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赤い鬼の子。  作者: ホタル。
第三章 百鬼夜行
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44.  ミカタ



 雨三(あまみ)玖郎(くろう)は外の様子が騒がしい事に気がついた。



 「何事だ、騒がしいけど」


 「玖郎さま、なんでもありません。気にせずにお休みください」


 「何があったか説明を」


 「わ、わかりました。指名手配された人たちが来たので対処をしているだけですので」


 「本当に大丈夫なんだな?」



 幹部の返事を聞き、部屋に戻ろうとしたら、



 「増援を、相手は強い。一筋縄ではいかない」


 「本当の本当に大丈夫なんだよね」


 「はい、そのはずで――――」


 「――――愛六(あいろく)忌助(きすけ)は危険だ。手加減をする必要はない」


 「えっ、忌助くんなの? って事は鈴が」



 玖郎は急いで校庭の外へと走っていく。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 玖郎さんに連れられて学校の一室にやって来た。



「ごめんね、なんかこんな感じになっちゃってて」


「お父さん、せ、つ、め、い、し、て」


「確かに鈴たちを特殊指名手配にしたのは事実だよ。でもそれで拘束しろなんて言うと思うかい?」



 皆で首を横に振る。

 玖郎さんはそんな事をしない、はず。



「とりあえず一刻も早く君たちを安全なここに連れてきたかったから特殊指名手配にしたのに、どこかの誰かが勝手に解釈して、その上襲いかかる始末。本当にごめん」


「玖郎さん、お願いが」


「なにかな、忌助くん」


「保護してもらいたい人たちがいるんです。出てきて」



 影船から人がどんどんと出てくる。



「この人たちは学校に来る途中に助けた人たちです」


「わかった」



 玖郎さんはその人たちを受け入れる為に色々としてくれるようだ。

 これであの人たちは大丈夫だろう。



「それで玖郎さん、質問です」


「なんだい、忌助くん」


「大体の事情はわかりました。それで、玖郎さんは敵ですか? それとも味方ですか?」


「それはどういう意味かな?」


「玖郎さんは鬼や人にとって味方か敵かを知りたいんです」


「そこに鬼が入ってくるんだね」


「はい。大事な事です」


「僕はずっと味方でいたつもりだけど?」


「自分もそう思っています。ですが、あの、鬼の子の実験は知っていますよね?」


「あー。あの、ね。なら(むう)さん、母上に会ったんだね」


「はい、無さんは鈴に鬼を譲り亡くなりました」



「そっか....母上が。

 母上はね、元から鬼の子だったんだ。でもね、鬼の子に対する扱いが悪いって事で自らを実験台として、鬼の子の地位の改善をしてたんだ。だけどそれだけでは終わらなかった。欲を出した一ノ瀬(いちのせ)家が実験に横槍をいれてきて、挙げ句の果てには、その実験の権利を奪っていったんだ」


「それは、」


「本当の事だよ」



 でも少し納得のいくこともある。

 例えばあの校長だ。

 あの校長は鬼でもあったし、一ノ瀬家の権力も持っていた。

 それに暮夜が鬼になったのに対処しなかったのもおかしい。



「それで完成させたんだ。鬼の子を、忌み子を根絶やしにするための、人工的な鬼の子にする呪札を」


「それが無さんの持っていた。でもなんで一ノ瀬家は動かなかったの?」


「それは、母上は記憶を消されてもなお、その呪札は出回るべきではないと考えて実験室もろとも関係者を殺してしまったんだ」


「だから、これ以上被害が出ないように追うのを止めた、と」


「そう。そこから今の薬が出来上がったんだ」



 なるほど、あの鬼化の薬は無さんに対抗するためのやつだったのか。



「一ノ瀬家は今、本格的に鬼の子の実験をしている。その為には手段を選ばなくなってるし、実際に能力を持った鬼の子も完成している。そこで、九家と愛六家に同盟を組みたいと考えている」


「玖郎先生、それをなぜ俺たちに?」


「忌助くんはそうじゃないけど、(つき)くん、君は今、九家の当主だ。この意味がわかるよね?」


「誰がなんの為に‼」



 ながつきはドンッ、と机を叩き割った。

 そして抑えきれない鬼の霊力。 

 怒りに染まった霊力が駄々漏れている。



「なんの為か、それは一ノ瀬家が呪札の協力を要請したんだが、それを破棄した」


「それだけで」


「それだけでだ。そして月くん。君はまだ子供だから扱いやすいと思われているからだ。月くんも鬼を宿しているんだね。それなら尚更危険だ。月くん事態が実験台にされてしまう」


「ッ」



 ん?

 さっきの玖郎さんの言葉に自分は関係ないけどって言ってたのって、お父様が殺されたって事か?



