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モンスターの間引き

 翌日、ケントはまずサウン街道にやってきて、周囲を見回す。

 旅人や旅の商人らしき影が複数行き来している。

 

「人通りが思ったよりあるし、森林は変に切り倒したりしたらまずいだろうな」


 と小声でつぶやいた後、後ろに鳥の姿のままのシロに言った。


「この森に出るモンスターで、お前の食事になるやつはいるのか?」


「だいたい全部私のごはんになりますよ」


 主人の問いに彼女は明るく答える。


「じゃあ間引きという理由でお前が適当に食い散らかしても問題ないわけだな」


 とケントは返す。

 彼は今、スキルの練習をしたいという気持ちが強くなっている。


 シロが食事をさせることで依頼が達成できるなら、それでいいのではないかと思うのだ。


 彼女が捕食するだけでも依頼達成になることは、すでに証明済みなのだからなおさらだ。


「わぁい!」


 シロは自由に獲物をとれると言われて喜びの声をあげ、翼を軽く動かす。


「じゃあご飯の時間だな、シロ。何を食べたのかちゃんと覚えておけ。あと、俺が呼んだら帰って来いよ?」


「もちろんです! 行ってきます!」


 シロはそう叫ぶと空を舞って森の上を飛び回る。


 それを見送ったケントは森の入り口まで行き、街道から見えない位置に腰を下ろして生えている木に背中をあずけた。


 シロが獲物を探して捕食している間、のんびり休もうと考えたのだ。


(何だか仕事を上手にサボっているサラリーマンみたいだな)


 と思ってしまうが、この世界では合法なのだから何も問題ない。


 ケントは未経験だが、ホワイト企業と呼ばれる組織だと優秀な仲間に仕事を割り振って楽できたそうだ。


 こちらの世界で経験しているのだと考えればいい、と彼はとらえる。


(たまにはのんびりしてもいい……いや、こっちの世界だと大して働いていない気がするな?)


 一日二件ほど仕事を受けたりして驚かれたが、日本の社畜時代と比べれば驚異的なまでに仕事量は少ない。


 こんな暮らしができるなら過労で倒れることはなかっただろうなと確信できるほどだ。


(さてと俺はどんなスキルを練習しようかな?)


 空を見上げながらケントは考えをめぐらせる。

 平原というなら草が多いのだろうか。


 だとすると火属性の忍法は使わないほうがいいだろう。


(使いやすそうなのは水と土、あとは雷あたりか?)


 それから背中にしょっている忍刀のスキルも試したい。

 四連斬は無事使えたが、他のスキルはどうだろうか。


(四連斬で神業なら、奥義スキルとか使ったらどうなるんだ?)


 となんて思ってしまう。


 四連斬は秘剣なんてついているが、レベル50超えで覚えられる「中級スキル」に分類される。

 

 奥義スキルは説明欄のフレーバーテキストによると、「達人が扱うと時空を切り裂き、天すら割る究極の斬撃になる」と書いてあった。


(この世界で実現しちゃったらやばいだろうなぁ)


 ケントは奥義スキルのたぐいを試すのは、もっと別の機会にしようと判断する。

 レベル50台のシロが圧倒的に強いとされる世界なのだ。


 神級スキルは永遠に出番がないと考えるくらいでちょうどいいだろう。


「ちょっとくらいは使ってみたいんだが」


 とつぶやくが、果たして機会は来るのだろうかと思うと優先度は下がる。

 どうせ練習するなら使うことがありそうなものがよい。

 

「四連斬りと燕返し、三連突き、三日月斬りあたりは出番があるかな?」


 忍刀スキルのうち、四連斬りとそこまで威力が変わらないだろうものを思い浮かべる。


「忍法は下級と中級だけでいいかな……いや、念のため上級くらいの練習はしておくべきか?」


 とケントが思い直したのは、ドラゴンの強さが不明だからだ。


 ドラゴンを直接見たことがない者が多い以上、彼らの想像よりも強い可能性だってある。

 

「上級スキルの竜巻斬りや雷光突きあたりも練習しておくか……」


 そう言って彼は立ち上がった。

 シロが飛んで戻ってきたのが見えたからである。


 ある程度満足したのか、呼ばれる前に戻ってきたらしい。

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