。


「マスターは敵を探すスキルって持ってないんですか?」


「持っているけど、コカトリスだけを見つけられるような便利なものじゃないんだ」


 ケントは残念そうに答えた。


「俺が持っているのはせいぜい広域探知と、探知無効突破探知だな」


 広域探知は文字通り敵を探知できる範囲を広くするもの。

 探知無効突破探知は、探知阻害系スキルをすべて無効にするスキル。


(今回にかぎってはおそらくどれも役に立たないだろう)


 とケントは思う。

 状況によってはどっちも強くて便利なスキルになるのだが。


「どっちも知らないスキルです」


 シロは呆然としていると言うより、やっぱりかと言いたそうだった。


「まあ探知無効突破は神級だしな」


 知られてなくて当然だろうと、ケントはつぶやく。

 

「かみ?」


 シロはよく聞き取れなかったと聞き返す。


「まあいい。とりあえず広域探知は使ってみよう」


 どの辺にモンスターがいるのか事前に把握しておけば、しらみ潰しに探す手間をかけなくてよくなる。


「忍法・風見鶏の術」


 ちゃんと上下に印を切ってケントは探知忍法を発動させた。

 風の流れを読むことで、どこに敵がいるのか把握するというスキルである。


「こっちで使えば……樹海はだいたいカバーできるか」


 こんなに範囲が広い術だったか、という疑問はすぐに消えた。

 頭の中に生物の位置が流れてきたからである。


 あくまでも現在地を知るためのもので、使ったあと移動される可能性はあるのだが、参考にはなるだろう。


「とりあえずこのまままっすぐ降りてくれ」


「わかりました」


 シロは指示に従い急降下する。

 途中で木に翼が引っかかったが、彼女は気にせず木が音を立てて折れた。


 強度でただの木よりも彼女の翼のほうがずっと上なのだろう。

 

(激震撃神でも強度が設定されたフィールドのものを破壊できたもんな)


 とケントは記憶をたどる。


 壊したから何かあるというわけでもなかったし、現実的に可能になっただけなのだろうが。


(ゲームシステムが再現されているパターンはあまりなさそうだな……今のところは)


 彼はすこし自信なさそうにつけ加える。


「マスター、つきました」


「ああ」


 シロが着地と同時に報告したので、彼は樹海の地に降り立つ。

 土は黒くて柔らかかった。


 彼の前には蛇と、蛇に丸のみにされている鹿がいる。


「フォレススネークですね。今なら鹿、助けられると思いますけど」


 ヒューマンの姿になったシロが発言した。


「別にいいよ」


 蛇は今のところ鹿に集中していて、彼らに興味を示していない。


「向こうが無視するなら俺たちも無視しよう。目的はあくまでもコカトリスなんだから」


「それもそうですね」


 シロは軽い気持ちで提案してみただけらしく、あっさり引き下がる。


「コカトリスって蛇を食べたりはしないよな?」


「コカトリスの主食って熊とイノシシだったと思いますけど」


 シロはケントの問いに答えた。


「詳しいな」


「どの生き物が何を食べるか覚えておくと、ご飯を探しやすいですからね」


 彼が感心すると、彼女は満面の笑みで返事する。


「なるほどな」


 とケントはうなずく。

 食いしん坊な性格が昂じて、他の生き物にも詳しくなったのなら納得できる。


 いかにもシロらしく思えて、彼は笑いをかみ殺した。

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