表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボクッ娘戦士と魔法使いの英雄譚  作者: 元気が一番
1/1

第一話「恐怖!空から!ゴーレム達!」

初投稿になります。拙い文章ですが宜しければ最後まで読んでみてください。

「やあ!君が村で噂の魔法使い?突然だけどボクと一緒に魔王軍を倒しに行こう!」

森の中の一軒家、そこに一人の少女が押し掛け、中の住人に不躾な言葉を大きく吐き出した。

その衝撃で屋根に止まっていた鳥は飛び立ち、木々は揺れ、窓ガラスは少し軋んだ。

少女の目はらんらんと輝き、中の魔法使いと呼ばれた男の言葉を待っている。

少女の名はリーザ、ある野望を胸に魔王討伐を目指している戦士だ。

しばらくすると家の扉が開き、中から痩身の男が顔を出した、男は一瞬目を見開き、すっと息を飲んだ。

リーザが美しかったからだ。

透き通った青い瞳、上気しているのか生まれ持ってなのか少し赤くなっている頬、整った体付き。

詰まる所彼の趣味にどストライクだったのだ。

しかし

「そうか、帰れ」

それは別に話を聞く理由になる訳ではなかった。



『ボクッ娘戦士と魔法使いの英雄譚』


第一話「恐怖!空から!ゴーレム達!」



「なんでかな!?」

「なんでだろうな」

扉を閉めようとした男、しかしリーザはその扉を掴み閉じるのを防いだ。

少女とは言え彼女は戦士、細腕の男が力で易々と勝てはしない。

それでも本気で嫌なのか、彼も彼女も必死なドアの引き合いが始まった。

こうなると後はトークで決着をつけるしかなくなるのが世界の道理だ。

「お願いだから少しだけでもボクの話を!」

ギシギシ

「嫌だ、大体なんで魔王討伐なんだ」

ギシギシ

「皆が困ってるからだよ!後魔王じゃない!魔王軍!」

ギシギシ

「同じじゃないか、ところで今俺は困ってるが魔王よりも討伐するべき敵がここに居ると思わないか」

バキッ

「同じじゃないんだなあこれが!プランが有るんだ!ボクと君なら安全に立ち回れるプランが!ところでその敵どこ?ボクがぶっとばしてあg」

メギィッ

「ほほう…」

「あっ」

ボクと君なら安全に立ち回れる、その言葉は少し男の興味を引いた。

男は少し話を聞く気になり、ドアノブから手を離した。

少女はまだドアを引っ張って居た為、千切れた扉が勢いに任せ飛んで行くことになったが

「それは二人の初めての連携プレイ、男も彼女を笑って許すのだった…」

「……」

言葉を聞いた細腕の男が放つ渾身のボディが、彼女の腹を貫いた


「何で出来てんだその腹は…鎧ねーだろそこ」

数分後、男はねん挫した右腕に包帯を巻きながら毒づいていた、彼女に居れた一撃で見事に自分の腕の方を持って行かれたのだ。

殴られた方の彼女はケロッとした物で、切ってきた木を扉に加工するのに夢中だ。

流石に申し訳ないと思ったのか以前の扉より頑丈に格好よくするために龍の牙や爪を用いて装飾まで行っている。

「一応戦士だからねー、魔物の槍くらいは腹筋で止められないと」

「完全に化け物の発想だろ…お前が魔物じゃねーか」

「むぅ、酷い事言うなあ、たとえ魔物でも良い魔物ですよーだ。はい出来上がり!そしてごめんなさい!」

一通り償ってから謝るスタイル。彼としても扉はその内代えなきゃなあと思っていたので特にその後は揉める事は無かった。

何より自分好みの女性が手ずから作った家具だ、ちょっと内心ガッツポーズ。

そこら辺人から離れて暮らしてる割に俗っぽい男だった。

「さて、計画を話す前に自己紹介から始めさせてもらうね、ボクの名前はリーザ、リーザ・ドルグライオン。」

テーブルにちょこんと座り彼女は左手を差し出した、捻挫している腕に握手を求めない常識が彼女にも有った

「祖に高速の魔弾アクセラス、師に炎熱の魔女ヴォルケイン、まだ通り名の無い未熟者、ダン…マホウスキーだ。別に魔法は好きじゃない。」

手を握り返し彼も自分の名を告げる、基本的に一族経営な魔法使いはこの様に先祖の名前と師匠の名前を言うのが通例になっている。

名字を言う前に少し言葉が濁ったのはぶっちゃけ恥ずかしいと思っているからだ。

「好きじゃないんだ。」

「家業ってだけだからな、とは言えこの年までそれ以外の事してなかったせいで他の生き方も知らない、出来る気もしない。」

魔法使いの一家に生まれ、魔法使いになる事を定められ弟子入りし、今は独立してのんびりと暮らし始めた所。

魔法と同じくらい人間が好きじゃない為村から少し離れた所に居を構え、偶に依頼で魔物を狩る、そんな生活をしていた。

