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転生したら最強のニンジャだった

 添島健斗が目を覚ますと、そこはすっかり見慣れた病院の天井ではなく、見覚えのない林の中だった。


「あれ……?」


 内心うんざりしていた病院のにおいではなく、草花のにおいや川のせせらぎが聞こえて来て彼は困惑する。


「どこだ、ここ?」


 近くに誰もいないのに声を出すのは、少しでも不安をまぎらせるためだった。


 健斗は青色の入院着を着たまま放り出されたのかと絶望しながら、自分の姿を確認する。


 ところが彼が着ていたのは入院着ではない。

 黒い手甲に黒い忍の服で、背中に刀を背負っている。


「……どっかで見たことがある格好だな」


 コスプレにしては既視感があると思い、健斗はしばらく考え込む。


 やがて就職する前までハマっていたRPGゲームのアバターにそっくりだと思い出す。


「『激震撃神』の《忍神》アバターっぽいんだよな」


 なつかしさを込めて彼はつぶやく。


 『激震撃神』は就職してからは仕事に追われてプレイする余裕がなくなり、いつのまにかサービスが終了していたオンラインゲームだ。


「ステータス……なんてな」


 と言ってみると、自分の目の前に白い文字が浮かび上がる。


【ケント:職業:忍神:レベル200】


 そう言えばこんな表記のされ方だったなと思いつつ、ケントは自分のレベルが200あることにホッとした。


 事情はさっぱりわからないのだが、おそらくレベルは高くて困ることはないだろうと漠然と思う。


「忍神はたしかニンジャ系のマスター職だったな」


 ここ数年忘れていたが、一時期ハマっていたゲームだけに一度思い出せば、けっこう覚えていることが多い。


「問題はスキルを使えるかだ」


 ステータスのおかげで使えるスキルの確認もできる。

 ケントはニンジャが使えるスキル「忍法」の一覧をひと通り見終えた。


「何かを試し撃ちしてみるか」


 習得していることになっているが、実際にどれくらい使えるのかわかったものではない。


 考えすぎかもしれないと思いつつ、彼は一応試してみる。

 果たしてどんな忍法がいいだろうか。


 周囲は林だと考えれば火は使わないほうがいいだろう。


「水か風か」


 風のほうがよさそうだと何となく思ったので、彼は風の忍法を選ぶ。


「忍法、風遁・風車の術!」

 

 印を切ってケントが発動させたのは中級忍法の一つで、不可視の風車を作り出して手裏剣のように飛ばして攻撃するスキルだ。


 発動させると大きな風の流れが発生し、彼の右側をぐるぐると縦回転している。


「あれ、思っていたより大きい……?」


 とつぶやく。


 彼としてはせいぜい突風に木々が吹かれただけ程度の威力のつもりだったのだが、この分だと必要もないのに林をなぎ倒しかねない。


 方向をなるべく上に修正して放つと、大気を切り裂かんばかりの猛烈な勢いで飛んでいった。


「……照準を上に修正して正解だったな」


 自分の判断は正しかったとケントは安堵する。

 同時に問題なく忍法を使えたことに胸をなでおろす。


 《忍神》は速さと忍法を主体に戦う職業で、パワーと耐久力は同じ近距離戦闘のマスター職の中でも最低争いをする。


 忍法を使いこなせないと、武器の過半を失うようなものだった。


「もうちょっと練習したほうがいいか……いや、水と食料を探すほうが先かな」


 たしかに《忍神》として戦えるのかという不安は残っているが、それ以上にここで生きていけるのかという懸念が勝つ。


 水と食料さえあれば戦闘訓練をする余裕も生まれるだろう。

 

「それ考えたら林のそばっていうのは運は悪くないかもしれない」


 と独り言をつぶやく。

 川や泉があるかはわからないが、木の実くらいはあるはずだった。


 《忍神》は毒耐性が高い上に感知するスキルも持っている。

 サバイバル生活を送るなら、実用的な職業だと言えるかもしれない。


「まあブラック労働のおかげで過労でぶっ倒れたあげく、入院生活を続けるよりはマシかな」


 落ち着いたら人里を探してみようと思いながら、ケントは林の奥を目指して歩き出す。

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