4話
僕はここ、レイライン王国の南西に位置する《レ
イズ区》へと辿り着いていた。レイズの町は、思
っていたよりも小さい規模であった。レイズの町
の周りには、緑の景色が広がり、広大な田畑だけ
でなく小さな河川も何本か流れていた。町の中は
というと、遊戯施設はおろか、飲食店も十分に設
備されていない。だが、特別僕は気にすることは
なく、この自然豊かな光景を楽しんでいた。もち
ろん、「クロバ」と呼ばれる人物についても調べ
を進めていた。聞き込みを始めてからすぐに、ク
ロバさんの居場所は判明した。なんでも、レイズ
区の北東にある山の中腹辺りに住んでいるらし
い。
いざ、クロバさんの元へと向かうと普段利用され
ていないのか、山道は舗装されておらず自然によ
って作られた道をひたすら進んでいった。途中に
休憩を挟みつつもなんとかクロバさんのいるであ
ろう一軒家を見つけた。家とは言ってもはたから
見たら、山小屋にしか見えない粗末なものだ。と
はいえ、この建物に違いないはずだ。その小屋へ
と歩を進めていると、ふと人の気配を感じ周囲を
見渡す。
「何の用だ?」
声のした方向へと目を向けると、白髪の髪に黒色
の眼をした男の人が立っていた。
「あの、クロバさんですか?」
「ああ。私がクロバだ。」
やっと見つけた。フェイは、迷わずに自分の意思
を伝える。
「兄であるレイにあなたを訪ねるよう言われ剣術
を教わりたくここへと尋ねて参りました、フェイ
と申します。どうか、自分に剣術を。」
その後、事情を把握したクロバさんは特別何か言
うでもなく、フェイの弟子入りを認めてくれた。
始めに僕はクロバさんと剣を交えた。以前、兄と
村で剣を学んでいたこともあって多少の自信はあ
ったのだが、クロバさんを前にして何も出来なか
った。そう、本当に何も出来なかった。
「基本の剣の構えは出来ている。だが、剣を扱え
ていない。お前は、体を鍛えることから始めよ
う。」
この日を境に3年後まで、僕は剣を握ることはな
かった。
それからの日々は、毎日毎日同じことの繰り返し
だった。朝日の昇る前に起き、朝日が昇るまで傾
斜が激しく舗装されていない山道をひたすら走っ
た。走り終えた後は、山道を少し進んだ所にある
竹林でクロバさんから渡された木刀を使って竹を
切る練習を行う。基本的に、クロバさんと話すの
は竹林へと向かうと知らせる時のみで自主練習を
行っていた。はっきり言って不安で仕方がなかっ
た。「こんなんで、僕は戦えるようになれるの
か?」と。
ある日に、僕はクロバさんに直接聞いた。僕の抱
いている不安そのもののことを。返ってきた答え
は、
「ああ、大丈夫だ」
という簡単なものだった。それ以上クロバさんは
何も言うことはなく、納得いかなかったが、僕は
その言葉を信じて鍛錬に励み続けた。