「忌助くんが思っている通りだよ」


「顔に出てましたか?」


「うん、そうだけど? 兎に角今は君たちが狙われている。そしてここはまだ一ノ瀬家の目が届いていない。けど....」


「けど?」


八重(やえ)家と十寺(じゅうじ)家の人工鬼の子がいる。まだ完全じゃないお陰でさっきの騒ぎにも気がついていないから」



 もう二人もここに配置されてるって事は、ここに来るって警戒されてるのか。

 なら尚更鈴たちが鬼の子だって事を隠す必要がある。



「君たちは一応異能を持っていない普通の鬼の子って事でいいね?」


「わかりました。でも忌助は無理ですよね」


「うん、忌助くんは無理だ。だから力ずくで抵抗していいよ」



 それっていいのかな?

 下手をしたら物凄い数と戦うことになるような。



「でも抵抗って言っても――――」


「――――玖郎さま、一ノ瀬家の使者が来るみたいです」



 扉を勢いよく開け放ち血相を変えて報告してきた。



「どのくらいで着くって?」


「はい、後一時間もしないうちに」


「そんなに、か。ありがとう、下がっていいよ」



 玖郎さんは「んーー」とうねりながら考えている。

 玖郎さんは味方として、信用して大丈夫だろう。



「とりあえず自分は油葉根さんの影に隠れてます。気配を遮断できるので」


「それはいいね。後は皆が口を割らないようにだね。せめて一ノ瀬家の狙いが忌助くんの実験じゃないことをねがうだけだね」



 その言葉で作戦会議は終了した。



 ※



 一ノ瀬家の使者が来るので自分は今、油葉根さんの影に隠れてます。

 こっちからだと、油葉根さんと視界を共有して外の様子を見ることができるから不自由はしない。



「忌助さま、大丈夫ですか?」


「うん、問題ない。油葉根さんと視界共有してるから」


「来たようですね」


「うん」



 校門から入ってきた一人の男。

 鬼の霊力があり、鬼能を持っていそうだ。



「私は一ノ瀬家の使者の壱条(いちじょう)碧毘(あおび)と言います」


「初めまして、雨三玖郎です」


「玖郎さん、ここに愛六忌助がいると情報が入ったのですが――――」


「――――目的はなんですか?」


「どうやら勘違いしているようだ。一ノ瀬家は鬼の王に喧嘩を売るつもりはない。ただ単に、今の人工鬼の子の力がどのくらいかを確かめたいだけです。愛六忌助と手合わせを願いたい」



 そして、



「聞こえてるんだろ? ここにいるヤツらを殺して回ってもいいんだけど、それじゃあ面倒だ」



 はぁ、出なきゃいけなさそうだな。



「自分が愛六忌助です」


「忌助くん、別に出なく――――」


「――――大丈夫です。ただ潰すだけですから」



 玖郎さんは心配性だな。

 もう子供じゃないんだから大丈夫なのに。



「では、愛六忌助。私と手合わせをお願いします」


「ん。いいよ」


「来たまえ、婆喰(ばく)



 碧毘が呼び出した武器、両手剣を片手で持っている。

 相当な重さがあるはずだけど。

 それに相手の鬼能がわかってないから無闇に攻撃はできないな。



「忌助さん、武器は出さないんですか?」


「ん? なぜ出す必要が? どうして? 力の差くらいわかってるよね?」


「舐めてると痛い目を見ますよ」


「そこまで言うなら、」



 影を操り木の枝を剣代わりにする。



「これでいいでしょ?」


「舐めた真似を」



 碧毘が剣を横に一閃すると、剣は炎を噴き襲いかかってくる。

 それを、避けずにくらう。



「なぜ避けない」


「ぬるい」


「さぁ、もう木の枝は無くなったぞ。どう戦うんだ?」



 自分の手には、さっきまで握られていた木の枝が無くなっている。

 そして観ている観客は気がついている。

 その木の枝がどこにあるのかを。



「これで終わ、り?」


「どうした? 口しか動かせなくなったのか?」



 そう、木の枝は碧毘の影に突き刺さり、影縛りの状態になっている。



「これで終わりって負けを認めるって意味かな?」


「動け、動け。なぜ動かない。何をした、キサマ。一ノ瀬家の使者に恥をかかせる気か」


「煩いよ」



 肩をチョンと押しただけで碧毘は尻餅をついた。

 それでも碧毘は動けないでいる。



「ねぇ、動かないの? ねぇねぇ、やる気がないの? 舐められた相手に舐められたまま終わるってどんな感じ? 今どんな気持ち?」



 これじゃあ流石に自分が悪役っぽいな。


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