「そっか…」

その話を聞いて好きじゃないのかあ、と彼女は呟いた。

怖いからやりたくないなら守る事が出来る、しかし、好きじゃない事をさせる事からは守れないから、彼女は困った。


「好きじゃないなら迷惑かなやっぱり、有名になっちゃうかもだし」

「(余程自分の計画に勝算あるんだなコイツ…)そんなに勝算アリアリMAXなのか?魔王軍相手に?」

急に乗り気じゃなくなってきたリーザにダンは尋ねる。

魔王軍…ざっくりとしたくくりではあるがその物ずばり単純に魔物の集団だ。

突如現れた魔王と呼ばれる者、人里を滅ぼし文明を破壊し信仰を消滅させる事を宣言した何か、その手足となって動く暴力。

辺境であるこの辺りには大した魔物はやって来ないとはいえ、それでも駆け出しの戦士が楽に勝てる相手ではない筈だった。

「割とアリアリMAXかなあボクと君なら、相方探して旅をして君の魔法を聞いてピンと来たんだ」

「ほう、俺の『雑魚相手にはめっぽう強いけど早い相手には絶対勝てないよねあれ』と言われる魔法を聞いて」

「そうそれ」

威力は有るが欠点が大きい、それが彼の得意魔法だった、その魔法こそが肝だと彼女は言う。

「でも好きじゃないんだよね?魔法、もし目立って仕事来ても困るよね?」

「困るし単純に死ぬな、格上相手とやりたくないんだ、師匠にも『アンタマジで戦う時は常にハメ殺しなよ?』と言われている。」

「そんなアドバイスくれるなら使い勝手のいい魔法教えてくれたらよかったのにねえ」

「うん」

とても素直な返事だった。


「まあでも…俺の力に本当にそんなに使い道が有るなら、やってみたいとも思う、かな。」

リーザが誘うかどうか悩み逡巡し、ダンもどうするか悩みながらしばらく時間が過ぎ、ダンの方から出た言葉はそんな言葉だった。

ひょっとすると彼自身、いつか自分の力を輝かせる日を待っていない事も無い事も無かったのかもしれない。

きっと本心は目の前にある困った少女の力になりたい、そんな単純な物だ。

「ホントに?」

その言葉を聞いて、彼女は眼を見開く、

「ああ」

「…じゃあ、お願いしようかな、ボクの力になって下さい、ダン」

彼女は、満面の笑みを彼に向けたのだった。

「ところでそろそろ作戦の方を」

「ああ、それはね…」


 数日後、ダンの家からちょっと離れた街、ゼルガナ横の荒野

そこには向かってくる魔物が10体ほどのしのしと歩いて来ていた。

石で出来た俗にゴーレムと呼ばれる魔物、鈍重だが固い、戦士にはやり辛い相手だ。

運悪く街に所属している魔法使いは別方面の魔王軍の迎撃に出払っており、この町にはその戦士達しか残っていない。

その彼らは今町の詰め所で装備の準備をし、覚悟をしていた。

立ち向かった自分達の剣どころか鎧まで砕け、生まれ育った町に帰って来られない覚悟を。

しかし、その覚悟は有る物によって無駄になった。

偵察に出ていた一人が詰所に戻ってきてこんな事を言ったのだ。

「ゴーレムが!ゴーレムたちが!空からの何かで全部粉々になった!!」

ゴーレムよりもよっぽど怖い物を見たと言う顔だった。


 そんな街での出来事は露知らず、荒野の上の空で二人はそれはもう喜んでいた。

「やれたねえ」

「やれたなあ」

自分の立てた計画が、自分の持っていた魔法が、通用する事が証明された。

ダンの魔法、足を止めないと撃てない高速連射式ファイヤーボール、それをリーザがダンを抱える事で欠点を解消し用いると言う計画。

ダンは自分を抱えるリーザを見た。

いや、正確には自分を固定して飛んでいるリーザの『翼』を。

それは太陽の光を受け、とても幻想的に輝いていた。

そして次に自分の下、先ほどゴーレムたちが居たはずの荒野を眺めた。

そこには無数の穴が開き、ゴーレムの残骸すら残っていない、ただの可哀そうな土地だった。

リーザとダン、二人が使った戦法、それは簡単に言うと、爆撃と言われる戦術。

「やばいなあ」

「やばいねえ」

街中では使っちゃ絶対ダメな感じがする、周辺被害もバカにならなそうな戦術。

しかしそれでも、最初の一歩の大成功に…

リーザ・ドルグライオン、青の瞳と赤き鱗を持つ一匹のボクッ娘龍ドラゴン戦士と

ダン・マホウスキー、人間は嫌いだけどドラゴンフェチな魔法使い。

二人は誰もいない空の上で、喜びの咆哮を上げたのだった。



『ボクッ娘龍戦士とドラフェチ魔法使いの英雄譚』

第一話「恐怖!空から襲われる!ゴーレム達!」



嘘はついていない

ついていない筈である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