ドロー!俺のターン!-4-
現在の状況
俺:
手札1枚 デッキ10枚 墓場19枚 ライフ10
【場】
なし
【手札】
[天使の涙 / 魔法]
笹山:
手札2枚 デッキ5枚 墓場21枚 ライフ11
【場】
[アンダルシアの守り人 / P5]
[バルカンカンガルー / P4]
「さあ、早くカードを引けよ……負け犬!」
笹山は俺を急かす。普段話しているときは気のいい男だが、勝負事となると話は別だ。
気性が荒く、対戦相手を完膚なきまでに叩き落すためなら、容赦のない怪物と化す。
(俺は、この怪物に果たして勝つことが出来るのか……?)
俺はデッキの上に手を掛ける。
だが、このカードを引くことで、自身の運命が決定づけられるという恐怖が襲ってくる。
(もし、ここで逆転のカードを引けなければ……)
俺の敗北は決定的なものとなってしまう。
笹山のニヤニヤとした表情が、相手の場のモンスターにも張り付いているような幻覚を覚える。
「おい、さっさとカードを引けよ……負け犬……ふひひひひひ」
[バルカンカンガルー]がにやけ顔で、俺を罵ってくる。
「あら、早くしてくれませんと、終電が無くなっちゃいますわ……」
[アンダルシアの守り人]が背中の翼をパタパタと忙しく動かしながら、まるで仕事帰りのOLのように腕時計を覗いている。
(煩いぞ!カンガルーの癖に生意気な……そこのOLは翼があるんだから、飛んで帰ればいいだろ!)
俺は雑念を振り払うがごとく、かぶりを振った。
(まあ、考えたって仕方がない……俺に出来ることは、俺のカードを信じることだけだ!)
俺は目を閉じ、深呼吸を大きく一度だけ行った。
「すーー……はーー……」
そうすることで、雑音は徐々に消え失せ、集中が高まるのを感じた。
そして、静寂で、心地よい暗闇が訪れる。
今感じられるのは右手の下にある、デッキの感触だけだ。
(どうだ……いけるか?俺の信じるカードたち……)
俺がそう心で念じると、右手に確かな温もりを感じられるようになった。
”僕たちを信じて!!”
カード達の声が、聞こえた気がする……
「おいおい、いつまで待たせるつもりだい?……どうせ負けは確定してるんだから足掻くだけ無駄さ」
笹山は両手を頭の後ろに組んで、余裕の素振りを見せつけている。
だが、俺はそんな笹山を鼻で笑った。
すると、笹山はさっきまでの余裕な表情を瞬く間に崩した。
「な、なにが可笑しいって言うんだよ!?」
「いや、なに……この程度の盤面を作れたくらいで勝った気になっているとは……さぞかし頭の中がお花畑なんだろうな、と思ったまでさ」
「な、なにを~!い、言わせておけば!」
笹山が殴りかからんが勢いで憤慨している。
「ふん!どうせただの強がりだろ……この俺の場を崩せるカードなんて……」
「さあ、それはどうかな……」
俺は、自分のカードを信じるぜ!
いざ、ドロー!
【俺はカードをドローした】
ドローしたカードを見て、俺の脳裏に衝撃が走った。
「こ、このカードは!?」
ドロー!俺のターン!-4- -終-